総合的な学習視野に

食に関する指導シンポ開催

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 文部省主催の食に関する指導シンポジウムが、8月24日文部省別館講堂で行われ、学校長や教員、養護教諭、学校栄養士など学校関係者のほか、保護者や一般の参加者も合わせ約400人が参加した。

文部省説明の中で、金田雅代学校給食調査官は文部省体育局学校健康教育課から出されているパンフレット「考えよう!子どもたちの食を学校で、家庭で、そして地域で」を元に、子どもの肥満傾向や、夜型生活、乱れた食生活の問題などの現状を説明した上で、食に関する指導の必要性を述べた。給食は毎日行われる「食べる」という体験活動であり、生きた教材。学校における重要な教育活動であると強調した。さらに、実践力につなげていくことも指導を行う上で重要なポイントであると述べ、「食を通して子どもの心を育んでいきたい」と述べた。
 続いて、谷川彰英氏(筑波大学教授)と、位田忍氏(大阪府立母子保健総合医療センター参事兼医長)による基調講演が行われた。谷川氏は「教育における「食」の可能性」をテーマに講演。社会科や生活科の中で実践してきた授業内容などを取り上げ、「子どもにとって、食べものの話題は必ず興味をもってのってくるもの。例えば駅弁を教材にすることで地域の特色を学んだり、パン文化の発祥を学ぶことで国際理解につなげたりとありとあらゆる学習につながる」と、食を教材として扱う意味について述べた。総合的な学習についても、環境や国際理解、情報などの柱は全て食をテーマにすればまかなえてしまう課題であるとした。
 位田氏は、「小児期の食生活と疾患」をテーマに講演。思春期の女子に多く見られる痩せの問題について、「食べない」のではなく「食べられない」状態になった神経性食欲不振症が増加していると報告。急激なダイエット等で、十二指腸が圧迫され、食べられずに痩せてゆき、最悪の場合死亡するケースもあるという。また牛乳の飲めない子どもの中には、1時間経っても胃の中で消化されないという牛乳アレルギーの子どももいることをデータとともに解説、「その子どもが食べないのか、食べられないのかということを見分けて欲しい。心理的要因の前に身体的要因を考えてほしい」と述べた。

 公開シンポジウムでは、米満裕学校給食調査官を司会として、山梨県牧丘町立牧丘第一小学校の七澤徳雄校長、東京都北区立第二岩淵小学校の合田芳子教諭、岐阜県多治見市立陶都中学校の安藤千香栄養職員、谷川氏によって「食に関する指導の現状と課題」をテーマに行われた。学校で食の指導を徹底させるための方法や生きた教材としての給食の活用方法、給食時間の十分な確保についてなどの課題について論議が行われた。その中で、安藤さんは、教科と関連付けた食に関する指導の実践例を発表。継続的に食に関する指導行ってきたことで、教師の意識も高まり、授業で給食の話題を取り上げたりといったことも行われるようになったと報告した。さらに当日の献立、子どもの発達段階、教科、子どもの実態を踏まえた指導が重要であるとした。
(教育家庭新聞2000年9月9日号)