G8教育大臣会合が開催

情報の共有、国際的なネットワーク構築で同意

【TOPページに戻る】

G8(主要8ケ国)の教育大臣が4月1、2日の両日、上野の東京国立博物館に集まり、「変容する社会における教育」を議題に会合を行った。ホスト国である日本の中曽根弘文文相から、会合の結果をまとめた議長サマリーが共同記者会見の席上発表された。

 サマリーは、変化激しい社会における生涯学習の役割の大きさを強調。また、IT革命が進行する中で、教育が経済社会の発展について戦略的に重要であること、学生・研究者の国際交流の重要性が認識された。具体的には、「ボーダレス化が進む教育活動の(各国の)教育システムにとっての意味合いについて、第一に専門家の会合で検討すること」、「テクノロジーを効果的に活用する方法について、情報の共有を行うこと」、教育利用についての「国際的なネットワークの構築」などが合意され、今後今回のオブザーバーとして出席したOECD、UNESCOなどの国際機関を利用して、協議が行われる模様だ。


 議論の内容は、1変容する社会における教育面での挑戦2生涯学習と遠隔教育3教育革新と情報通信技術(ICT)4学生、教員、研究者、行政官の国際交流の促進、の4項目。このうち、1は生活倫理や学力の向上、学習意欲の欠如など、旧来からの教育問題について。2以降は、ICTの伸展という新たな枠組みの中での教育問題が中心となっている。

 この中で、「ICTは、教育の内容を豊かにし教育機会提供の方法を変える展望を与えるものである」と言及。テクノロジーへのアクセスに係る国内的・国際的な「デジタル・デバイド」の減少、テクノロジーの教育利用についての情報の共有、国際的なネットワークの構築、留学などの方法による学生間の国際交流の促進、などが合意された。
 日本では、2005年を目標にすべての教室にパソコンを配備し、すべての教室からインターネットに接続するという政策が進められているが、今回の議長サマリーは「その計画を前倒しするような影響を与えるだろう」(文部省国際企画課)という。
 以下は、共同記者会見における各国大臣のコメント。「すべての人が新技術へのアクセスをできなければならない、という認識を深めた」(フランス)▽「ICTを使うことで教育、学習の質を上げられる。どこにいても、子どもはICTにアクセスできるようにすべき」(ドイツ)▽「他国で留学生として勉強することは非常に重要。教育上の持てるものと持てないものを作ってはならない。生涯を通じて教育が重要になる」(イギリス)▽「もっと多くの学生、研究者が外国で勉強できるようにする責任がある」(EU)

中曽根文相の会見から
 まず、前文においては、21世紀の社会がどんな社会になるか、私たちなりに整理した。伝統的な工業化社会から知識社会への移行期に、高度な技能を身につけることにより大きな成功を収める可能性がある。そのような恩恵を受ける機会を全く得られない人もあると考えられる。そのような人にあっては生涯学習の振興がすべての人にとって最優先課題である。
 また、教育政策や雇用、科学技術、情報コミュニケーションなどについて、一貫性と関連性がなくてはならない、ということについて各国で認識した。
 変容する社会における教育面での挑戦では、学習の遅れ、欠席、退学、非行などの問題については、基本的に各国共通の課題であることを認識した。

 次に「生涯学習と遠隔教育」について。
 5つの点について合意した。特に3のボーダレス化が進む教育活動の(各国の)教育システムにとっての意味合いについて、第一に専門家の会合で検討すること、について各国の理解が得られたことは、大変意義のあることだと考えている。その他、遠隔教育の分野における連携と協力が多様な手法で進められることなどを奨励すること、としている。
 他に今の若者は一生のうちに平均して5回も職を変えるだろう、と言われているが、それだけに生涯学習は重要になるといった発言などがあった。
 「教育革新と情報通信技術(ICT)」について。ICTは学習機会へのアクセスを拡大することや児童・生徒の理解力・創造力を深めることを可能性を有するとともに、ICTの影の部分についても配慮が必要である、との認識を示している。その上で、私たちは6つの点について合意した。特に、3の教育に用いられるテクノロジーへのアクセスに係る生涯を軽減させるための効果的な実践事例を共有し、これによって国内的・国際的な「デジタル・デバイド」を減少させること、また、4の教育に利用可能な質の高いコンテンツ・ソフトウェアにアクセスするためのクリアリングハウスやポータルサイトの開発を目指すプロジェクトの価値を認識し、これらに対する物的・知的支援を強化すること、について各国の理解が得られたことは大変望ましいことだと考える。
 この他、ICTを教育分野で活用する効果的な施策について情報を共有し、国際的な連携を深めることなどについて合意できた。

 次に学生、教員、研究者、行政官の国際交流の促進について。
 ケルンサミットのコミュニケにおいて、宿題として私たちに課されたことである。私たちは国際交流・協力の意義を改めて確認して、その上で今後の推進にあたっての主な障害を列挙して、各国が同じような課題を抱えていることを認識できたことは、大変重要なことである。
 今回の会合の成果はG8各国にとどまらず、世界の教育政策の進展に役立つものとなるように、全力を尽くしていきたい。
(教育家庭新聞2000年5月6日号)