先生のための環境教育講座  

第52回 イギリスの環境教育における知識・スキル
                    
東京学芸大学名誉教授 佐島群巳
  

イギリスでは、クロス・テーマ「環境教育」を実践する場合、身につけたい知識・スキル(技能)について明確にその内容を示している。
 
〇環境教育で身につけたい知識
 

 環境教育において身につけたい知識として11項目が示されている。
1環境の中で起こっている自然のプロセス
2環境における人間活動の影響
3過去と現在の異なる環境
4グリーンハウス効果、酸性雨、空気汚染としての環境問題
5地域、国、国際での法は、環境の保護と管理をコントロールしている。どのような方針や法定が環境について作成されているか
6個人、グループ、コミュニティ、そして国民の環境相互依存関係
7人間の生活、暮らしは環境に依存している
8環境問題についてあげられている葛藤
9どのように環境は、過去の法定と活動から影響を受けているか
10計画、デザインそして美学的考慮の大切さ
11環境を保護し、管理するための効果的な活動の大切さ
 以上挙げる知識の大半は、・サイエンス(科学)・・地球・の学習において、理解させることになっている。
 

環境教育に求められるスキル
 
 表1は、環境教育に求められるスキルとナショナル・カリキュラムの教科教育で取り上げられているスキルとの関係を示したものである。ここでは、環境教育で求められるスキルの内容について概略を述べておきたい。
 表のKSはキーステージ(key−stage)である。KS1は5〜7歳(1〜2学年)、KS2は7〜11歳(3〜6学年)、KS3は11〜14歳(7〜9学年)、KS4は14〜16歳(10〜11学年)である。
 

1コミュニケーションスキル
 コミュニケーションスキルは、・伝える・ことに中心を据えている。何を伝えるかは、教科の内容と結び付いて基本スキルが示されている。国語では、表現する、伝える、言葉を選ぶなどのスキルが系統的、組織的に学習されるようになっている。この能力はどの教科の学習にも活かされている。環境教育では、人や自然との出会い、そこでとらえた感じたことを他人に伝え、情報を交換する場合、このコミュニケーションの能力が重要な働きをする。環境問題の解決におけるコミュニケーションは特に重要視している。
 

2数理的スキル
 環境教育の様態を生態学で調査する場合、科学的手法として、データを収集したり、分類したり、分析したりする能力が必要だ。科学における観察、測定、記録や数学におけるグラフを作ったり分析する能力が重要視されている。これら教科で育成された能力が、環境教育に活かされるわけである。
 

3学習スキル
 各教科の学習内容には、教科の特色ある環境の学習方法がある。例えば、地理においては「フールドワークのスキル」を通して、体育においては「アウト・ドア冒険活動」を通して環境の学習スキルが習得される。教科で学んだことが、クロス・カリキュラムで統合的に学習が組織化されていく。
 

4問題解決スキル
 問題解決スキルは、既有の知識・理解・能力を関連させ、新たな自分なりのアイデアを得たり、評価したりするスキルである。特に環境問題で取り上げられる「産業問題」「社会問題」「環境問題」の解決には深い知識が要求される。同時に公平な判断力も求められている。
 

5個人的、社会的スキル
 一人の人間として環境の中での責任と役割について学ぶようになっている。環境教育における個人的、社会的スキルは、問題解決スキルの延長にある。
 

6情報テクノロジースキル
 このスキルは、「情報テクノロジー」(IT)で育成される。ここで学んだスキルが環境教育において、環境についての情報を獲得し、処理し、提供するスキル、自分の考えを発表するスキル・シュミレーションを作成するスキルなどが活かされてくる。
 

以上挙げたスキルは、スキル相互の関わりの中で作用し合えるように十分配慮されなければならない。
 我が国における総合的学習としての環境教育においても、このような知識やスキルについて、組織的、計画的に活かされるような授業づくりが必要となってくることは言うまでもない。
(注)鷹野由希子「クロス・カリキュラム」としての環境教育−イギリスの環境教育を例に−日本女子大学 人間社会研究科紀要 第3号 1997 P・35〜37

(教育家庭新聞98年12月12日号)