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【沖縄離島】修学旅行研修会
生きいきとした自然を学ぶ

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沖縄離島 南北約400q、東西約1000qの海域に160以上の島々からなる沖縄県。近年、沖縄本島とは違った顔を持つ離島への修学旅行が注目されている。首都圏の高等学校教員を対象に本島から近い「久米島」、関西圏の高等学校教員を対象に透明度の高い海に囲まれた「宮古島」と亜熱帯の森が広がる「八重山」での「沖縄離島修学旅行研修会」を実施。
(主催/沖縄県・怏ォ縄観光コンベンションビューロー、企画・協力/教育家庭新聞社)

島全体で修旅をサポート
施設間の連携で食物アレルギー対応も万全

久米島 親戚のように現地でふれる 島の家族で半日体験するホームビジット

 沖縄本島から西へ約100q(飛行機で約40分)に位置する久米島は、本島と組み合わせた修学旅行の地としても設定が可能だ。近年、食物アレルギーを持つ人が島で安心して楽しく活動できるように、「久米島コンシェルジュ」が事前に各施設との連携を図る独自の体制を整えた。3つのホテルでは、シェフが対応食を用意し、病院との連携で24時間の対応など、島全体で子どもたちの安心をサポートする。

沖縄教育旅行
海が穏やかな「ハテの浜」は
マリンスポーツができる
沖縄教育旅行
上江洲家で説明を聞く

<1日目>
 羽田空港から那覇空港で乗り継ぎ約4時間、まずは【そば専門店「やん小〜」】で昼食。夜は民家だが、昼はそば屋を営んでいるため家庭そのもの。久米島の一般家庭を早速体感。

  昼食後、樹齢約250年余りの「琉球松」が見られる【久米の五枝の松】と、国指定重要文化財建造物の【上江洲家】を視察。珊瑚石灰岩を使った石塀に囲まれた「上江洲家」では、上江洲さんが一家の歴史や建物の説明をしてくれる。

  その後、下り坂のように見えて実は上り坂の【おばけ坂】を車ごと体験し、島の北側にある【熱帯魚の家】へ。家と言ってもそこは海に面した岩場。カラフルな熱帯魚が泳ぐ姿に歓声があがる。

  続いて訪れたのは、絶壁にある【比屋定展望台】と、沖縄で最も高い位置にある城跡の【宇江城城跡】。近隣の島々や海が見渡せる場所。

  1日目最後は【ホームビジット】を行っているお宅を訪問。これは、お昼頃から夜頃までを島の家庭で親戚のように過ごす体験。この日は関東の私立高生が体験中で、「さとうきびが食べたい」という思いに応えてさとうきび刈りを行い、月桃の葉で包んだ「むーちー(餅)」作りを行った。生徒からは「今日が現地に一番触れられているよね」と笑みがこぼれる。

沖縄教育旅行
あじまー館で三線を体験

<2日目>
【あじまー館 島の学校@久米島】では、館内と島全体をフィールドに、自然・文化・工芸・産業の体験プログラムを実施できる。この日は三線体験に挑戦。三線の歴史と仕組みを学び、「45分くらいでできる生徒さんもいますよ」と檄を受けながら約2時間、1曲弾けるようになり、安堵の表情。

  その後、島の自然・歴史・民族・文化を紹介する【久米島自然文化センター】と、【久米島ホタル館】を訪問。ホタル館館内には、川に住む生き物たちが育てられ、それらの生態や「外来種」が及ぼす生態系への影響について説明を受ける。島全体が活動フィールドで、修学旅行生は森や川での探検、ホタルを見に行くこともある。1日目に訪れた「五枝の松」付近では、佐藤文保館長と島民が協力して水質浄化に取組み、「クメジマボタル」が多く見られている。

  続いて、島の伝統産業「久米島紬」を紹介する【久米島紬の里 ユイマール館】へ。修学旅行生の体験は、絞り染め体験と機織体験(コースター作り)が可能で、資料見学と合わせて約2時間を要する。

<3日目>
 最終日は船で約20分、珊瑚からなる真っ白な砂が7q程続く【ハテの浜】へ。主にマリンスポーツが行われているが、海に入れない生徒は、グラスボート体験もある。「外洋が荒れていても穏やかで欠航率が低いのが特長。ここ数年程修学旅行で体験が中止になったことはないです」と潟Aクアチームイーフスポーツクラブの久米浩二社長が話す。

  【久米島ウミガメ館】は、世界8種のウミガメの生態を紹介し、大水槽ではアオウミガメがゆったりと泳ぐ。「熱帯魚の家」など海辺にゴミが目立ったが、これは観光客が捨てたものではなく、大陸からの漂着ゴミ。ウミガメが誤飲して死亡することもあり、島民が清掃活動をしている。美しい海を守るための努力を、ぜひ学んで欲しい。

  ウミガメ館に隣接した【バーデハウス久米島】は、海洋深層水を使った温浴施設。バーデプールでは水圧でのマッサージやストレッチなどができる。荒天時など外での活動ができなかった際、マリンスポーツ等の代替としても活用できる。

  島内には県の海洋深層水研究所がある。水温が約10℃と一定で、栄養分が高く菌が少ない海洋深層水を用いて、ふぐの養殖などの研究が行われている。今後、教育旅行へ向けたプログラムが整えば、これら研究を学校団体が見学することもできるだろう。

地下ダムで学ぶ水の恩恵
高い透明度の海が印象深い美しい島

宮古島 島の農業や郷土料理を体験 地元農家が家族のように受入れ

 関西空港から約3時間。宮古島は、沖縄では隆起珊瑚礁で出来た最大の島。大きな山が無く平坦な島で透水性の高い琉球石灰岩からなるため、雨水がすぐに吸い込まれるが、浄化された水が地下から海に流れるため、海の透明度は高い。

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下地島パイロット訓練飛行場の誘導灯

  ダイビング、シュノーケリング、シーカヤック、マングローブ・礁湖(イノー)観察などの自然体験、キビ刈り、島とうふ作り、機織り、絞り染め、三線教室などの文化体験ができるほか、地元高校生との学校交流、初日や最終日にプロアーティストによるライブも企画できるなど、多様な受け入れ体制が整っている。

<1日目>
 宮古空港到着後、宮古島と全長1425mの池間大橋でつながっている最北端の島【池間島】を目指す。
ここでは、グラスボートに乗り海底珊瑚礁を観察。長嶺武夫船長が、美しい珊瑚礁を見られる珊瑚礁の群生地に連れて行ってくれた。

  そのほか、マングローブの観察を身近で安全にできるように整備された【島尻マングローブ遊歩道】を見学。島尻マングローブ林は約1qの入り江に発達し、数種類のマングローブが観察できるが、河川のない地域での群生は貴重だという。

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工芸村でシーサー作りを体験

<2日目>
 午前中は植物園内に平成21年にできた【宮古島市体験工芸村】、蝶々園と修学旅行生の昼食施設(230席)がある【みやこパラダイス】へ。

  工芸村では、シーサー作りなどの陶芸細工、藍染、織物などが30分から1時間程度で体験でき、島の文化・歴史を幅広く学べる。蝶々園は約1600uあり、金色のさなぎで有名な日本最大級の「オオゴマダラ」がいつでも見られるように研究されている。

  その後、島の最東南、「日本都市公園百選・日本百景」でもある【東平安名崎(ひがしへんなざき)】、世界48か国から集めた貴重な貝を展示、貝細工体験もできる【宮古島海宝館】で豊かな海を体感した。

  豊かな海に囲まれた島だが、大きな川がなく古くから水の少ない島として悩みも抱えていた。そこで、世界で初めて大規模地下ダムを建設し、農業用水を使用している。【地下ダム資料館】では、コンピューターグラフィックスを使用した、立体映像システムで最新の建設技術が見られる。ダムにより変化した宮古の農業と今後の可能性についてもパネルでわかりやすく紹介され、地下ダムの模型では、スプリンクラー散水の様子が光の動きで表現されている。

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地下ダム資料館の導水経路表示の模型

  続いて、【ぐすくべグリーンツーリズムさるかの会】を訪問。宮古島では、民泊、農業や郷土料理体験、農村・海岸散策、星空観測などを、地元の農家と一緒に体験できる。「行くまでは絶対おもしろくないと思っていた。でも実際行ったら大阪に帰りたくない、ずっと宮古にいたいと思った」と気持ちを綴った生徒の体験記からは感動の様子が伝わる。

<3日目>
 最終日午前中は、平良港から船で約15分の【伊良部島・下地島】へ渡った。2つの島は僅かな幅の海峡により分かれており、数か所の橋で結ばれている。この日は見られなかったが、「下地島パイロット訓練飛行場」ではパイロットの顔が見えるほど間近で飛行機の発着が見られ人気がある。

  最後は【うえのドイツ文化村】を視察。1873年、台風に遭い座礁難破したドイツの商船から島民が乗組員を救助した。その報告を受けた皇帝ウィルヘルム一世は、軍艦を宮古島に派遣して「博愛記念碑」を建立。それがこの施設ができた由来だ。

  中世のマルクスブルグ城を再現した博愛記念館には資料や美術品が展示され、キンダーハウスには、グリム童話の資料やオモチャなどを展示。本物のベルリンの壁の展示は注目を集めていた。

  その他に、製法特許により「にがり」を取り除かずにまろやかに仕上げられている「雪塩」を作る【雪塩製塩所】【風力発電・太陽光発電施設】【バイオエタノール製造工場】の見学など、自然環境に配慮した「エコアイランド宮古島」は、環境学習の地としても適している。

野生生物・植物と共存
亜熱帯の自然を島々の分科を学ぶ

八重山 戦争マラリアの被害を紹介 八重山平和祈念館で平和・人権教育

 石垣島・竹富島・喜弥真島・小浜島・由布島・西表島・黒島・新城島・波照間島・鳩間島・与那国島などの島々からなる八重山諸島のなかで、今回は石垣島・西表島・由布島を視察した。

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サトウキビを刈りジュースを作る

 <1日目>
 石垣空港到着後、【石垣島鍾乳洞】を訪問。ここは、成長が早い鍾乳洞として知られており、450mの見学コースを30分で回ることができる。

  続いて、築80年から100年にもなる八重山の旧き家並みを移築して再現したテーマパーク【石垣やいま村】へ向かった。貝のお守りや黒糖サーターアンダギー作りを体験できるが、視察では沖縄のカスタネットと言われる三板(さんば)を体験。平田カヨさんに習いながら、三線の演奏に合わせて打ち鳴らした。

  その後、美しい海が広がる【川平湾】で、グラスボート遊覧と黒蝶真珠の手作り体験に挑戦。グラスボートでは、船底に珊瑚礁や色鮮やかな熱帯魚を見ることができる。

  琉球真珠潟Xタッフの指導で行う黒蝶真珠の手作り体験は、真珠の元になる核を母貝に埋め込む。

  今回は貝の代わりにこんにゃくを使った教材キットで疑似体験。この教材セットのみの体験と本体験の2コースがあり、本体験は2年後にできあがった真珠が届く。

  そして、【川平観光農園】を訪れ池村多喜美代表の案内でサトウキビ刈りを体験。根元から勢い良く刈り取ったサトウキビを水できれいに洗って、搾り機を回すとサトウキビジュースが完成する。できたてのジュースに思わず「おいしい」との声があがった。ここではサトウキビを使った黒糖作りも行われている。

  夜には【石垣島天文台】で、天体観望会(要予約、昼は自由に見学可)に参加。口径105aの光学赤外線望遠鏡で、月のクレーターや火星を観測。

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八重山平和祈念館

  <2日目>
 石垣港からフェリーで約40分、八重山諸島最大の島・西表島の大原港へ渡り、【西表野生生物保護センター】を見学。同センターでは、イリオモテヤマネコの保護増殖に努めており、野生生物の生態やイリオモテヤマネコの特徴などがパネルで見られる。

  その後、島から約400mの【由布島】へ向かう。遠浅の海を歩いて渡ることもできるが、多くは「水牛車」を利用する。のんびり水牛車に揺られて渡った先には亜熱帯の植物が生い茂る。昭和44年の台風で壊滅的な打撃を受けたが、西表正治夫婦が島に残り、ヤシや花を植え続けることで楽園を造り上げた。

  水牛車で西表島に戻り、遊覧船で【ジャングルクルーズ】。マングローブの林を川岸に見ながら、浦内川を上流まで遡った。上流8qの地点にある船着場で下船し、約2q先のカンピレーの滝まで歩く。遊歩道の周りはシダの群生に囲まれ、大自然を肌で感じ取れる。

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沖縄の楽器三板(さんば)を教わる

  <3日目>
最終日は、石垣島の【八重山平和祈念館】を最初に視察。戦時中にマラリアの流行地域への避難を命ぜられたことから、八重山では3647名もの人がマラリアで死亡した。同館では、戦争マラリアの被害や、戦後のマラリア撲滅に関する資料が常設展示されているほか、平和や人権に関するビデオを上映。館内では、平和講話を行うこともできる。

  石垣島中央にある【バンナ森林公園】の展望台から島を一望し、海の向こうの竹富島や西表島を見た後は、手織りの文化を今に伝える染織元【みね屋工房】を訪問。

  草木染め体験(約50分)や花織みんさーのハタ織体験(約80分)コースなどが用意されている。草木染めは福木、紅露、藍の3つの染料を組み合わせてハンカチを染め上げ、花織みんさーは、織りばたを動かして、ストラップやペンケースを完成させる。

  その他の見どころは、石垣島の遺跡などから出土した多くの資料が収蔵されている【八重山博物館】、4月から開始された市民ガイドと石垣島を徒歩でめぐる【まちなか散歩ツアー】、【石垣島ショッピングプラザ】で申込みを受け付けている「マングローブ植樹」など、島民と自然との共生、文化を島全体で学ぶことができる。

 

 

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※学校名、肩書きは当時のものです。

【2010年4月17日号】

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