崩壊する「学級王国!?」

教師の孤立が課題


 「学級崩壊」は小学校の教育現場で起きるもので、高学年と低学年の現象にはそれぞれ背景に違いがある。今後の方策は、親の豊かな感性や視点を取り入れて共に学校教育を作り上げること…教育評論家・尾木直樹さんが代表の臨床教育研究所「虹」は2月10日、学童指導員や保育園の保母など644人のアンケート調査と、全国の小学校現場の聞き取り調査の分析を合わせた結果を発表した。


 新たな教育課題として「学級崩壊」がクローズアップされているが、尾木氏はまず「閉鎖的な全教科担任制の『学級王国』の崩壊現象であり、小学校に特有の問題」だと定義。各地の教育現場(約200か所)からの聞き取り調査をもとにその実態を明らかにした。
 その現象が初めてキャッチされたのは1994年、大阪の小学校高学年で、私立中受験が要因。96年には東京の中・低学年でも「パニックボーイ」としてうわさになり、97年には小学1年生の現象として全国一斉同時多発したという。

 ポイントは1ベテラン教師の学級にも起こる2学級規模が主な要因ではない3低学年はパニック的、高学年は中学受験を引き金とした担任いじめで、それぞれ現象に相違がある4高学年の「荒れ」や「学級崩壊」は中学校には引き継がれない5「生活科」では崩壊しにくい6「キレる子現象」の定義とは異質である、など。
 尾木氏は特に小学校の全教科担任制による、一人の教師の責任の重さ、それによる孤立化などを重視。「学級崩壊」に直面した教師には、まるで孤立した子育てによる母親のノイローゼに近い苦悩がみられると指摘した。このため担任教師が一人ですべてを抱え込まないシステムづくりを早急に実施すべきだと提案。具体的には「教科担任制の拡大」、「ティームティーチング(T・T)の拡大」、「1時間を20分、20分にくぎるなど小1向けのカリキュラム編成」、「小1の1学期はゆとりの学習内容で生活づくり重点に」など。また父母・子どもの学校・学級参画による「学校民主主義の確立」も欠かせないとした。

 さらに教師自身の「教師論の見直し」や「よりリアルな人間認識にたった子ども観の確立」、「基本的生活習慣や親子のスキンシップ」や「子育ての社会的支援」など幼児教育の見直しを、問題解決の課題として掲げた。また同席した小学校教師・今泉博史さんは高学年を担任した時はじめて「学級崩壊」を体験、「学びたい、知りたいという子どもの本来の意欲を捉えた、豊かな学びを教師がつくる」ことで学級を立て直したと発言。教師の教材研究のためのゆとり、学習内容の大胆な軽減を求めた。
 アンケート調査では、「学級崩壊」の現象を裏づけると同時に、「基本的な生活習慣・しつけの欠落」や「愛情・コミュニケーションの不足」など、親の家庭教育の課題が浮彫りになった。
 学童指導員200人を対象の調査で、「3年から5年間の子どもの変化」として、90%以上があげたのは1親の前では「良い子」に変身2「ジコチュー(自己中心)児」の増加3言動が粗暴4あいさつ、片づけなどの基本ができない5夜型生活の増加など。これらの変化の原因として、「母親の愛情不足(スキンシップ、だっこ)」、「親の余裕のなさ」、「親の未熟さ」など、親自身の問題点が指摘。そのほか「テレビ、おけいこごと」なども上げられた。
 保母456人の調査でも、学童指導員のものとほぼ同様の傾向がみられ、「学級崩壊は当然」が54・4%に上っている。

(教育家庭新聞99年2月27日号)