児童・生徒の暴力行為が過去最多に

器物損壊が4割高に 「いじめ」は3年連続で減少

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 文部省がさきごろ発表した「1998年度生徒指導上の諸問題の現状について」(問題行動速報)によると、平成10年度に公立の小学校、中学校、高等学校の児童・生徒が起こした「暴力行為」は、前年度に比べて2割強上回る3万5246件で、過去最多を更新していることがわかった。特に窓ガラスを割る、校舎に落書きをするといった「器物損壊」は約1万400件と、前年度比で4割増の急激な伸びを示しており、不満のはけ口を手近な物に求めるという・現代的・な「荒れ」の実態が浮き彫りとなっている。また「いじめ」については、3年連続で減少しているものの、依然として3万6396件と高水準を示していることがわかった。


 暴力行為に関しては形態別に
@教師の胸ぐらをつかむ、いすを投げつけるといった「対教師暴力」
A同じ学校の生徒同士や、卒業生と後輩との間などの「生徒間暴力」
B自校の生徒や卒業など教師以外に対する「対人暴力」
Cトイレのドアや窓ガラスを壊したり、補修が必要な落書きをする「器物損壊」−−と4つに分類している。
 全体的な暴力行為の発生件数については、小学校が1706件、中学校が2万6797件、高等学校が6743件で割合も順に4・8%、76・0%、19・1%と、圧倒的に中学校が突出している。
 形態別にみると小学校が「生徒間暴力」が最も多くて862件(50・5%)、次いで「器物損壊」578件(33・9%)、以下「対教師暴力」195件(11・4%)、「対人暴力」71件(4・2%)という数字。中学校も同様で順に1万3226件(49・4%)、8616件(32・1%)、3691件(13・8%)、1270件(4・7%)となっている。高等学校も小学校や中学校同様に「生徒間暴力」が4307件とトップとなっているが、割合をみると他の形態を大きく引き離し63・9%を占めている。また「対人暴力」も件数は652件だが、割合が9・7%と大きいのが特徴だ。

 いずれも件数は前年度よりも増えているが、学校内で発生件数の伸びが目立つのは、中学校と高等学校の「器物損壊」(各40・8%増、52・9%増)。全体では4割強の40・9%も増えている。また高等学校における「対教師暴力」も34・2%増えるなど、思春期特有のイライラ感がつのっている実態が浮かび上がった形だ。
 暴力行為が発生した公立学校についてみると、小学校557校(全体の2・3%、前年度比2・0%増=以下同様)、中学校3551校(33・8%、12・8%増)、高等学校1809校(43・5%、19・1%増)となっており、発生校数については中学校がトップだが、発生割合では高等学校が高くなっている。
 同行動速報では都道府県別にも統計をとっているが発生件数が多いのは、順に@神奈川県5194件A大阪府2577件B三重県2378件C埼玉県1873件D兵庫県1764件E広島県1643件F岡山県1570件G東京都1481件H福岡県1426件−−で、いずれも1000件を超えている。


 こうした暴力行為の具体的内容について、文部省が各教育委員会に照会したところ
▽友だちとけんかしてイライラし、掲示板のポスターに火をつけ燃やした(中学校3年生女子)
▽座ろうとしたときに同級生がふざけていすを後ろに引いたため、倒された児童が相手の顔面を殴り歯を折った(小学校2年生男子)
▽授業中に携帯電話をしていたため教師が取り上げようとしたところ、その教師を平手で殴った(高校3年生男子)−−などが報告された。
 一方、「いじめ」の発生件数については、小学校1万2858件(前年度に比べ21・1%減=以下同様)、中学校2万801件(10・5%減)、高等学校2576件(17・0%減)、特殊教育諸学校161件(1・3%増)と全体で3万6396件。前年度と比べて6394件(14・9%)減って、平成7年度をピークに3年連続で減少している。

 1校当たりの「いじめ」の発生件数は小学校0・5件、中学校2・0件、高等学校0・6件、特殊教育諸学校0・2件で合計すると0・9件という数字。いずれも減少しているが、中でも小学校で発生件数、発生率ともピーク時の半分以下に減っている。
 また「いじめ」の発生件数が多い都道府県は1千葉県3684件2東京都2798件3神奈川県2595件4栃木県2555件5茨城県1747件6北海道1600件7埼玉県1336件8兵庫県1284件9長崎県1249件10静岡県1015件−−でいずれも1000件を超え、逆に少ないのは佐賀県(41件)と鳥取県(91件)で100件を下回っている。
 今回発表された同行速報の結果について、文部省では深刻に受け止めており「教育課程の改訂などを通じて、楽しく学べる学校にしていきたい。またスクールカウンセラーを配置した学校は問題行動が減少する傾向があるので、来年度予算で配置を充実させる措置を講じたい」としている。
(教育家庭新聞99年9月11日号)