かつての「国民病」結核が完全復活のきざし

集団感染去年41件と急増


 年間新発生患者約4万2000人、死亡者約3000人という国内最大の伝染病が“復活”−−かつては「国民病」といわれたものの、効果的な抗生物質の登場で克服したかに見られていた結核のり患率が集団感染の急増で急激に上昇していることが、厚生省のまとめでわかった。特に顕著なのは学校や職場、病院などで多発していること。結核に対する若い人の免疫力が低下して、患者が発生すると周囲に感染が広がるためと見られている。


 厚生省では、結核の集団感染を、「20人以上が感染した場合」などと定義し、平成6年から全国の医療機関に対して発生の報告を求めている。
 それによると、平成6、7年はそれぞれ11件だったものが、平成8年は倍増の21件、平成9年には29件と右肩上がりで増え続け、平成10年には平成6、7年の4倍にあたる41件と急増。患者数も1111人にのぼった。
 発生場所では中学校、高等学校など学校が14件。大量に患者が発生したケースとしては、昨年4月の福島県の高等学校(患者数125人)、9月の福岡県の中学校で(同134人)などが報告されている。また職場の発生も9件、病院が8件で、その他にも老人福祉施設や飲食店、塾などでも発生していることがわかった。

 これに対して厚生省では従来の結核予防法に基づく対策の他、「結核予防法に基づかない措置」として1結核り患率の高い地域など特に対策を必要とする地域を対象に、各種結核対策事業を実施2疫学的分析、治療薬の開発、診断法研究及び国際協力3結核に関する情報を全国的規模で迅速に収集・解析・還元するシステムを確立し、有効で的確な予防対策を立案4高度な合併症を併発する結核患者を一般病床に収容し、治療するモデル事業の開始5結核予防週間(毎年9月下旬の1週間)の実施による啓発普及、医療従事者研修−−などを実施する予定で、約17億円の予算措置をこうじている。

 【平成6年】▽1月「北海道・中学校」(患者数=以下同様=49人)▽1月「千葉県・専門学校」(32人)▽3月「東京都・大学」(6人)▽7月「東京都・高等学校など」(14人)▽11月「東京都・専門学校」(28人)▽12月「東京都・高等学校」(30人)▽12月「東京都・高等学校」(20人)

 【平成7年】▽3月「北海道・大学附属高等学校、小中学校」(32人)▽4月「東京都・大学」(86人)▽5月「三重県・中学校」(25人)

 【平成8年】▽2月「愛媛県・幼稚園」(30人)▽4月「東京都・高等学校」(22人)▽9月「東京都・大学」(21人)▽12月「大阪府・予備校」(63人)

 【平成9年】▽3月「愛媛県・中学校」(22人)▽3月「福岡県・塾、大学」(116人)▽4月「福岡県・高等学校」(38人)▽6月「東京都・中学校」(141人)▽8月「広島県・高等学校」(42人)▽9月「三重県・高等学校」(16人)▽10月「大阪府・大学」(79人)▽10月「埼玉県・高等学校」(40人)▽10月「東京都・高等学校」(32人)▽10月「福岡県・大学」(61人)▽11月「北海道・小学校」(102人)

 【平成10年】▽2月「神奈川県・高等学校」(17人)▽2月「鹿児島県・中学校」(20人)▽3月「大阪府・高等学校、予備校」(34人)▽3月「大阪府・高等学校他」(25人)▽3月「東京都・中学校」(30人)▽4月「福島県・高等学校」(125人)▽5月「大阪府・専門学校」(35人)▽6月「千葉県・中学校」(26人)▽6月「大阪府・中学校」(84人)▽7月「埼玉県・高等学校」(48人)▽8月「東京都・中学校」(35人)▽9月「福岡県・中学校」(134人)▽9月「東京都・養護学校他」(25人)▽10月「埼玉県・高等学校」(38人)

(99年5月15日号)