「共に学ぼう! 生き方を」をテーマに

小・中・高校が同時編集
えんかくちの学校が画面を共有

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 「遠隔地の学校間での共同学習」をテーマにした平成12年度情報教育対応教員研修全国セミナーが6月17日、日本教育工学振興会の主催で開かれた。
 この全国セミナーは、全国約15会場で実施されるもので、冒頭日本教育工学振興会の関口一郎事務局長が、G8教育大臣会合などで情報教育が重視されているわりにそれに対する政府の予算が少ないことについて、「予算の問題を解決していかなくてはならない」と挨拶。
 続いて、総合司会の赤堀侃司東京工業大学教授が「今日のテーマは、共同学習。実際にいくつかの地点を結んだ学習をお見せする」と語りながら、自身が大学でWeb上の掲示板を利用して学生に課題を出しレポートを提出させている実践に触れて、課題、テーマ設定、情報提供、知識の確認といった流れが重要と前置きした。

 今回のセミナーで共同学習のツールとして利用されたのは、同時編集機能でグループや学校間で共同学習ができるマルチメディア統合ソフト「サイバーポップ」(データポップ社)。
 セミナーでは、第1部で「校内LANを利用した共同学習」として東京学芸大学附属大泉中学校の成田喜一郎先生が、3年生の選択社会で行っている「犯罪学ゼミ」の実践について発表。4年目になる同ゼミは、今年は23名の生徒が参加し、刑事裁判の傍聴や外部講師による講義、インターネットによる資料収集といった手法を取り入れている。
 少年の非行、同級生殺人について、犯罪被害者について、神戸の連続児童殺傷事件について、などテーマは様々だが、生徒たちはそれぞれに工夫し追及し模造紙やレポート、統合ソフトでまとめている。大学の卒論並みの長さのレポートもある。
 「犯罪は、今日の生徒にとって非常に身近なテーマ。机上の空論やマスコミの報道に頼るのではなく、実際の体験として裁判傍聴をしている。
 この統合ソフトを活用することで、全体として犯罪学を共有する意識が芽生えていると考えられる」と成田先生。

「生き方」で共同学習
 第2部は、「遠隔地の学校間での共同学習」。「共に学ぼう、・生き方・を!」をテーマに、岡山市教育センターと岡山市内の小学校、東京・台東区立忍岡中学校、名古屋市立西陵商業高校と東京のセミナー会場を結んで、統合ソフト「サイバーポップ」の同時編集機能で共同学習を行った。ネットワークを通じて、遠隔地にある3校が同時に共同編集を行うという初の試みだ。

 まず、最初のページは共同制作の自己紹介の画面。続いて各校一頁ずつ分担して、小学校は「地域で働く人々」、中学校は「いろいろな職業調べ」、高校は「それらの職業に必要な資格」についての紹介の画像や文字や音・グラフによるメッセージを画面に貼り付け、相手の作品を見ながらリアルタイムで作り上げていく。
 忍岡中学校では、ロウソク屋さんや染め物屋さんなど校区の伝統産業について、生徒が調べた内容を絵と写真・音・文章でアップ。西陵商業高校は、交流しているエジプトなどの日本人学校の生活の様子も同様にマルチメディアで伝えた。途中、社会教育の民間団体シニアSOHOミタカも飛び入りで参加し生涯学習の活動を伝えた。
 「日本人学校や海外の学校と交流することで、英検の成績も上がりました」(西陵商業高校)、「空手のチャンピオンになりたくて、道場で頑張っています」(岡山市の小学校)と声のメッセージで。また、「皆さんとつながって作るコラボレーションっていいですね。今度は、英語版のホームページを海外の学校と一緒に作りたい」とチャットでリアルタイムに意見交換した。
 最後にまた、共同制作で感想を述べあった。
 今回の共同学習を会場で見ていた向平泱・忍岡中学校校長は「生き方の持ち方、考え方について、ページを通して擦り合わされていくという実感を持った。生き方については、各校種でそれぞれねらいがある。例えば、小学校ではいろんな体験を通して感性を学んでいく。中学校では、…。異校種が共同で行うことで、自分の学びの未来が分かり、逆に過去も見られる」と利点を強調。

総合学習のツールに
 山極隆・玉川大学教授は、「総合的な学習の時間の成果はこれから問われることになるが、今までの学校教育では、各地の学校や地域を越えたこうした学習はできなかった。総合的な学習の時間の中にどういう魂を込めるか、先生方みんなで考え、質を高めていって欲しい」「インターネットやこうしたソフトが共同学習の武器・ツールになる」と新学習指導要領のねらいなども含めて総括した。
 会場から、この統合ソフト「サイバーポップ」の機能について質問があり、「交流した内容がデータとして保存でき、交流学習の画面として残せるのは非常なメリットですね」と参観した先生はソフトの利点について語っていた。
(教育家庭新聞2000年7月1日号)