12月14日、16日、17日の3日間で実施した都立九段高等学校(齋藤八重子・校長)の「健康教育週間」。諸機関や地域からの協力を得て、1日目、講演会「未成年者に及ぼすアルコールの害」および「対話式性教育」。2日目、「心と体のテーマ別講座」。3日目、セッション「異世代コミュニケーション」と内容も充実。保護者独自のプロジェクトも2年目を迎え、全国にさきがけて始まったこの実践は、年毎により進化を遂げている。主な実施内容とともに、この実践の特徴である「健康教育プロジェクト」や同校の養護教諭である竹下君枝先生の実践へのアドバイスもきいた。
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健康プロジェクトのメンバー達 |
■メンバーは
有志から 東京都立九段高等学校が実施している「健康教育週間」は今年度で4年目。その特徴である「健康教育プロジェクト」に参加した生徒達が主体となって行うことにより、全体としても興味や関心を高める効果へとつながっている。今回のメンバーは1年生6名を含めた16名。昨年度は当時の3年生がリーダーを務めたが、今回は2年生が中心となり、同校の養護教諭・竹下君枝先生の指導の下、準備をすすめていった。
プロジェクトは前年度の取組みを終えた時点から引き続いて動き始める。5月には生徒たちに受講してみたいテーマ別講座の事前アンケートを実施、夏休み前には企画がほぼ固まり、秋には20講座が決定。講師依頼もメンバーの仕事だが、なかなか講師と連絡がとれず、10月の修学旅行の最中にも泊まった旅館でミーティングも行った。
そして、各クラスの保健委員とも事前に打ち合わせ、当日には、講師の接待から案内までもメンバーが仕切る。実施後にはメンバーが待機する保健室へ講師や保護者、生徒達からのアンケートが運ばれてくる。最終日、そのアンケートでの評価は上々だが、反省点もみえてくる。それらを次に役立つようファイルにまとめるのも彼らの仕事だ。
「前回、1年生の時は性教育を担当していました」というのは、今回リーダーを務めた高はるなさん。「それでも最初はなにをしていいかわかりませんでした」と、サブリーダーの野口優美さん達メンバーと共にファイルをみたり、卒業生に連絡を取ったりして進めていった。ファイルの中には先輩達による講師依頼の電話応対マニュアルもあり、その内容は、どこかの会社にも匹敵するほどで、「社会勉強になりました」と、メンバーは口をそろえる。
それぞれの生徒にメンバーになったきっかけを聞くと、「保健委員から」のほかに「(メンバーに入った友人と)部活のつながりで」、中には「保健室へ通ううちに」仲間になったという1年生も。次回はその子達からリーダーが出るのだろうか。
これからの子どものために
養護教諭 竹下君枝先生
東京都立高等学校学校保健研究会の幹事でもある同校の竹下君枝先生は、不登校生徒のケアなど特にメンタルヘルスには積極的に取り組んでいる。そのほかにも都教育委員会の健康教育に関する委員会のメンバーも兼ね、また、養護教諭の代表で各種の講師、パネリストとしても要請が多い。相談活動など養護教諭の職務が多岐にわたる中、多忙を理由に健康教育の実践を避ける理由にはならないのではないだろうかと、「健康教育週間」を通じて、実践に向かうコツをきいた。
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今年も大成功でした。企画や事前の準備も昨年の反省点を踏まえてやっていました。このプロジェクトを進めるにあたり、生徒達には、目標の日から日程を逆算することにより自分が今何をすべきかを考えるよう心がけさせています。その点でも年々よくなってきています。
私がこの実践を行おうとおもったのは、普段は保健室に来ない子ども達のためにもなにかできることがあるはずだと考えたからです。真面目な生徒が多いこの九段高校でも赴任初年度に行った健康調査では、朝食の欠食や授業中の倦怠感、けがの多さなどの実態が見受けられました。それらの生徒がみな保健室へ来てくれればいいのですが、そうはいきません。そこで、学校における健康状態や保健室での実状をデータとして表すことで健康教育の重要性を理解してもらおうと働きかけ、この「健康教育週間」へつなげることができました。
学校の保健室は病院と違い、病気を治して健康に戻すという役割でなく、健康を損ないかけている子どもを健康に導き、健康についてよりプラスの意識を持たせ、将来においても健康な生活を送れるようにすることが仕事だとおもっています。学校によって抱えている問題は様々ですが、その学校の課題に合った健康教育を、そのために自分の学校の生徒や課題を見る・見つける目を養ってもらいたいとおもいます。
九段高校は行事が盛んな学校で、体育祭も毎年盛り上がりますが、けが人の数も少なくはありませんでした。それが年々数を減らし、約半数にまで下がったのは、事前指導も然ることながら、この健康教育によるものだとおもっています。
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アルコールでパッチテスト (1日目・講演会で) | 保護者会、OBとの 異世代コミュニケーション |
【2005年1月15日号】
