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【電子黒板でテレビ会議】海外交流が身近に
―日本 虎姫高校×フィンランド ヨエンスー高校

 滋賀県立虎姫高等学校(西嶋博純校長)は11月17日、フィンランドの名門校・ヨエンスー高校と無料のコミュニケーションソフトSkypeを使って、テレビ会議を行った。Skypeを通してフィンランドの生徒たちの表情もはっきりと見ることができ、電子黒板内蔵のスピーカーにより、フィンランドの先生や生徒たちの音声をあまり時差なく聞くことができた。

英語で交流する機会が増えた

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電子黒板で学校紹介する虎姫高校の生徒

  フィンランドと日本は7時間の時差がある。そのため開始時間を調整し、ヨエンスー高校では朝8時15分から、虎姫高校は午後3時15分から会議に臨んだ。70分間の会議中、英語で生徒たちが活発に交流した。ヨエンスー高校では英語の授業の1コマとして実施、担当は同校英語教諭のライラ カンガスプンタさん。虎姫高校ではESS部の課外活動として実施した。

  ヨエンスー高校は、全国に13校しかない教員研修校(ティーチャー・トレーニング・スクール)の1つで、学生の教育実習も担当できる資格と実力を持つ教員が常駐する。国立大学の附属校である。

  虎姫高校は、滋賀県の進学校。複数の大学と連携講座を行っている。また、滋賀県だけでなく東京、大阪にも支部を持つ「姉水会」という同窓会組織が活発で、母校を支援する気風が厚い。昨年創立90周年を迎えた時には、姉水会を中心とする創立90周年記念事業実行委員会が母校に15台の大型電子黒板「アクティブマルチメディアスタンド387Pro」(ナリカ社)を寄付し、普通教室に配備した。

交流テーマは 高校生活や学習

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自己紹介するヨエンスー高校の生徒たち
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フリートークで互いの関心事について質問

  会議は、高校での学びや学校生活について、事前に約6項目の質問を数週間前に送付し合い、回答を準備して実施した。テーマは「Why, what and how do you learn at your high school?」。

  当日は、ESS部とコアSSH班の生徒約20人が教室に集合。黒板に固定した電子黒板「アクティブボード95Pro」にフィンランドの生徒たちの映像を拡大投影し、後方に配置した移動型「アクティブマルチメディアスタンド387Pro」に学校紹介等のプレゼンテーション資料を映し出し、フィンランドに伝送した。

  まず、西嶋博純校長が「フィンランドと日本の生徒が意見を交換できることはすばらしいこと。生徒たちは一生懸命準備し、今日の会議を楽しみにしてきた。意見の交流を通して友情を深めてほしい。生徒たちは英語でうまく言えない時があるかもしれないが、頑張って話してくれると思う」と挨拶。

  次に、ヨエンスー高校のマリタ ホッカネン校長が「フィンランドの人口は535万人。生徒は、必修の英語、スウェーデン語に加えて、フランス語、ドイツ語、スペイン語、イタリア語、ロシア語、中国語など多くの外国語を学んでいる。そのため、外国語とその文化を学ぶことはとても重要。日本の生徒と話す機会が持てることはとてもうれしい」と生徒たちの学習状況と会議の意義を語った。

  その後、生徒同士で学校と自己について紹介。コアSSH班男子生徒は、電子黒板に日本の地図を投影して、「ここが琵琶湖で日本最大の湖です」などと説明した。

海外を知る 貴重な機会

  Q&Aセッションでは、日本とフィンランドの生徒が質問し、随時相手校の生徒が回答した。

Q=日本(以後、JA)「私たちは試験結果のランキングに敏感です。フィンランドではランキングがないと聞いていますが、どのように学習意欲を維持していますか」

A=フィンランド(以後、FIN)「フィンランドにランキングシステムはありませんが、高校の最終学年に実施される大学入学資格試験があり、学習意欲を維持しています。フィンランドでは大学入学資格が評価されており、さらなる学習と生活を実現するために重要な資格です。

Q=JA「日本にはたくさんの塾があり、大学入学のために塾でよく勉強します。フィンランドの大学入学システムについて教えてください」

A=FIN「フィンランドにも入学資格のための数か月間のコースはありますが、概してとても費用が高く、あまり人気がありません。大学への合格は、大学が実施する試験だけでなく、大学入学資格の成績が重視されるので、私たちは学校での勉強に最善を尽くしています」

Q=FIN「生徒は先生を尊敬しており、友だちのように先生たちと人生について話したりジョークを言い合ったりしています。日本では先生との関係はどうですか。勉強以外のことも話せますか」
A=JA「一般的には尊敬していますが、先生と生徒の関係は、両者の性格によると思います。親しみやすい先生には勉強以外のことも話すことができます」

  フリーディスカッションでは予想以上に日本の生徒たちが活発に質問、こうした交流の場を作ることの大切さを実感させた。

  JA「あなたの髪の色は自然のままですか?」、FIN「そうですよ」、FIN「ムーミンを知っていますか」、JA「はい」、JA「日本のアニメを何か知っていますか」、FIN「ポケモン、トトロ」など、楽しくなごやかに会話が続いた。
日本の生徒が「私たちは今、死刑制度について勉強している。日本の死刑制度についてどう思うか」と尋ねると、「残念に思う。あなたはどう思うのか」とフィンランドの男子生徒から切り返される場面もあった。両校生徒は友情を深め、今後も会議をする予定だ。

【2012年1月1日号】 

教育家庭新聞