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賢く心がきれいな「小さい人」に
みんなで生きる大切さを伝えたい

高見のっぽ

75歳でミュージカル主演に初挑戦

高見のっぽ さん

ノッポさんと言えば、NHK番組「できるかな」でゴン太くんと一緒に笑顔で工作をしている姿を思い浮かべる人が多いだろう。約20年間「できるかな」に出演していたが、今は何をしているのか、何歳なのか…。実は2005年、70歳の時にNHK「みんなのうた」でグラスホッパー物語≠ナ歌手デビューを果たし、2007年に第2弾のハーイ!グラスホッパー≠発表。

 今年10月からは、75歳にして初の主演ミュージカル「三世代に贈る未来へのメッセージ〜ノッポさんの小さな音楽劇〜ありがとう!グラスホッパー=vに挑戦する(10月10日、11日池袋を初演に、1月に名古屋、3月に松山で公演予定)。これは、「みんなのうた」と登場人虫こそ同じだが、原案・脚本・作詞・総合演出・主演を全てノッポさん自身が務める新しい物語だ。

 グラスホッパー、つまりバッタのことだが、イギリスで作曲家が出会った一人の男が、電車の中に紛れ込んだバッタを助けたという小さなエピソードからインスピレーションを得て、作曲家が作り上げた曲。思いやり、信じる心、コミュニケーションの大切さを曲にし、今回のミュージカルでもその思いは踏襲されている。「脚本を書き始めるまで、寝ても起きても悩み続けました」とノッポさん渾身の作品。

 75歳という年齢。体力的な不安はないのだろうか。「50歳からジムに通っていますし、今もストレッチなどを中心に体力作りをしています。食事も好きなものを好きなように食べています。体が必要だと思うものを食べるようにうまくできているんです。獣みたいですね」と笑うノッポさんは、「できるかな」の頃と全く変わらない。

 スター俳優で奇術師だった父、104歳まで生きた母。俳優としてのキャリアは父譲りかもしれないが、長い間「小さい人」たちと関わり続けているノッポさんの優しい心には、母親の影響が大きかったようだ。「人前では騒がない、先生の言うことは良く聞く、人を傷つけない、人のものをとらない」そう母に言い聞かされ続けた。

 ノッポさんは「子ども」とは決して呼ばない。敬意を払って「小さい人」と呼ぶ。「私たち大人よりも賢くて心がきれいでしょう。そんな賢い人を子ども≠ニ呼ぶわけにはいきませんし、子ども目線≠ニいう言葉も好きではありません。自分の栄光の頃を思い出しても、40代や50代ではなく、5歳くらいですね」と話すノッポさんからは、京都から引っ越して来た東京で、親戚のおばさんの思いやりのない心を知った5歳の記憶など、当時の思いが次々にあふれ出た。

 「母からは、人には上品な人と下品な人がいることも学びました。富や権勢の問題ではなく下品な人は自分だけ良い思いをしようと思っている人≠フことです」。「小さい人」ほど、そんな下品な気持ちにはよく気がつくのだという。「小さい人≠ヘとても鋭い。だからこそ、良いことも悪いことも手間をかけて説明してあげてください」。

 10月から始まるミュージカルは、75歳のノッポさんが、バッタのおじいさんの口を借りて三世代に贈るメッセージ。「欲望はほどほどに。みんなで一緒に生きることを忘れてはいませんか。自分一人だけで生きることは良くないことですよ」。

 高見のっぽ(たかみ・のっぽ)=1934年京都府出身。本名は高見嘉明。日劇の舞台俳優・タップダンサーとしてキャリアをスタート。NHK番組「できるかな」に約20年間出演し幅広い年齢層に支持されてきた。そのほか、演出家、児童文学・絵本作家としても活躍。10月からはミュージカル「ありがとう!グラスホッパー」が始まる。

【2009年9月19日号】