旬の地場産物を給食に

宮城県岩沼市立玉浦中学校

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 昨年の9月に新校舎が完成したばかりの宮城県岩沼市立玉浦中学校。約300人の全校生徒が一同に食事できるランチルームは「Murmur(せせらぎ) Room」と名づけられて毎日バイキングスタイルでの楽しい給食の時間を過ごしている。

 同校の位置する岩沼地区は仙台平野の南に位置し、米、きゅうり、レタスなどが主に生産されている農村地帯。同校ではランチルームのオープンをきっかけに、地元の農家で獲れた農作物を給食で取り入れるようになった。できるだけ地元産で新鮮で旬の食材を使いたいと思っていた同校栄養士の三品美智子さんは、農家からの提案も受けて、保護者に協力を呼びかけた。そして今のところ3軒の専業農家の家庭と契約を結ぶことができ、タケノコ、メロン、ブロッコリーなどの地場産物を月に1、2回給食に取り入れている。
 献立で出すだけでなく、その日のランチルームの入り口に畑でなっている状態のままの野菜を展示する。子どもたちは見たり触ったりと興味津々だという。また給食の時間に農家の人がその野菜についての説明や、収穫までの過程などの話をする。いつもは残が多いというブロッコリーなども、地場産物のブロッコリーを取り入れた日は残がすくないという。「朝獲ってきてすぐの新鮮なものですから、味も違うのでしょう」と三品さん。

 アンデス、クインシー、クールボジャと3種類のメロンを栽培し、学校に届けている沼田健一さんに話をうかがった。メロンは花が咲いてから50〜55日で熟してくるが、その様子を見て、何日頃に収穫できるか学校と連絡を取り合い、ちょうど食べ頃の日に届けるという。「こういう形で、地元の産物を知ってもらい、少しでも興味を持ってもらえれば嬉しいですね。後継者不足も問題になっていますから、子どもたちが受け継ぐきっかけになればいいとの思いもあります」と話す。学校では、種まきから接ぎ木、収穫までの一連の過程を話す。「農家の子どもであっても、自分の家で何を栽培しているのかわからないというのが現状ですから」という。
 米とブロッコリー、ひらたけを届けている田村善洋さんは、子どもが同校に通う保護者の1人である。月2回学校で炊飯する分の米は、田村さんの家で収穫された低農薬の安全でおいしい米を使っている。子どもたちが食べる日の前日に精米しているという心遣いもあり、つやも香りもすばらしいとのこと。「たまたまPTA役員をしていて、三品先生と親しかったこともありますが、自分が手伝えることがあれば協力したいという気持と、子どもたちにおいしいものを提供したいという気持ちで届けています」と話してくれた。

 このような地場産物をうまく取り入れられた背景には地域住民との信頼関係づくりができていること、校長以下学校全体の理解がされていること、人数的に300人という規模がちょうどよかったことがあげられるという。「もうあと2、3品増やして、今後も続けていきたいと思っています。子どもたちにとって大切な食教育の場になっていますから」と三品さんは話す。
(教育家庭新聞99年7月17日号)