食育の追求を目指して日本料理からフレンチ、イタリアン、チャイニーズなど様々なジャンルの料理人が集結して作られた食文化創造集団「超人シェフ倶楽部」。その集まった料理人の数たるや100名にのぼり、10月14日には本格的に食育事業への取組みを開始したことを受けてキックオフパーティーが開催された。
その会長を務める服部幸應氏は、「こうしてジャンルを越えた料理人が集結することで、広く食に対する啓発を進めていけるとともに、料理人たちの質の向上を図れればという思いがありました」と語る。
料理人はただ料理を出せばいいというものではない。そういう思いを持っていた服部氏は、テレビ番組「料理の鉄人」の演出家であった田中経一氏と、料理人集団を作ることで何かおもしろいことができるのではないかと話し合った結果、食育推進に向けて「超人シェフ倶楽部」を生み出すことにつながった。
集まってきた料理人たちは、食に関して何かに貢献できればという同じ志を持っている。今後はそうした料理人たちの意思を反映させながら活動を広げていきたいとしている。
その「超人シェフ倶楽部」の活動の中で、子どもたちに楽しい給食を食べてもらおうと行っているのが「スーパー給食」。これは超人シェフが農林水産省の食育活動として、地元の産物や子どもが残しがちな食材を使ってメニュー作成し、給食調理員と調理するというもの。7月13日には千葉県木更津市立鎌足小学校で「福わうち」の三宮昌幸シェフ、7月18日には埼玉県新座市立大和田小学校で「賛否両論」の笠原将弘シェフ、7月19日には東京都杉並区立高井戸第四小学校で「銀座ろくさん亭」の宮永賢一シェフと、3人の日本料理の超人シェフが、それぞれ調理を行った。
「こうした活動を行うのも、食育基本法に込められた子どもたちに食の大切さを知ってもらうという思いを、プロの料理人たちにも担ってもらいたいからです。いつもは真剣な表情で料理を作っている料理人が、子どもの笑顔に囲まれながら、一緒に給食を食べるなど、子どもに喜んでもらえただけでなく、料理人にとっても楽しい試みとなったみたいです」
こうして子どもたちの食を考えることは、日本の将来にとって最も大切なことと考える服部氏だが、問題は家庭の食卓にあるという。「日本の家庭の多くはテレビをつけながら食事をしていますが、それでは親は子どもの姿が見えてきません。向かい合って食事をしていれば、箸の使い方や偏食にも気づき、学校で何かあった時、実はいじめられたとか、子どもの様子がおかしいと気づくのです。3歳から8歳までに親と一緒に食卓を囲むことでモラルの70%は完成するからです。食事を通じて子どもを、しっかり見つめて躾をすることです」。
服部幸應(はっとりゆきお)=1945年、東京生まれ。立教大学卒業。昭和大学医学部博士課程修了。医学博士。(学)服部学園・服部栄養専門学校の理事長・校長。現在は内閣府「食育推進会議」委員、「早寝・早起き・朝ごはん全国協議会」副会長、また、大学講師も務める。藍綬褒章受賞、仏政府より国家功労勲章他受章。講演、テレビの料理監修他、「食育のすすめ」など著書多数。
【2007年11月10日号】