豊かさがもたらした変化

  20年振り返り問題指摘  <子どものからだと心・連絡協議>
 

 1979年子どもの児童年に発足した「子どものからだと心・連絡協議会」が今年で20年を迎えた。子どものからだについて調査をした結果を持ちより、子どもの健康問題を正確に捉え、的確な対策をとろうと毎年開催されているもので、今年は「人類の知恵を集めて子どもを生き生きとさせよう−Active Living−」というテーマで、12月11日から13日まで、国立オリンピック記念青少年総合センターで協議が行われた。

 同連絡協議会の正木健雄日本体育大学教授は、特別講演で20年間を振り返り子どもの生活スタイルの変化に伴う身体的な変化に、心の問題も関わっていることを指摘した。
 この20年間で見られる際立った変化として、視力の低下した子とアレルギーの子が増加傾向にあり、虫歯のある子が減少傾向にあること。それを「豊かさ快適さの中で育っていない問題」であると述べた。1960年代から経済の高度成長期に入り、あらゆるものがオートメーション化され、生活は便利かつ快適になっていったがそれによって、子どもが発達する機会を失っていったという。生活の変化に伴った心の変化も体の不調と関わっている。増え続けている不登校児の欠席理由も病気でなく、ストレスや学校恐怖症など心の問題が増加する傾向にある。疾病とも正常ともいえない「からだのおかしさ」を訴える子どもたちが増え、これらの変化が顕著に見られるようになった。
 

運動能力の低下に心が関与?

 運動能力テスト合計点の年次推移を見ると年々著しく低下しているが、体力診断テストの合計点と比較すると、体力の方はあまり変わりがない。これについて正木氏は、「今の子どもたちの筋力系が弱くなっているということもあるが、この運動能力の低下は、やる気がなくなってきていることが一番の要因である」と述べた。体力レベルを高く維持できていることは学校体育の成果であるが、そこに子どもの気力が伴っていないという。
 「まず立ち上がり、そして歩くこと」という基本的なことすら満足に今の子どもたちはできていないということを指摘。20歳までは運動能力をできるだけ高め、骨密度を向上させ、適切な運動と食事が体づくりには重要である。20歳までに十分に高めることができていないと、子どものうちは特別な影響はないが、加齢が進んでくると多大な悪影響を体に及ぼすことになるという。筋力系運動を週1回と有酸素系運動を週2回くらいを20分程度行うよう心がけることが大切だとまとめた。

(教育家庭新聞99年1月9日号)