学校図書館の情報化を

効果ある物流システム

千葉県市川市の取り組み
 文部省の平成8、9、10年度「学校図書館情報化・活性化推進モデル地域」の指定を受けた千葉県市川市では、市内全小中学校54校への司書、読書指導員の配置、公共図書館や他校の図書館との図書の貸し借り、パソコン通信による蔵書データの相互検索、インターネットによる情報検索、保護者ボランティアの活用、など総合的な図書館の活用実践を行っている。

物流システム
 市川市は古くから、読書教育・図書館教育に取り組んできた。保護者ボランティアによる読み聞かせや市民図書室の併設など特徴的な取り組みも行われていた。
 学校図書館に専任者を−と昭和50年代から進めてきた司書や読書指導員という図書館専任者の全校配置も平成4年に10年がかりで完了した。学校図書館の利用がより活発化し、学習の中でも利用されるようになり、司書が他校や公共図書館に子どもたちの多様な課題に合う本を借りに行くようになっていた。

 そうした教育ニーズをうまくシステム化できないか−。市川市における学校図書館ネットワーク化の取り組みは、こうした声を背景に生まれてきた。まず、公共図書館と研究校の学校図書館を専用線で結ぶ実験が行われた。また、業者に委託して、公共図書館と学校図書館の本をうまく貸借する物流のシステムの実験が開始された(平成5年)。しかし、通常学校の電話回線は2本。司書が公共図書館や他の学校図書館と連絡を取り合うには、事務室にまでいかなければならず不便だった。そこで、学校図書館に専用の電話回線を引き、FAX電話をつけるという英断も行った。
 物流は、週2回赤帽2台に依頼して行われているもので(1日貸切)、この方式は全国で唯一と思われる。中央図書館と行徳図書館を基点に、2台がそれぞれ逆方向に回り、それぞれ学校に貸し出す本を積み、全学校を往復する形になる。本は頼んだ日から1週間ぐらいで届けられる。
 「市内の公共図書館と学校図書館が1つの大きな図書館になり、いろいろな学校の子どもたちに多様な本を提供できるシステムと考えている」と教育センターの小林路子指導主事。
 本の依頼の仕方がユニークで、学習の目的に合わせて単元や「おもちゃの作り方が出ている本」(写真上)などと依頼するのだという。そうすると、その学習に合う本を学校図書館や公共図書館の司書が自分たちの目で選んで、配送システムに乗せてくれる。

 「図書貸借希望表」には、担当者の負担を軽減するため、書名の記入欄はない。学年や教科単元、利用目的などを記入するのである。
 各学校の学習時期が重なりやすいのがネックだが、子どもたちは自校の蔵書と他校や公共図書館の蔵書を合わせて、学習を進めている。
 相互貸借される本の数は平成9年度で約5万7000冊、10年度は6万5000冊に及ぶ。このうち、3割は公共図書館から学校へ、7割は学校図書館同士での貸借。昨年は、学校から公共図書館に貸しだし依頼のFAXが1200通ほど、学校でも多いところでは300通ほどに及ぶ。

パソコン通信
 公共図書館、学校図書館にはどんな蔵書があるのか。市川市は、分館を含め4館1室の公共図書館に全84万冊の蔵書を持つ。そのデータは、現在41校でパソコン通信を使って検索できるようになっている。また、学校図書館の蔵書のデータベース化も市の研究員が作った検索ソフトを使って進められている。
 さらに、前述の41校の学校図書館には、NTTがISDN回線をプレゼントしてくれたおかげで、インターネットに接続したコンピュータが置かれている。CD−ROM検索用など複数台のコンピュータを設置している学校もある。
 「2、3年前はコンピュータは苦労するからいらない、という学校が多かったが今は、早くコンピュータを置いて接続して欲しい、という学校が圧倒的。子どもたちもインターネットから得られる情報には、非常に興味を持っている」(小林指導主事)
 教育センターでは、「インターネット研究員会議」を作りホームページ作りや情報収集の方法について研究。また「『調べ学習』研究員会議」も作り、図書やインターネットを学習の中にいかに活用するか、国語、社会、総合で研究している。
 司書同士、電子メールのやりとりも行っているという。

学習の中で
 八幡小学校では5年国語科で、「雪わたり」を題材に、14時間扱いで「わたしの描く宮澤賢治」をまとめた。司書の読み聞かせを聞いたり、自校や他校から借りた本を使って調べたり、花巻市の小学校とインターネットを使って交流したり、多様な手段で学習を組み、子どもたちはそれぞれ課題を持ち、宮澤賢治についてまとめていった。
 4年国語では、「キョウリュウをさぐる」を題材に、学年全体で恐竜について調べまとめる授業を15時間扱いで展開。最初はクラス単位で、その後「化石のできかたグループ」「進化グループ」「キョウリュウの一生グループ」など学年合同でグループ作り。結果を低学年向け、高学年向けに発表するグループに分かれまとめて行った。恐竜について活用した本は、自校の本55冊、公共図書館や他校から借用した本154冊と他校などの本が活躍していることが分かる。
 また、塩浜小学校は5年総合で「稲を育てる」をテーマに(22時間扱い)。学年合同で、地域の人に教えてもらったり、学校図書館で調べてまとめていた。
 学校の中には、授業中でも自由に図書館に行き調べることができる態勢が整っている学校もあるという。(以上、学習の中での項は、市川市「平成9年度実践記録集」を参照)

(教育家庭新聞99年5月1日号)