栄養士さんをたずねて

野田 節子さん(千葉県船橋市立三山中学校)

 

〇英語版の給食だよりを毎日発行
 

 日本語版と英語版の給食だより「三山ランチタイムス」を給食のある日は毎日発行している国際感覚豊かな栄養士野田節子先生。
 野田先生の勤務する千葉県船橋市立三山中学校を含む船橋市内の全中学校は3年前に全校生徒が入れるランチルームが増設され、献立のメニューも毎日AとB2種類が用意され、1ヶ月前に生徒が毎日の献立をA、B、お弁当の中から選択しマークシートに記入するという選択性の形をとっている新しいタイプの給食形態を導入している。
 

 「三山ランチタイムス」にはもちろん2種類の献立が紹介されているが、Aは日本語でBは英語でメニューの名が書かれている。配膳図にあわせて書いてあるので、英語を覚えたての1年生でも一目でわかるようになっている。そして、配膳図の下には「ラッキー博士の食卓談義」と称して、栄養素についてやその日の献立に使われている食品、千葉県の郷土料理から世界の料理に至るまで、毎日いろいろな食に関する情報を載せている。さらに野口先生自身が英語に訳したものをALTの外国人教師がネイティブ英語に訳して英語バージョンとして載せている。
 「まず料理名に注目することで給食に関心を持ってもらうことと、正しい配膳の方法を教えるために発行しています。日米の料理名を覚えるいい機会になっているでしょう」と野口先生。月末には日本語と英語の料理名をつきあわせる献立マッチングテストを実施しているが、応募者のほとんどが全問正解するんですよと嬉しそうに話してくれた。英語のテストができない子でも、メニューだけは興味をもって覚えていく。「食べ物は子どもたちの興味関心をひきやすく、給食はそれ自体が生きた教材だと思っています。普段の給食で肥やしをまいて、根をはらせてから花を咲かせてやるのが授業だと思っています。こちらが教材を常に出してあげて、子どもたちが自分で教科書を作り出していくんです」

〇「食文化の基本は配膳」 

 4校時が終わると、次々と生徒たちが廊下に並び始め、スープやおかずが盛られた食器をお盆に並べていく。野口先生は、最前列で子ども一人ひとりに声をかけながら配膳を整えていく。「家庭の食卓でお皿を何枚も並べて食べることは少なくなりました。食文化の基本はどう配膳するかだと思います。エサではなく食事という文化をしっかり身につけさせるためにも正しい配膳の仕方は習得しなければなりません」確かに他の学校と比べるとお皿の数が多い。スープ、ご飯、おかず、和え物、果物それぞれがひとつづつ盛られ、お盆には5つの椀や皿と牛乳がどの子も正しく並べられ、見栄えがよかった。
 食事の時間が始まると、好きな友達通しで固まって食事をし、楽しそうな会話が始まる。先生はその時間になると、特別に指導してはまわらないという。「食事をしているときに何を言っても、食べることに夢中になっていますから意味がありません。子どもたちの給食への興味は給食前の今日の献立は何かなあと思う時ですから、その時に見る給食だよりに食の情報を載せるようにしているんです」
 

 インタビューをしている間、アメリカやヨーロッパ、韓国など様々な国の食事情も話してくれた。先生は学校栄養士として勤務する前、様々な国の研修生を相手に講師として企業に勤めていた。そこで出会った学生たちと積極的にコミュニケーションし、その時の経験が今のランチタイムスにも生かされているという。
 諸外国と比べて日本の健康教育は遅れているという。「アメリカにはフィディカル・エデュケーションというカリキュラムがすでにあります。日本も健康教育という科目を作り、栄養士が何時間担当と養護教諭何時間担当というよにきちんとカリキュラムとして定め、そのカリキュラムにそって子どもたちが自分の健康について学べることが理想ですね」
 これから教室に出て行く学校栄養士にとって、栄養の知識だけでなく幅広い知識を持ち、豊かなコミュニケーション力が求められる。それを十分に満たしている魅力ある学校栄養士に出会った。

(教育家庭新聞98年10月17日号)