認知度高く9割に

読書週間、「心の教育」に効果

 授業開始前の10分〜15分間、毎朝、全校(学年、学級)一斉に自分の読みたい本を読む「朝の読書」が静かに広がっている。平成10年度末までに全国の実践校は、1235校が確認されている(朝の読書推進協議会調べ)。
 本紙が3月末、区市教育委員会を対象に「朝の読書」に関する認知度調査を実施したところ、回答のあった教委の67%が「知っている」、「聞いたことがある」が20%で、認知度は9割近くに上っていることが明らかになった。回答の多くが「読書習慣の形成」、「情操教育や『心の教育』」に役立つと認識している。
 また54%にのぼる教育委員会が、地域内の学校での実践を把握している。


 「朝の読書」に関する各地区教育委員会の認知度は高く、「まったく知らない」という回答は9・5%にとどまっている。また55・6%の教委の小学校で、すでに実践されていることが明らか。中学校は46%という数字だった。

 一方、教育委員会としての対応は、「要請があれば支援したい」(37%)、「教育委員会が対応するものではない」(21%)などに分かれた。各教委ごとの対応の違いが浮きぼりになった。
 本紙は今年3月、各地域教育委員会の「朝の読書」についての認知度、考え方などを把握する目的で、文書によるアンケート調査を行った。対象は区・市教育委員会とし、ランダムに抽出した300教委に調査票を送付し、年度末の多忙期にもかかわらず63教委から回答があった。「朝の読書」に関する、教育現場を対象とした認知度調査は、今回が初めて。
 「朝の読書」について、「聞いたことがある」は22%、「知っている」は68%で、合わせて9割の教委が「朝の読書」を認知している。複数回答でその実践の成果をたずねたところ、86%が「読書習慣の形成」につながると回答。次いで、「情操教育や『心の教育』」(79%)、「国語力の向上」(43%)、「生活指導や進路指導」(19%)、「先生の精神的なゆとり・安定」(16%)などだった。
 その他の意見には「集中力がつき、落ちつく」、「学校の校風づくり」「生きる力の育成の基盤」などの記述もあった。
 地域で「朝の読書」が実践されているか、「わからない」は27%で、「これから調査したい」は13%。残る6割ではすでに実践を確認している。
 教委としての今後の対応について質問した結果は、「積極的に推進したい」が9・5%、「学校から要請があれば検討し、支援したい」は40%、「検討してみたい」が9・5%で、何らかの支援・推進が考えられるのは6割の教委。一方、「分からない」(29%)と回答したうち、「教育委員会が対応する内容のものではないから」とした理由をあげたのが19%で2割近いことが注目される。

 これは後半の自由記述にも触れられた意見だが、「朝の読書」は、学校・教師が主体的に実践するもので、上からの指導で行うべきものではない、という考え方によるものと思われる。
 「対応」について各地域の考え方は特色がある。松江市(島根)は、同市教委が主催して「朝の読書」全国大会を昨年開催している。このため「この意義をふまえさらに実践校が増えるようにPRしたい」とする。また「折りにふれ呼びかけて、各校の自主的な取り組みを期待している」など積極派がある。反面で「各学校の主体的実践の方が効果的」などの慎重論もある。

 「朝の読書」についての自由な意見・感想を求めたところ、次のような回答があった(抜粋)。
 東京都=学校全体の共通理解をはかりながら、教育課程に位置づけることが大切だと考える。また保護者の理解も欠かせない/ゆっくりと本を読む時間が少ない子どもたちには、大切な時間だと思う/小学校では教師やPTAによる「読み聞かせ」を多くの学校で行っている

 神奈川=「生きる力」の育成を目指す、特に「心の教育」には、この取り組みは非常に重要と考える/活字離れが問題とされる昨今、本に親しむ習慣を養う点からも、貴重な時間だと考える/好きな本をそれぞれのレベルで読み、充実感を覚えられることは、子どもたちの心の安定にどんなに役立つか知れない
 埼玉=(学校に)トップダウンで取り組ませても、本来のねらいは達成されにくい。環境を整え、意識を高めていきたい/読書は大切であり、学校でその切っかけをつくるのは良いことだ/読書離れの現状から、この取り組みは重要。だが各学校の裁量で柔軟な対応が良い/子どもの読書が少ないので、心を育てる意味で広げたい。県は本を含めた「5つの触れ合い」を推進している/各学校の教育課程に位置づけられた時点で、支援方法を考えたい
 栃木=毎朝の実践校は少ないが各校とも何らかの読書指導の時間を確保し、実践の工夫をしている
 岩手=学校教育の一つの側面として、大変興味深い/ねらいを明確にして、継続的に取り組むことが大切/各学校に特色ある朝の時間の使い方があり、その一つと考えている
 静岡=大きな期待から読書を強制するのでなく、さりげなく本に触れてみるところから、自分に合った本が見つかると思う/読書の習慣化の一助となる/授業の前に「静」を取り戻し、心を落ち着かせることができる
 愛知=教師の読み聞かせ、児童・生徒の自由読書などそれぞれ意義がある。各学校の朝の短学活は、独自に工夫し実践されている/毎朝の10〜15分程度、各学校の特色を生かし、自主学習、スピーチ、読書などを行っている。
 兵庫=毎朝の学校生活のスタート時に静かに読書することは、多くの成果が期待できる/心の充実をはかる営みとしても、効果的だと思える
 鳥取=「心の教育」推進のためにも重要だ
 島根=読書離れが叫ばれる中、人間形成のために読書は必要不可欠である
 熊本=実践を目の当たりにして、「静」の時間の素晴らしさとその徹底の様子に心を打たれた。

(教育家庭新聞99年4月24日号)