< 栄養士による食の指導 @ >

 

〇年に1度の災害時給食の実践                

   千葉県松戸市立新松戸小学校

 安全教育の一環として「災害時における非常時給食」を実施しているのは千葉県松戸市立新松戸北小学校。3年前の阪神・淡路大震災をきっかけに、震災のための防災物資倉庫を空き教室に設け、食料など備蓄した。その備蓄品を食べることで非常時における食事はどういうものかを体験させ、子どもたちに食料を確保することの大切さを理解させたいという思いのもと学校栄養士西村美恵子先生の提案で始まったもの。
 これは年に3回行われている避難訓練の1つとして年間指導計画に組み込まれている。実施日は毎年震災のあった日に合せ、1月17日に行っている。
 

野外で本格的にすいとん作り

 地震発生後、第2時避難場所として6年生が野外で、1〜5年生は教室で非常時給食を実施した。野外での給食は実際の災害を本格的に想定したもので、地域の人々の援助を受けて、校庭の一角に丸太を並べ、ブロックで作った釜戸にまきやLPガスで火をおこして、子どもたちがすいとんを作った。
 献立は、乾パン(1年生1枚、6年生3枚)、缶牛乳、すいとん、みかんの4品。備蓄されていたものは乾パンと缶牛乳、小麦粉で、その外の必要な野菜類や果物などは、交通手段が途切れた時を想定して、地域の農家と契約を結んで調達したものだ。
 学校からの呼びかけで、地域の人々は積極的に協力してくれたということだ。いざというときには地域と結びついているんだということを学ぶ機会にもなっている。
 2年目からは備蓄品も塩や醤油、消毒アルコールなどが増え、さらに初年度は地域から借りていた大鍋、釜戸、まきやLPガスも学校で購入した。
 しかし、O−157問題が深刻化し、子どもたちによる野外調理は衛生管理上できなくなり、給食室で作ったものを配膳するという形になった。衛生面を考えると、調理法や実施季節などにいろいろな制約が出てくるが、西村先生は、実際に災害になった時のことを考え、子どもたちに自分たちで調理させたり、冬だけでなく夏などいろいろな時と場所を想定して行いたいと考えている。「だれかが準備してくれて、与えてくれたものを食べているだけでは、教育にはなりませんからね」と話す。
 

災害時給食「必要」97%

災害時の食事に対する意識が高まることで、食に対して見直す機会を持つことができる。毎年、この体験学習後2〜3週間の給食は残菜が極端に減るそうだ。また実施後の5年生に行ったアンケート結果では、災害時用の給食指導を「とても必要」「必要」と答えている子どもが全体の97・1%を占めている。その理由として「乾パンとかの食事に慣れた方がよいから」「体験していた方が災害のときに役に立つから」「いざという時、どうしたらよいかわからないから」などがあがっている。また、家で災害時用の食べ物を用意していますかの質問には、用意している子が、7割を超えていた。
 栄養士が教室に入っての本格的な食の指導は今のところ行っていないということだが、この1年に1回の体験学習だけでも十分食の大切さが子どもたちに伝わっていると西村先生は話してくれた。

(教育家庭新聞98年10月17日)

 

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