授業にいかに活用するか
「インターネットの基本と教室における指導との統合」

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 インターネットを授業にいかに活用するか−−8月25、26の2日間、東京工業大学で日本全国1200か所以上に配信が可能な衛星通信ネットワーク「エルネット」を使って、シーラ・ガーシュ教授の情報教育講座「インターネットの基本と教室における指導との統合」が行われた。ガーシュ教授(ニューヨーク市立大学)は、インターネットを活用した教育を促進するための、教師教育について先駆的な研究をしている専門家で、米国内だけでなく世界中から招聘されて、講演を行っている。日本で行われた講演は簡潔でわかりやすい内容であり、その概要を以下に紹介する。
 なお、文中の○数字は、左欄に上げた関連するホームページのアドレスの番号。

【シーラ・ガーシュ教授が講演】

 教える中身を変えるのではなく、インターネットを使って教え方をどう変えるかを話したい。
 まず、インターネット接続の状況について。米国では、89%の学校がインターネットに常時接続している。日本でも、全国1082校が高速回線でインターネットに接続するという。しかし、米国は全体の35%が1・5Mbpsの高速回線で接続されているのに対し、日本は64Kbpsが主流で、速度の点でかなり差がある。
 しかし、米国で89%の学校が接続されているといっても、インターネットを使っている率はずっと少ない。教師トレーニングもまだ十分ではない。
 インターネットに接続することで、何が可能になるのか。様々な情報を探す。ネット上のバーチャル図書館からニュースの内容をオンラインで読むことができる(http://www.elibrary.com/)。様々な刊行紙や研究誌を見つけ、基本的な情報を得ることができる。
 keypalsというWebサイトにアクセスすれば、世界中の人とコミュニケーションすることもできる。(http://www.keypals.com/
 教室に専門家を招くこともできる。生徒は、本を買うのと同じように、インターネットを使って法律家や政治家、歴史家などに質問をし、いろいろな助言を得ることができる。例えば、生徒があるスキルを得たい場合、実際にその会社に行くことが不可能でも、インターネットで助言を得ることができる(http://www.askanexpert.com/)。
 仮想で他の国へ行く、博物館、海洋学について勉強することもできる。
http://coral.aoml.noaa.gov
 また、世界中の様々な学校がインターネット上にホームページを公開している(http://web66.coled.umn.edu/)。生徒が書いた詩や作文を載せているサイトもある。
 ネットスケープ、インターネットエクスプローラーの2大ブラウザの性能比較が見られるサイトもある(http://browsers.com/)。

【電子メールの利用】
 日本の学校を訪問した時、AT&Tのプロジェクトを利用し、外国の学校と共同研究をしていた。あるテーマについて電子メールで互いにやり取りをし、結果をホームページに掲載していくといったもの。
 生徒にとって電子メールは作文力を向上させる。また、キーボードのタイピング能力も向上させていく。さらに、外国の学校を相手にする時、文化の相違や読み手の立場について、考えさせることができる。
 教師にとっては、カリキュラムについての情報を他国の先生方がどう教えているかを知り、電子メールで他国の教師とコミュニケーションすることで、他の教師から学ぶことができる。教師としての資質を開発することができる。
 電子メールを活用し参加者が相互に情報交換や議論ができる「メーリングリスト」もある。1万種以上のリストがあり、うち1000以上が教育者と生徒のために作られている。そうしたメーリングリストを検索できるサイトもある(http://www.liszt.com/)。

【Webサイトの評価】
 さまざまなWebサイトがあるが、Webサイトの評価基準は、@正確さA情報の発信元B含まれている内容CデザインD情報の新しさE予想される対象者、の6点に分けることができる。
 @正確さは、情報が信頼のおけるもので、誤りはないかどうか。A情報の発信元は、サイトの作者は誰なのか、作者によって内容がゆがめられていないか、作者の電子メールアドレスが書かれているか、サイトの提供者は誰か、など。B含まれている内容、ではタイトルがそのサイトの内容を表しているか、情報が上手に書かれているか、Cデザインはそれぞれのページが、見やすく簡潔に作られているか、D情報の新しさは、サイトの作成日時や更新日時、などがチェック項目になる。

【引用の書式】
 生徒は、オンラインの資料を、調査研究のために引用する必要がある。全ての参考文献を含めるべきである。
 その資料の引用に当たっては、電子メールであれば、差出人、サブジェクト、電子メールアドレス、日付を、ホームページであれば、作者、オンラインページのタイトル、URL(ホームページアドレス)、日付を、オンラインの画像、音声、映像についてはタイトル、URL、日付を付けること。
 教育者は、以下の場合においては著作権のある作品を提示することができる。
 @カリキュラムに基づいた教育Aマルチメディア作品の作成方法の説明B会議の際の提示C自主学習のために生徒に指定した資料。

【インターネットの利用規定】
 インターネットをどう利用すればよいか=適切な利用方針(AUPs=ACCEPTABLE USE POLICITES)について、学校の規則や生徒、両親、教師の責任について、教える必要がある。AUPに含めるべき項目は、インターネット利用の規範やインターネットへのアクセス権、生徒のインターネットユーザーとしての責任、違反者への罰則規定などがある。次のサイトにその例がある(http://www.erehwon.com/k12aup/)。

【インターネットの危険な側面】
 インターネットはすばらしい情報を得られる反面、問題もある。起こりうる危険として、ポルノ資料への接触、性的犯罪に巻き込まれる可能性、いやがらせがある。
 ポルノ資料は、Web上のニュースグループにあるだけでなく、電子メールで送られてくることもある。
 性的犯罪については、各分野の専門家と個人的に対話する以外にチャットの利用を許可しないことが望ましい。生徒にチャットの危険性を教え、教師が参加者を制限できるチャットソフトだけを使うべきである。
 また、危険な思想を持つ人物、情報、文化に接触する危険性もあり、注意が必要だ。
 いやがらせは、チャットやニュースグループの投稿などを通じて起こる恐れがある。電子メールを通じて、特に生徒間で起きる。
 主な解決策としては、大人が監督する、制御技術を利用する、本人の自制、の3点が考えられる。大人の監督では、教師が監督するのがもっとも効果的で、教室内での補助者の利用や、コンピュータの適切な配置、が必要。
 制御技術では、フィルタリングソフトとして、Cyber Patorol(http://www.cyberpatrol.com/)、Surf Watch(http://www.surfwatch.com/)、Net Nanny(http://www.netnanny.com/)などのソフトがある。
 子どものための規則としては、両親の許可なしにオンライン上で会った人物と会うことを決して許さない。両親や教師と、インターネットアクセスにどれだけの時間を費やすかについて、話し合う必要がある。
 また、生徒が訪れたサイトを履歴などを通じて調べる。生徒にきちんとした課題を与える、生徒が使うサーチエンジンを信頼できるものに限定しておく、生徒に引用してもらいたいサイトにブックマークをしておく、必要がある。
【WWWの活用】
 数多くの学校がテレビ会議をしている。Webにより地球規模での学習体験ができる。Web66には、世界各地の学校情報が掲載されている。学校の宿題をするのに役立つ資料がのったサイトもある(http://www.homeworkcentral.com/)。
 授業計画の中にWebサイトを入れ、専門家とのコミュニケーションが取れるようにする必要がある。まず、教師が十分に馴染んで、そのあとで子どもたちに使わせることで、わくわく楽しい授業ができる。
 インターネットを利用したレッスンプランの基本は、オンラインサイトを利用した調査、世界的なその分野の専門家との交流、他のクラスとの連携、情報の交換、情報の公開。
 インターネットを利用した学習は生徒に、共同で問題解決できる、チームで学習できる、学習グループで作業できる、高度な思考能力を訓練できる、情報を利用する能力が向上する、などの利点を持たらす。
 インターネットを通じて、伝統的なレッスンプランを探すことや他の教育者が載せたレッスンプランを適用し自分にあったものに改善することもできる(http://execpc.com/~dboals/amer.html)。

【アメリカの歴史を調べる】
 図書館の資料(本など)と、オンラインの歴史について記録したサイトを用いて、開拓時代の歴史について調べ、手紙を書かせる(http://www.schoollink.org/twin/)。
 開拓時代について調べ、グループで議論し共同で開拓時代の人の目線で自分たちに手紙を書かせる。もう一つ、反対に現代の視点で開拓時代の人に手紙を書かせる。
 日本であれば、生徒がアイヌの方々にアイヌの人の視点に立って手紙を書くこともできる。作文能力の向上になる。

【Web Quest】
 指導計画を立てる際に利用できるもので、Web Questは、生徒が扱う情報の一部あるいは全てがインターネット上のリソースからであるような調査主体の活動のことをいう。短期的なものと長期的なものがあり、その取り組み例もWebに載っている。
 Web Questは、導入、タスク、方法、情報源(リソース)、評価、結果の6部で構成される。今までやってきた授業計画と同じだと思う。Web Questのすばらしい点は、必要な資料をWebから確保できること。教師が事前に、子どもたちに評価の基準を教えておくこともできる。評価項目を作るのに時間がかかるが、そのテンプレートもWebに載っている。先生方の作品も出ている。(http://edweb.sdsu.edu/webquest/matrix..html
(教育家庭新聞99年10月2日号)