「分かる」と楽しい

楽しいから意欲が向上
東京都・一橋中学校

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 東京都千代田区立一橋中学校(平成10・11年度千代田区教育委員会研究協力校)は2月15日(火)、全教科の公開授業と研究発表会を実施した。研究主題は「生徒一人一人が生き生きと参加する授業の展開」。公開授業は、2校時分にわたってほぼ全ての学級で行われた。
 同校では、平成9年度より校内研修を進めている。研修は研究授業の実施とともに、アンケートによって生徒と教師の意見を聞き、研究主題に含まれる「生き生き」をどのように捉えるのかを探ってきた。

 ゲームを取り入れ、企画そのものが楽しい授業では、生徒が活動的に楽しそうに話している「生き生き」があり、また静かな中にも集中力を感じられる「生き生き」がある。つまり、「生き生き」のイメージは教科によって異なり、一つに絞りきれない困難さがあると述べる。
 アンケート調査の結果からわかったことは、生徒が各教科で「生き生き」と授業を受けるためにはまず、生徒が学習内容を理解し、教科を好きになることが大切であるということであった。この結果から研究目標として「分かる授業・楽しい授業」を設定した。
 教科担任制の中学校の場合、研究授業を全員で参観することは難しい。教師は3つの研究グループに所属して研究授業を展開。1生徒を引きつけるための「面白そうグループ」、2生徒一人ひとりを主役にする「あなたが主役グループ」、3生徒一人ひとりに課題を乗り越えさせる「マイペースグループ」。教師はこれらのグループを自由に選択できる。
 グループ内では指導案の作成、授業仮説の設定、研究授業の検討を行う。そして、研究指導案作成時と研究授業の実施後に、アンケートによって生徒から感想を聞き出している。ここでも、教師の取り組みと生徒の意見を互いに調和させようとする、同校の研究姿勢が見られる。アンケートの内容は、学習内容をどの程度理解できたか、授業は楽しかったか、授業後の学習の方向(もうすこしやさしいことから学習したい、同じ内容を復習したい、発展問題に取り組みたい、関連する別の内容を学習したい、など)、および授業の感想から構成。授業終了後の短時間で簡単に記入できるように、主に選択回答式。アンケートの結果から、授業が楽しかった生徒ほど、もっと詳しく難しい内容や関連する別の内容を学習したいと思っている傾向があることがわかった。

グループで教師同士研修
 先に述べた3つの研究グループからは、おのおの次のような感想・反省が述べられている。
 「面白そうグループ」=教科書以外の教材を使ったり、視聴覚に訴えた▽数学の苦手な生徒にはパズル的要素を取り入れて指導した▽授業が週1回のため、1週間前の楽しさを授業で持続させることが難しい
 「あなたが主役グループ」=生徒に先生役をさせるなど、伝えることをテーマに取り組んだことによって、学習意欲が向上した
 「マイペースグループ」=内容自体はおもしろくない教材を使い、どのように生き生きとさせるかが課題であった▽小さな理解の喜びを繰り返すことによって、最後は楽しいものにできるのではないか▽環境問題とタイアップさせることによって興味を示す生徒がいた▽生徒自ら課題を設定し、クリアさせた
 このように生徒の持つ自発的な学習意欲をかき立てることは、各教科の学力向上だけではなく、選択教科や総合的な学習に大いに生かされると同校は考える。これに関連し公開授業、研究発表会の後に講演を行った文部省教科調査官の河野庸介氏は、「生徒の基礎学力を定着させること、選択教科は必修科目から内容的に継続し発展させること、学習の意欲を向上させることを教師に望みたい。そして、生徒が教科を好きになるように、魅力ある授業を徹底的に研究してもらいたい」と述べた。
(教育家庭新聞2000年3月25日号)