「先生のための環境教育講座」連載第50回

                              佐島群己(横浜桐陰大学講師・前日本女子大教授)


〇イギリスのナショナル・カリキュラム
 
 イギリスのナショナル・カリキュラムは、1998年教育改革法(Education Reform Act)で制定された。それには、図のように中核(3教科)と基本教科(7教科)から成り立っている。
 日本の場合は、教科の性格、機能から次の4つにわけることができる。
1用具の教科(国語、算数、数学はどの学習にも広く用いられる)
2内容教科(社会科、理科は自然、社会の事実・事象を対象としている)
3表現教科(音楽・芸術、図画工作・美術など感情や情緒を表出する教育である)
4生活教科(生活科、家庭科、体育科は、家庭や健康の改善に関わるものを扱う)
 
〇クロス・カリキュラム
 
 1995年にHMSOから発行された最新のナショナル・カリキュラムに示されたクロス・カリキュラムについて述べることにする。
 クロス・カリキュラムは、クロス・テーマによって展開するカリキュラムである。クロス・テーマは、今日的な中心課題であるものが取り上げられている。
 クロス・カリキュラムとナショナルカリキュラムとの関係を示したのが図2である。クロス・カリキュラムは、ナショナル・カリキュラムと同等の重要性を持っている。ナショナル・カリキュラムの中核教科と基本教科には法的拘束性があり、すべての児童・生徒に習得させる内容がある。この内容は、文部省が委員会を設置して作成するものである。日本の学習指導要領と同じである。
 クロス・カリキュラムは、法的拘束性がなく、教師の独創性、自由裁量によって構成される性格のものである。そこで、次にクロス・カリキュラムにおけるテーマを5つあげている。
1経済と産業理解のたの教育(Education for Economic and Industrial Understanding)
2健康教育(Health Education)
3職業教育とガイダンス(Careers Education and Guidance)
4環境教育(Environmental Education)
5市民教育(Education for Citizenship)
 この1〜5は、日本における横断的総合的な学習の主題と共通する点がある。
 日本の総合的学習のテーマは、次の5つである。
 1国際理解教育2情報教育3環境教育4福祉教育5健康教育
 
〇イギリスにおける環境教育
 
 クロスカリキュラムのテーマを通して、社会の変化や日常的な社会構造など見えにくいものが見えてくるのである。
 そこで、イギリスにおける環境教育は、次の3つの目指すものを掲げている。
 1環境を保護し、改善するために必要
  な知識、価値、態度、スキルを得る
  ための機会を提供する
 2様々な見方−身体的、地理的、社会
  的、経済的、政治的、技術的、歴史
  的、美学的、論理的、精神的−から
  環境を調査し解釈するために生徒を
  励ます
 3、環境についての気づきと興味を起
  させ、環境問題の解決にむけて参加
  活動を励ます
 この目標を達成するためには、次の3つのことが統一的に把握されなければならない。
 ・環境についての教育(Education ABOUT the environment)
 ・環境のための教育(Education FOR the environment)
 ・環境の中で/を通しての教育(Education IN / Through the environment)
 このことについては、次回について具体的に述べることにする。
(参考)鷹野由希子「クロス・カリキュラムとしての環境教育−イギリスの環境教育」(人間社会研究科 紀要第3号1997p29〜41)