わたしの食と健康I
 

   不規則生活の中、一日一丁の豆腐

             キネマ旬報常務取締役出版担当植草信和さん


 映画に関心がある人なら、誰でも知っているキネマ旬報社。常務取締役出版担当の植草信和さんは、大好きな映画を文字にして三十年。九月末には「踊るインターネット・踊る大捜査線」というタイムリーな、インターネットにアクセスする人たちの人間模様をムックにして出版したばかりだ。

 そこで、現在のライフスタイルだが、夜は遅いし、ロケ現場や映画祭など、旅暮らしが多い。アルコールにも縁がある。不養生のサンプルみたいな日常である。そんな毎日なのに、盲腸以外は病気を知らないという、極めつきの健康体だ。全く好き嫌いしない食生活。夜更かししたり、飲み過ぎした後でも、おいしく朝飯が食べられるし、水の悪いインドでさえ、腹具合を悪くしたことは一度もなかった、というから、滅法タフな胃腸の持ち主である。
 映画の現場を訪ねて、世界中のいろいろな国に行くが、食べ物で困った経験がない。その土地々々の酒と食べ物がおいしく食べられるということだ。消化力抜群、だから胸もたれもしない。フレンチからイタリアン、中華、インド料理と何でもござれの胃袋である。
 しかし、50になった最近では、脂っこいものは出来れば避けるようにし、皮下脂肪の解消に、土、日曜はジョギングと水泳を欠かさない注意もする。ところが、アルコール好きが難点。毎日、ビール350ml缶1本、お銚子3〜4本という愛飲家。美味しいから飲み過ぎる。毎日飲むから休肝日がない。そこで、飲むときは必ず食べることを実行している。
 好きな食べ物は豆腐。夏は冷や奴に、冬は湯豆腐と、一日必ず一丁は食べる。ドラマチックな仕事に似合わないナチュラルな好物だが、栄養効果満点。大豆たんぱくのパワーがスタミナと健康をガードしているわけだ。

 千葉県市川市の農家育ち。団塊の世代でも、食糧不足を知らなかった。バラエティのない食生活だったが、きれいな空気と畑の作物がいっぱい。遊び疲れた後で噛った、もぎ立てのまくわ瓜や西瓜のフレッシュな味わい。いまは消えてしまった素朴な甘味が懐かしいこの頃。健康は自分でコントロール出来る唯一のファクター、だからなおさら大事にしてゆきたいと痛切に感じる。
(教育家庭新聞99年10月16日号)