心と体の健康に

ネットワークやインターネットを活用

「心の教室」コンピュータ設置事業

平成10年度は文部省の補正予算により、さまざまな情報化事業が新たにスタートしている。
 そのうちの1つ、中学校を対象とした「心の教室」コンピュータ設置事業はどう進んでいるのだろうか。事業は、ネットワークなどを活用した健康相談活動を行うため、都道府県に委託し「心の教室」を整備する公立中学校の1部にコンピュータ1台(レンタル)と周辺機器、健康管理用のソフト、インターネットの利用環境を整備(1校当たり年約60万円)し、研究校でその方法について3年間研究するもの。

 現場で
 保健室にコンピュータを設置した静岡県浜岡町立浜岡中学校では、保健室登校やお話の部屋(心の教室)登校をしている生徒が、コンピュータを操作することで心身の安定を図れることをねらいに、生徒自身にもコンピュータやインターネットを活用させている。主に、ホームページの閲覧やCD−ROMでの調べ学習や好みの音楽の視聴、学習ソフトによるドリル学習、ゲーム、デジタルカメラなどによる画像の取り組み、などに使われている。
 まだ、活用して日は浅いが、同校の養護教諭杉山妃賢子先生は、「人との関わり方がへたな生徒たちだが、コンピュータへの抵抗感はなく、夢中になって操作している。操作の間、心の安定が図れているようだ」と成果を上げる。
 また、健康情報の収集や保健統計処理、近隣各学校の養護教諭とのメールによる情報交換などに活用している。

 浦和市立白幡中学校保健体育科の松永善樹先生は、インターネットを利用して東京学芸大学教育総合実践センターの「教育相談」のホームページや新聞記事の検索サービス(有料)などにアクセス、授業での指導資料や読み物資料、教職員向けの資料作りにインターネットを活用している。
 「コンピュータやインターネットを活用すると、指導資料が作りやすく、新しい資料をどんどん取り入れることができる」という。
 もちろん、健康診断結果や保健室への来室管理など心身の健康管理にも活用している。
 各研究校では、心の健康や身体の健康にネットワークやコンピュータを活用しているようだ。

 教育委員会で
 静岡県では、16校を研究校に指定した。県の担当者は「生徒の悩みが多様化しているなか、なかなか学校では横のつながり、外部とのつながりをうまく持つことができない。そうした中で保健室を各学校とオンラインで結び、連絡が取り合えるようにすれば、例えばインフルエンザの罹患の状況などもネットワークを通してすばやく把握し健康予防にも役立てることができるだろう」と意義を強調する。

 今年度で全中学校への「さわやか相談員」の配置を完了した埼玉県では、16の市町村に委託し、22校を研究校にした。県の担当者は「22校の実践を取りまとめ、県内の担当者講習会で成果を広めていきたい」と話す。また、13の市町村に委託、計47校を研究校に指定した愛知県の担当者は、「ネットワークを利用し、先進的な健康相談に関する知識や健康相談の状況、適切な処置方法などをタイムリーに収集し、役立ててもらいたい」と話す。

 全体で
 研究校数は当初補正予算では、約740校分の予算が盛り込まれていたが、各県の事情により実際は600校あまりになった。県の中には実施しない県も5県ある。事業が心の教室の整備とリンクしていたため、残念ながら市町村が希望するのが難しかったようだ。

(教育家庭新聞99年3月6日号)