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家は子どもの成長に大きく影響
子ども部屋は子失になる原因に・・・

200年住宅HABITAに取り組む

 三澤千代治 さん

 昭和42年ミサワホームを設立し、当時34歳という最年少で株式公開を果たした三澤千代治さん。昭和48年には建築実績で業界ナンバー1になり、累積で120万戸の家を建ててきた。実家は材木屋。幼少時代から木に囲まれて育ったというから、まさに天職である。現在はミサワインターナショナル代表取締役社長として、200年住宅HABITAに取り組んでいる。その第1のテーマは、子どものための家づくりだ。

 家は親の目線でつくられがちだが「家は動物に例えれば巣と同じこと。子どもにとって成長を育む大切なシェルターです」と語る。また家は基本的な人間成長に大きく影響するという。「部屋の色で子どもの性格が変わることも分かっています」。子どもの頃に天井の高い広々とした家に育った人は、早くから夢をもち、創造性を育み、将来大物になるそうだ。

 「人間関係を育てるなら兄弟の部屋は人の気配が感じられる障子やふすまがいい。例えば受験生の兄がいれば、弟は邪魔にならないよう音に気を配るようになり、そこから自然と優しさが始まります」。個室で好き勝手にしていたら、思いやりは生まれてこない。さらには社会に出て、人との付き合いも上手に出来ない人間になってしまうという。

 「家は筒抜けになっている位がいい。『ご飯だよ』と声をかけても誰もテーブルにつかない。声が聞こえない個室にいて、皆バラバラでは家庭崩壊です。それでは親とのコミュニケーションが生れず、子失になる原因です」。子ども部屋の理想は、寝るときだけ自分の部屋に行く寝室で充分だという。そこで提案しているのがセンターリビング。「学校から帰ってきて必ず通る空間があれば、母親は子どもの表情や様子を見て、声をかけることもできます。子育てに大切な要素です」。また実家も大切と説く。「夏休みに実家で親や兄弟、祖父母の話を聞くことも大事。絆を強める三世代の良さも見直されています」。

 そこで2つ目のテーマは、家族が住み継ぐ実家をつくることだ。

 HABITAの開発では世界の165か所、日本の344件の築200年以上の家を見たという。「どの家も共通点は美しさ。デザインが良くないと残りません。汚いと壊してしまうからです。耐久性の良い家は木造です。木は国産、地産地消が理想です」と語る。HABITAは大断面木構造で、構造材である柱と土台に5寸角の木材を採用。乾燥材を使用し、現(あら)わしで建設するという。「古民家を調査して学んだ結果です」。基礎は高く、屋根は雨が早く落ちるように急勾配。将来の間取り変更が可能な設計だ。

 「予防医学の視点からの心電図オンライン化、家庭用水耕栽培、セキュリティなど先端技術を投入した次世代住宅の開発を進め、この秋には実現の予定です」。家づくりのヒントと、200年住宅HABITAについて熱く語ってくれた三澤さん。聞けば聞くほど「こんな家に住みたい」との思いを強くした。

 

 三澤千代治(みさわ ちよじ)=1938年新潟県生まれ。60年日本大学理工学部建築学科卒業。67年ミサワホーム鰍設立し、4年後に株式上場。2003年ミサワホールディングス竃シ誉会長、04年退任。同年ミサワインターナショナル鰍設立し、代表取締役社長に就任。(財)住宅都市工学研究所理事長、(財)国際メディア研究財団理事長等。著書に「200年住宅誕生」(プレジデント社)等。

【2008年9月13日号】