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高品質な接客サービスを維持
ゲストの97%がリピーターの由縁

TDR開園25周年の新たな試み

福島祥郎さん

 今年、開園25周年を迎えた東京ディズニーリゾート(TDR)には、ひとつの伝説が語り継がれている。東京ディズニーランドを運営する潟Iリエンタルランドの設立当初、埋め立て予定地だった舞浜の海をめぐり地元漁民との漁業補償交渉が難航していた。「毎晩、日本酒の一升瓶を抱えて相手と大酒を飲み交わし、私財を投げ打って交渉をまとめたという豪傑が入社当時の社長(故高橋政知氏)でした」。
 社員30人の小さな企業へ「面白いところ」と入社、将来を賭けた福島さんだが、この豪快社長が1800億円の建設資金調達の際、軒並み銀行から断わられ、最後に折衝した銀行の副頭取と夢と魔法の王国づくり≠ノ意気投合し融資の糸口をつかんだ話を聞き、その強運さに驚いたという。「人との運命的な出会いや、多くの人々の力が結集されて、今の東京ディズニーリゾートがあるのです」と述懐する。
 埋め立て地の買収を経て、70年代に米国ディズニー社との誘致交渉がまとまり、9か月間の米国研修を経験する。「ここで高品質なサービスや、もてなし、思いやりなど五感を働かせたウォルト・ディズニー精神に触れて自分が変わってきたという実感を持てました」。
 東京ディズニーランドの滑り出しは順調だった。1983年4月15日の開園当初に打ち出した年間1000万人ペースの目標には多くのマスコミが疑問視する中で翌年4月に達成。8年目の91年には通算1億人へ、14年目の97年に2億人到達。第2テーマパーク・東京ディズニーシーの完成後の20周年(03年4月)には2パークで年間2500万人のゲスト(入園者)を迎え入れる。
 その要因を「新しい施設を増やしイベント、パレードなどから常に感動をゲストに提供し期待に応えてきたこと。また、キャスト(従業員)の高品質な接客力を維持するきめ細かい教育を徹底していることです」と説明する。
 日課のひとつに園内を回る習慣がある。「誕生日を迎えたゲストには、さりげなく目印のシールを付けて頂き、園内で大勢のスタッフからお祝いの声をかけられ喜んでくださる」。接客サービスとは一歩踏み込んだ心遣いが大切で「スタッフには、涙の出るくらいの感動を創造しようと呼びかけています」。ゲストの97%が、1回以上のリピーターで占められている由縁だ。さらに40歳以上のゲストが毎年増えている傾向も最近の特徴だという。
 今年7月には、滞在型のゲスト向けに705室の東京ディズニーランドホテルが開業、10月にはファンタジックなカナダ生まれのサーカス集団「シルク・ドゥ・ソレイユ」の公演が常設専用劇場で始まる。「テーマパークには終わりがない」というディズニー哲学を胸に約2万人の社員とスタッフの先頭に立つ福島社長の、限りない挑戦が続いていくことだろう。

 福島祥郎(ふくしま よしろう)=1946年12月、千葉県千葉市生まれ61歳。69年3月中央大学経済学部卒業、同年4月に潟Iリエンタルランド入社。91年同社広報室長、95年取締役経営企画室長などを歴任し、05年同社初の生え抜きの代表取締役社長兼COO(最高執行責任者)に就任、現在に至る。趣味は木版画作り、好きな読み物「梁塵秘抄」、好きな言葉「遊びを通して学ぶ」。

【2008年8月23日号】