環境に取り組む企業N

環境対策は名より実
全容器を原料から見直し

株式会社ツムラ


 平成11年8月24日、東京都千代田区二番町のツムラ本社会議室では、マスコミ各社を招いての新製品発表会が開かれていた。従来以上に環境に配慮した商品《新バスクリン》ほかの発表とあって記者の関心も高く、集まったマスコミは60社近くに及んだ。
 「入浴剤といえば《バスクリン》と当社の商品名が代名詞として使われ、大変ありがたく思っております。本品は昭和5年発売以来の超ロングセラー商品であります。今回発売70年を記念し、最近の環境問題に対する消費者意識の高まりを考慮し、商品、包装容器すべてをリニューアルし、21世紀に向けての新しい《バスクリン》を発表いたします」。社長風間八左衛門氏自らによる商品説明が行われた。

 株式会社ツムラ。創業は1893年(明治26年)創業時の社名は津村順天堂、明治30年に発売した「浴剤中将湯」は日本最初の入浴剤として人気を集め、戦前派の人には忘れられない商品名の一つ。昭和5年《バスクリン》を発売。昭和51年にツムラの原点ともいえる漢方薬が医療用漢方製剤として薬価基準に収載されて、「漢方のツムラ」の名は不動のものとなっていった。現在は医療用漢方製剤、入浴剤などを中心に医薬品、医薬部外品、化粧品などを事業領域とする総合健康産業として躍進を続けている。
 ・当社の環境対策は形式より実行が先・の掛け声で、数年前から全製品に具体的環境対策が実施されたが、なかでも主力製品《バスクリン》については、容器の全面的見直しを決定。平成9年4月、営業、研究、生産各部門のメンバーにより構成されるプロジェクトがスタート。容器コンセプトを「人にやさしく、環境にやさしいパッケージ」と設定。まず消費者の声を聞く市場調査から開始された。
 調査の結果1材質は「紙」が56%で圧倒的支持。2形状は「楕円形」従来は円形で持ちづらいとの苦情が多かった。3構造は、胴部が紙、底・蓋部がアルミの従来容器は分別廃棄に苦労しているのでこれを全部「紙」とする、の基本方針が決められた。この段階で紙容器の開発のため凸版印刷(株)と共同開発契約を結んでいる。具体的な容器作りに入って苦労した点は・同じ様な形状、構造の紙容器は国内にはない・浴室で使用するため、紙容器で防水性を確保できるか・保湿性や保香性を維持する気密性が確保できるか・蓋を開けやすく、注ぎ易くする方法…などであった。「私は生産部門からプロジェクトの事務局として参加しましたが、素材開発から、容器仕様まで初めてのことばかりで苦労の連続でしたが、本当によく出来たと思います」。畠中孝雄生産本部生産企画部参事。

 2年半の努力の結果誕生した、環境により配慮した《新バスクリン》(本紙9月11日号で既報)。全社員がこの新商品に大きな期待をかけていたことがわかる。
 同社の環境対策はこの発表を契機に加速をつけた前進が約束されている。「次はISO14001の取得です」畠中参事の顔が輝いた。
(教育家庭新聞99年9月25日号)