エネルギー講座 第5回

夏の電力ピーク、負荷平準化

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 電気の使われ方は、1日のうち昼と夜で、また季節によっても大きな格差がある。年間のうち最大となる夏季の平日昼間は、最低となる1月の明け方に比べて約3倍になるという。夏の同じ1日で比較しても、消費の少ない明け方に比べ、ピーク時の昼の2時から3時の時間帯は2倍以上になる。これは午前から午後にかけて気温が上昇するため冷房用の電力需要がうなぎのぼりになるためだ。夏に気温が1度上がると、全国の電力消費は470万キロワット(一般家庭の約150万世帯分の電力に相当)増加すると言われている。
 また、年間を通して電力需要を比較すると、昭和40年代頃までは1年を通してほぼ一定だったのが、近年になるにしたがって、夏・冬と春・秋では大きな格差が生じている。

負荷平準化への取り組み
 電気は貯蔵しておくことができないので、需要のピークに対応できる発電設備を整えておかなければならない。電力需要がピークに達する夏の昼間などは設備をフル活用できるが、未明時などあまり電気が使われない時は効率的に設備の活用ができていない。
 ある期間(年、日、時)に使った平均電力(負荷)を、設備がつくることのできる最大電力で割った値を「負荷率」という。この割合が高いということは最大電力と使われた平均電力の値に格差が少なく、設備を有効に利用できているということ。逆に割合が低くなるほど発電設備が効率的に利用できず、コストの上昇につながることになる。
 電力会社では、すべての時間帯、季節にわたってできるだけ無駄なく設備が利用できるように努力している。電力需要が大幅に減少する夜間の「谷」を盛り上げたり、ピークの「山」を削ったり、ずらしたりするなどの電気使用の平準化を図っている。例えば工場など大型施設にお願いし、操業日や時間を計画的にずらしたり、蓄熱槽を利用して昼間に使う冷暖房の熱を夜間の電力を使って貯えておく契約の拡大などに努めている。

省エネ対策
 また家庭に対しては、夜間の電力を利用する電気温水器の普及に努めているほか、時間帯に応じて割安な料金を設定する料金メニューもある。そのほか、午前中にしっかり冷やして午後のピーク時間帯の冷却運転をストップする飲料水の省エネ型自動販売機「エコ・ベンダー」や、夜間の電力で蓄熱する氷蓄熱式空調システム「エコアイス」などの開発、普及に努めている。
 なお、日本では1973年のオイルショック以降、省エネルギー対策が急速に進み、主要産業のエネルギーの消費量も1973年度に対して2割から5割減少している。一方、家電製品の消費電力についても「カラーテレビ」や「ルームエアコン」は1973年度の約半分、「冷蔵庫」は3分の1に減少している。しかし、近年はどれも横ばい状態であり、さらなる省エネルギーの推進が求められている。
(教育家庭新聞1999年7月24日号)