来た来た!! 新教科「情報」
神奈川県立荏田高等学校 石丸信男先生
Interview!!
教育マルチメディア新聞2002年3月3日号
  

 再来年度の新教科「情報」の実施に向け、題材や授業案などを共有し、課題を提案し続けている神奈川県高等学校教科研究会情報部会。平成14年1月末まで、114人の教員が県から「情報」科教員免許を認定され、方向性を探り続けている。「情報」教員に求められるものとは? 必要な教材は? 日を追うごとに情報交換が活発に行われていく。
 そこで同部会・石丸信男部会長(県立荏田高等学校)に今後の方針等を聞いた。
 
−−教科書を選ぶ際のポイントは

 授業をカリキュラムに沿って展開するためにも、学習内容や目的を具体的に記した教科書が必要となります。しかし、新教科「情報」を担当する教員は情報免許取得の基礎資格が必要となっています。そのためにこれまでコンピュータを担当してきた教員は「情報」を継続して担当できるとは限りません。
 これまでどおりのワープロ・表計算というコンピュータリテラシー主体の授業をイメージしていた先生は「情報」の授業に社会科学的側面、倫理道徳的側面、情報理論の基礎など、多様な専門性が必要とされることについて戸惑いを感じることと思います。

 そのような時、頼りにするのは教科書です。カリキュラムに沿って授業を行うためには学習内容や目的を具体的に記した教科書が重要となります。
 しかし、教科書には記述する内容に関してもページ数に関しても制約があります。例えば「情報A」は半分以上の時間数を実習に充てなければなりません。実習には時間的な配分もふくめて綿密な計画と準備を必要とします。40人の一斉授業となるとなおさらです。しかし、教科書には実習の手引きのような細かいことは載せられません。「プレゼンテーションツールを使って家族旅行の計画を発表してみよう」程度しか書くことができないだろうと思います。

 実習は目的・計画・実行・レポートという一連の流れが必要でしょう。このため、教科書を補足する副読本として実習の学習事項をまとめたワーク形式のものや、実習レポート形式までサポートするようなものなども必要となってくるでしょう。
 以上の理由で、教科書と連携した形の副読本の充実度が逆に教科書そのものの選択のキーポイントとなることも考えられます。
 
−−希望する教材はありますか

 現場での予算は多く望めないと思います。一般に公開されている無料ソフトなどを含め、実習に必要とされるソフト群が教材に添付されることを期待しています。
 
−−「情報」担当教員に求められるものとは

 教科の専門的な知識、ハードやソフトの知識、多くのアプリケーションに精通している…という一般的なことは当然として、生徒を教える立場に立った場合、生徒を惹きつけるテーマをもっていることが大事ではないでしょうか。興味あるテーマを選ぶことはとても大切です。身近であればあるほどいいでしょう。そしてそのテーマへ生徒の興味を向けさせるには、話術にも長けていること。これも現代の教師には必須のことと思います。大袈裟に言えば「吉本新喜劇」のように、生徒を引き込んでいく企画力・創造力かな?

 12月に行われた情報部会の研修会では、アイディア溢れる授業例が各グループ5分程度の持ち時間で発表されました。「観るものを惹きつける」発表が大切であるという雰囲気が表れていました。

 ある先生は、「電子メールを用いた伝言ゲーム」を発表。伝言内容を後列までメールで伝え合い、列ごとの早さと確実性を競うというゲームです。授業でメールを学習し応用段階でゲームを取り入れたところ生徒全員が集中し取り組んだといいます。

 生徒が主体的に取り組むことのできるような題材提供が必要ですね。その意味においても、教師には「企画力」、話術が求められるのではないでしょうか?
 
−−話術ですか?

 よく冗談ととられるのですが「吉本新喜劇」を参考にしなさいと言います。人々を笑いの渦に巻き込む話し方、流れるような会話、そのタイミング、これを授業に応用できないかと考えました。数学ではなかなか難しいのですが時に笑わせ、時には説き、時には感動させるような内容を心がけています。
 
−−その他に求められるものとは

 コンピュータに関して、簡単な故障ならすぐ原因を発見し直せる、陥りやすいトラブルを多く経験している、トラブッた場合に機転が利く、等でしょうか。
 授業中は思わぬことが起こります。生徒がつい触れたためジョイント部分が抜けた、画面が元に戻らない、フリーズした…。
 これらは毎回のように起き、その場ですぐ直さないと授業が進みません。1か所のトラブルに長くかかわっていると収拾がつきません。
 
−−評価は

 評価はなかなか難しいと思います。来年度の研修会のテーマにしたいと考えています。
 「情報」は実習を伴う教科ですから、評価は主に作品やレポートを中心にすることになるでしょう。レポートは授業での目的に添った内容であり結論が出ているか、教えた内容や技術等がレポートに反映されているか等がポイントです。各学期に10〜20回の提出物をもとに採点する、という形になると思います。
 また、ペーパーテストを行うことも考えられます。
 
−−今後の情報部会の取組みは

 現在、情報教育部会、情報技術部会、情報ネットワーク部会の3部会を設け、研修会やメーリングリストWebページの公開などを通じて活動を行っています。今後は、各部会が年3回程度、授業参観や教材検討等を中心とした研修会を実施していきたいと考えています。またアンケートを逐次行い、研修会などに反映させていこうと思います。
 平成14年度は新教科「情報」が完全実施される前年という特別な年です。その意味で本年度の活動は特に重要であると考えています。