私の食と健康第18回

試合前には梅干のおにぎりを
元テニスプレーヤー・神尾米さん

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 164センチ、50キロのすらりとした姿の神尾米さんは、元プロテニス選手として全豪オープン、全仏オープン、ウインブルドン、全米オープンなどの大会で活躍し、95年WTAランキングでは世界24位という輝かしい戦績を持つ。

 テニスを始めたのは10歳の時。スイミングクラブに通っていたが、母の通うテニスクラブのオーナーの勧めでテニスを始め、小学校5年でテニスに絞った。父はバスケットとゴルフ、2人の兄は野球にスイミングにと、スポーツ一家だった。
 食事は母親の手作りのものを、バランスよく、好き嫌いなく食べてきた。「母は『これは体にいいから食べなさい』というようなことは言わないんです。私はとにかく食べることが好きで、なんでも食べていました」。6年生から師事した伊良子妙子コーチからは、「太ってもいいから、とにかく食べなさい」と厳しく言われていた。「お陰で、嫌いなものでも食べることはできたし、小柄だった体も高校生で伸びました」。

 好物はしゃぶしゃぶと焼き肉とパスタ。だが遠征試合の前日には必ず、母にヒレ肉の豚カツをあげてもらった。「縁起をかつぐということもあったのでしょうが、母が揚げたものが大好きでしたから」。95年から1人暮らしを始めたが、母に電話で聞いたりしながら料理を作ったという。それまでの食生活のお陰で、海外遠征の時も食事には苦労しなかったそうだ。ただ気をつけたのは、なるべくなま物を食べないこと。また、お米を持参し、梅干しのおにぎりを持ち歩いた。「試合前にちょっと食べるものをというとき、ハンバーガーというわけにはいかないですから」
 ここで食生活の話題を離れ、選手生活の話に。「大会前2週間位になると、選手はイライラ、ピリピリします。私の場合も家のドアが開いていても気になって、家族に注意したり。でもわがままが度を超すと怒られましたが」。そうした時の精神面の管理の秘訣を聞くと、「とにかく自分の周りに気持ちのいい人が一緒にいること」という答え。それはコーチやトレーナーであり、母であった。不安な時も、コーチの声を聞くとホッとしたという。

 97年の引退時、一気に運動をやめたので、足の筋肉がみるみる落ちた。体脂肪率も30%以上に達したので、食事の量を減らし、脂っこいものをやめた。トレーナーの助言で歩く、泳ぐ、走るといった有酸素運動をゆっくりとすることで、切り抜けたという。現在はテニス指導やテレビ出演、トライアスロンに挑戦など、多忙な日々だが、「今は普通の女の子として友人と食事に行ったり、楽しくてしかたがない」という。お話を伺っていると、神尾さんのさわやかで気持ちの良い笑顔は、お母さまの手作り料理に象徴されるような、暖かな人間環境の賜物に違いないと感じた。
(教育家庭新聞2000年6月10日号)