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観る力を育てる(2)


前回は、パーソン・センタード・アプローチの概要を記し、積極的傾聴がそのメインの技法としてすえられていることを述べた。

積極的傾聴を一言で述べると、「共感しながら聴く」というものだ。批判ではなく、脅迫でもなく、同調でもなく、許容でもない。

こどもとの会話で出てきがちな言葉を例に考えてみよう。

「トマト嫌い、食べない」

批判「トマトが嫌いだなんて、なんてだめな子なんだ」
脅迫「トマトを食べないと、大きくなれないぞ」
同調「嫌いなんだね。苦いし、青臭いしね」
許容「嫌いなら食べなくても良いよ」

共感というのは、次のような返事を伴う態度になることが多い。

「トマト嫌いなんだ。食べたくないんだね?」

いわゆるオウム返し話法と呼ばれるものだ。もっとも基本的な技法で、相手が「うん」としか答えられない会話になる。

これは、「トマトが嫌い」という内容そのものの是非を示す会話ではないことに注意をする必要がある。ここで行っている会話では

「『トマトが嫌いだ』と主張しているあなた自身を認識していますよ」

ということを示している。これが、積極的傾聴のもっとも基本的なかたちだ。会話の内容自体が非常にシンプルなので、ノンバーバルコミュニケーション(態度)の比率が高くなる。いい加減な態度をとると、相手にあっという間に見抜かれる。

オウム返しを中心に積極的傾聴を行うと、相手が話し好きの人の場合、えんえんと話が続く。1時間や2時間程度は余裕で話が転がっていくので、話をつなぐのが苦手な人も覚えておいてもよいかもしれない。

ただ、こういった会話を繰り返していても、相手が変わる手助けをすることはできない。相手が変わる(成長する=教育する)手助けとして積極的傾聴を用いるには、適切に相手の思考を整理するなどの「介入」をする方法が必要となる。

次回は、その介入方法の一つである「コーチング」を考えてみることにする(榊原