たくましく生きる力を育む学校給食の推進

第40回全国学校栄養職員研究大会
全国から約2000名参加

【実践例・上田市第一学校給食センター】実践例・常磐松小】【TOPページに戻る】

 第40回全国学校栄養職員研究大会は「たくましく生きる力を育む学校給食の推進」を主題に、来る7月29日、30日の両日、埼玉県所沢市の所沢市民文化センターほか7会場で開催、全体会、分科会に分かれて熱心な討議が行われる。参加者は全国48都道府県から約2000名の予定。

大会開催要項
@趣旨=学校給食の意義・役割について理解を深め、学校栄養職員の資質向上を図るとともに、食に関する指導等を通じた心と体の健康の増進について、研究討議する。
A主題=「たくましく生きる力を育む学校給食の推進」
B主催=文部省、埼玉県教育委員会、所沢市教育委員会、日本体育・学校健康センター(社)全国学校栄養士協議会、(財)埼玉県学校給食会
C協賛=全国学校給食会連合会、(社)埼玉県栄養士会
D期日=平成11年7月29日・30日
E会場=(1)全体会 7月29日所沢市民文化センター ミューズ大ホール(2)分科会7月30日(会場名2面に掲載)
F参加者=学校栄養職員及び学校給食関係者
G内容=(1)開会式(2)講演 演題「健康教育の現状と学校栄養職員の役割」講師文部省体育局長遠藤昭雄(3)歓迎アトラクション パイプオルガン演奏 松居直美(4)実践発表=埼玉県 「たくましく生きる力を育む食に関する指導の実践」(5)特別講演=演題 「歴史から見た埼玉」講師 埼玉県文化保護審議会会長 柳田敏司

大会発表校の実践

【渋谷区立常磐松小学校】
総合的学習の中で

 東京都渋谷区立常磐松小学校は、青山学院大学、国学院大学の側の閑静な住宅地域にある。子どもの数は減少傾向にあり、全児童数は107人で、とても落ち着いた雰囲気の中で学校生活を送っているという印象。

 家庭数は少ないが、その分、親たちは協力的で教育に対して熱心なので、うまく家庭との連携をおこなうことかできているという。地域がら、帰国子女も多く国際色豊かで、家庭の生活水準は比較的高い。食をテーマにした地域との結びつきも強く、ネパールの料理研究家を招いて料理講習会を行ったり、地元の寿司屋の主人の協力で健康教室を行い、天然食材を使ったのり巻き作りなども行っている。

 総合的学習を想定した5年生の授業「こめ・コメ・米」では、家庭と学校の連携、教師と学校栄養職員の連携がうまく取り入れられた授業が行われた。単元計画の中の1時間を使って学校栄養職員がTTで参画した授業では、外国の米の種類や栄養に関する題材を扱った。そこでタイ米を扱うことになり、子どもからその情報を聞いた母親からタイ米が届けられた。「海外に住んでいた方や、仕事で海外に行く親も多いですからね。これもひとつの地域性といえるのではないでしょうか」と同校学校栄養職員の幸田真紀子さん。幸田さんから担任に、担任から子どもたちに、子どもたちから親へと情報が伝わり、それに対し親が協力するという形がうまくできている様子が伺える。
 このタイ米を使った本格的カレーを作る親子料理教室もこの単元の一授業として実施した。さらにこのタイ米は、給食でも炊飯として5、6年生に出されたが、同じく出されていた日本の米を使った炊飯とどちらがおいしいか尋ねたところ「タイ米」との答えが多く返ってきた。授業で扱ったものを、さらに給食で食べるという体験学習がうまく行われている。
 同校では、平成8年度より区の研究推進指定を受け、「一人一人がめあてをもって取り組む健康づくり」というテーマで、学校全体で健康教育に取り組んでいる。さらに平成10年度からは、総合的学習という観点からの研究も進めている。その点で、栄養士が一から開拓する必要はないので、食という分野での指導はやりやすい状況にあるという。

 月に2回に行われる学校保健委員会では、健康診断の結果や給食試食会の報告、学校医、学校歯科医からの専門的な話が行われるが、これには、保護者も参加して教職員とともに、子どもたちの健康のめあてについて懇談し、全体発表を行っているそうだ。

【上田市第一学校給食センター】
昨年、初の授業を実施

 千曲川のほとりにある長野県上田市第一学校給食センター。学校栄養職員水竒綾子さんが中心となり、すぐ側に隣接する市立第6中学校での食に関する指導が学級活動の1時間を使って昨年、初めて実施された。

 これまでに校内放送用の原稿を提供をしたり、給食だよりの発行をしたり、食事中の15分前後の時間で話をしたりということはしてきたが、本格的な指導は今回が初めてとのこと。
 昨年の夏休み直前に、TTの授業のお願いを学校にしたところ、学校側は快く了解。9月第2週に予定されていた「給食旬間」の時期に合わせての授業を計画した。始めはセンターに勤務する2人の栄養士がそれぞれ1クラスずつ計2クラスに入って行う予定だったが、学校側の要請もあり、他のセンターや学校からの栄養士も入って1、2年生10クラスで同時に指導が行われた。また3年生については、ビデオを使って担任が指導することが決まった。
 同校の給食旬間のテーマ「骨や歯をじょうぶにしよう」に合わせて授業を全クラスで指導することになった。実際の授業では、導入部分は担任教師が入り、担任の先生に知っている骨に関する病気をあげてもらう。さらにグループごとに「骨や歯を丈夫にするにはどうしたらよいか」を予想し、発表する。それを受けて食生活の中で実際にできる食生活のあり方に関しての話を栄養士が担当した。そしてそれぞれが、この授業をふまえて標語作りを行った。
 あまり顔を合わすことのない生徒との授業。まして、所属校ではない栄養士にとっては、どの子もまったく初めての子ばかりだ。指導を行う上で、子どもたちだけでなく先生方とのコミュニケーションも十分にとれていないとやりずらいこともでてくる。

 授業前には、学校の先生方と、栄養職員による打ち合わせも綿密に行われたが、今回の授業は初めてということもあり、たくさんの反省点も生まれたという。説明が長すぎた、資料が細かすぎてわかりずらかった等々。「今回の反省点を生かして、これから少しずつでも指導を初めていきたいと思います。努力して学校へ足を運び、まずは年に1回のこの指導を継続することから始めていきます。徐々に系統だてて年間計画に組み込んだ指導がおこなえれば」と水竒さん。まずは、学校とセンターとの連絡帳をつくるなど、情報のやり取りをしていきたいと話す。
(教育家庭新聞99年7月17日号)