学校給食大会特集

大会テーマ たくましく生きる力を育む学校給食の推進
発表校の実践

【山梨県中巨摩郡・竜王東小学校】【富山県高岡市学校給食石瀬共同調理場】
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 第50回全国学校給食研究協議大会が、今月20、21日に栃木県宇都宮市で開催される。2日目の全体会では、9つの分科会に分かれて研究協議が行われるが、第2分科会「共同調理場と学校との連携」をテーマに発表する富山県高岡市石瀬共同調理場と、第3分科会「小学校における食に関する指導」の山梨県中巨摩郡竜王町立竜王東小学校を取材した。

【山梨県中巨摩郡・竜王東小学校】

 今年度、地域の給食研究協議会研究校として「食教育」にかかわる研究をはじめた山梨県中巨摩郡・竜王東小学校。全クラスオープンスペースの広々とした学校で、ノーチャイム制、TT授業などが取り入れられている新しいスタイルの学校だ。学校の周りは畑や田んぼなど自然もいっぱいで、地域との連携も強いことから、以前より「ほうとう作り」や「米作り」など食に関する体験学習をカリキュラムに組みこんでいる。

 新年度を迎える前に子どもたちの食の実態調査と家庭科、生活科などの単元の中から食に関するものの洗い出しを行った。「新たに指導の時間を設けるのではなく、これまでの教育課程の中にある内容を生かして食の指導ができるよう試みました」と土橋士郎校長。2002年度からの新カリキュラムにはここでの実践を生かし「食教育」の時間を設けるよう検討が行われている。
 食に関する授業は、教師同士のTTで行われている。他の教科においてもTT指導が定着しているためで、すでに2人の先生が授業をするので、学校栄養職員は今のところ授業には参画していない。授業の前準備の資料提供や教師からの相談を受けるという形での協力となっている。

 授業への参画をしていない分、事前の研究会での発言は積極的に行っており、栄養士の言葉が指導の際の参考になっているとのこと。同校栄養士の金丸先生によると、先生方の食に対する意識は他校と比べるととても高く、先生からの質問も「三角食べ」についての利点など理論的な質問が多く、その都度調べて報告するようにしている。「研究会の場では、そういった質問やストレートな意見交換が活発にでき、先生方との意志疎通が図れています」と金丸先生。
 実際の授業であるが、3年生のクラスで行われた学級活動の「飲み物の選び方を知ろう」の授業では、市販されているいろいろな飲料水を提示し、その中から各人に好きな飲み物を選ばせる。それから各飲料水の前に、その中に含まれている糖分の量だけ角砂糖を置き、驚くほど糖分が多いことを知らせる。そして、血管内の脂肪肝の写真を提示したり、動物実験の結果などの話をしてから、わかったことを書かせて発表させた。この授業をきっかけに、お茶類や水を飲む子が増えたそうだが、長続きしない子も多く、食の指導では特に継続の大切さが求められることを実感したとのこと。
 今年のこのような取り組みについて土橋校長は「どこの学校でもやっているようなことで、特別なことをしているわけではありません。ただ、教師全員が食の指導に関わり、食の重要性を認識している。食の指導に対する目的が明確化されていることは、学校全体で食の指導を行う上でとても大きいことです」と述べた
【富山県高岡市学校給食石瀬共同調理場】

 中学校4校の給食を調理している富山県高岡市学校給食石瀬共同調理場では、2人の学校栄養職員が各校に毎月2回定期的に訪れて給食指導を行っている。また、それ以外にもできるだけ学校に行くよう心がけ、今年初めて家庭科の授業に参画した。「先生方との普段のやりとりの中で、私たちから直接学校にお願いし、授業に協力することができました。来年は年度初めから計画的に充実した内容で授業に参画したい」と話す学校栄養職員の小杉泰子先生。
 給食センターの栄養士は、どうしても学校にいる栄養士に比べて生徒や先生とのコミュニケーションの時間が足りないように思われるが、小杉先生は学校保健委員会に顔を出し、栄養士の立場から残食状況の説明をしたり、給食だよりの発行、食に関するお昼の放送の原稿づくりと積極的に活動をしている。また、バイキング給食のときは、その場で直接生徒たちに指導して回る。もちろんPTAの試食会にも出席し、家庭への啓蒙活動も欠かさない。「センターの場合、先生や生徒たちとのコミュニケーションの場が少ないですから、定期訪問だけでなく出掛けたときは必ず生徒たちに話しかけるようにしています」。

 この他に学校とのつながりとして大切な役割を担っているのが、毎日の給食と一緒に運ばれる連絡ノートだ。給食主任とのやりとりが毎日行われ、子どもたちの状況をつかむのにとても役だっているとのこと。
 当調理場では、セレクト給食、お弁当給食、バイキング給食、行事食など各学校に応じてきめ細かな給食が行われ、また、毎月1回の郷土料理給食に合わせて資料を提供し、「喜ばれる給食」の実践に努めている。このような取り組みができるのは、中学校4校と学校数が少ないこと、配送車が各校1台用意され、比較的近い距離に学校があることなどがあげられる。
 また調理業務と配送業務が民間委託であり、特に調理業務については、現場に栄養士4人、調理員及び調理パート24人など計29人が配属されているので、打ち合わせをきめ細かくしておけば、現場の栄養士4人が責任を持って行うので、栄養職員は学校へ出向けるとのこと。「食に関する指導については、まだまだですが、学校訪問を今以上に行い、短い時間でもいいから、先生方や子どもたちと触れ合い、またTTによる授業を積極的に行って次世代に活躍する生徒たちの食生活の基盤づくりに微力ながら協力していきたいと思っています」と今後の抱負を語ってくれた。
(教育家庭新聞99年10月16日号)