新100校プロジェクトが終了

成果発表会で歩み検証 

新100校プロジェクトの成果発表会が3月4日、京王プラザホテルで開かれた。平成6年度からネットワーク利用環境提供事業としてスタート、平成9年度からは高度ネットワーク利用教育実証事業として続けられてきた100校プロジェクトも平成10年度で終了する。参加してきた約100校の中には、市町村の対応が間に合わず10年度でインターネット利用環境が途切れる学校もあるが、11年度からは新たな段階として、ポスト100校プロジェクト(仮称)が、1100校プロジェクトで得たノウハウや成果の一般の学校への提供・展開支援2情報交流、共同研究の場の提供3先進的な情報技術を使った教育手法の実証、を3本柱に2001年度まで実施される。

 ポスト100校プロジェクトの名称はコンピュータ教育開発センターのホームページなどで募集中(4月8日まで)で、5月10日ごろに公表され、プロジェクトがスタートすることになっている。

分科会・全体会

 さて、成果発表会では、各学校の実践や新100校のテーマ企画、教育委員会の取り組みなどの発表があった。このうち、2000年には町内のすべての教室からインターネットに接続できる環境が整備される岐阜県輪之内町では、100校プロジェクトで平成7年に1校が接続されたことがきっかけとなり、福祉と教育を重点施策とする町の施政と担当の指導主事の努力により先進的な環境が整えられていった。町内の学校には情報教育主任も位置づけられている。
 新100校プロジェクトの重点企画「地域展開」の指定を受けている「ネットdeがんす」プロジェクトは、メーリングリストによる情報交換を通じて教員自身の手で各学校にインターネット接続用のサーバーを構築し、広島地域の小学校4校、中学校2校、高校2校を128Kのデジタル専用線で接続。自由度の高いネットワークを構築した。

 千葉大学教育学部附属中学校は、大阪教育大学の越桐研究室「インターネットと教育」などの協力を得て、学校教育用WWW検索システムを研究・運用している。「学校検索」は「インターネットと教育」にリンクしている学校のホームページ内の情報がすべて検索でき、小学校低学年用の「みーつけた」はマウス操作だけで情報が検索できるもの。
 文部省中学校課の亀田意統・情報教育室長は、「今日の成果発表会には1000人を超える人が参加されたという。情報教育に非常に関心を持っておられることに感謝する。情報化の波が急速に押し寄せている。2002年から小中学校ではじまる新教育課程では一層、ネットワーク、コンピュータを授業の中で活用できる内容にしている」と力強く語った。

パネル討論
 続いて、「ネットワーク教育利用の動向と課題」をテーマにパネル討論が行われた。
 コーディネーターの坂元昂・メディア教育開発センター所長は、1こねっと・プランや文部・郵政省の先進的教育用ネットワークモデル地域事業などが動いてきた。しかし、もし100校プロジェクトがなければ、今日のようにはならなかったであろう2関係省庁の密接な動きが100校プロジェクトをもとに生まれてきた、と総括。その上で、100校プロジェクトの4年間の実践は何を変えたのか、と投げかけた。
 横浜市立本町小学校の出口和生氏は、平成7年度はクラブでの利用、8年度は全校イントラネット及び保護者に向けた利用、9年度は地域、10年度は地域ボランティアの取り込み、とふくらんでいった、と自校のネットワーク利用の成長過程について。
 奈良県大淀高校の杉崎忠久氏は、1核となる人が育った2草の根ネットワーク活動が始まった3海外の教育プロジェクトとの交流が始まった4地域や組織に刺激を与えた5子どもたちが変化してきた、と総括。

 前橋市教育委員会の折田一人氏は、7年度は線の時代、8年度はものの時代(校内のパソコンや校内の拡大など)、9年度は地域の時代(市全体のネットワークの構築)、10年度は組織の時代(研修体制、メーリングリストでの技術支援)と1校から市内全校のネットワークへと発展した過程を。
 ただ、まだまだ課題は多く、折田氏は学校における専任の担当者はいまだにゼロである、と指摘。電気通信大学の岡本敏雄氏は、「ネットワークは本当に深い思考力を持った人間を育てられるのか」と危惧を。流通経済大学の林英輔氏は、今後の展開として教員が校内のネットワークを構築するのでなく、学校のネットワークを構築できる地域の業者を育てる必要性を強調した。

(教育家庭新聞99年4月3日号)