「情報教育担当珍道記 その壱」

PCは正義(?)の剣

by Long Distance

<筆者プロフィール>
某県の小学校教諭・情報教育担当(ご本人の希望で匿名です)
コラムでは「情報教育」の初期・中期・現在までの経緯や現状、そして未来への提案も含めて語っていただきました。


 今から10年前、新卒2校目の学校は、県内でも先進的なコンピュータ利用教育の実践校でした。学習理論や授業方略を基礎とし学習の個別化による完全習得学習をめざしたCAIの実践に触れ、その学習効果の高さと可能性に惹かれ、この道に足を踏み入れました。CAIの実践をしたり教材作成をしたり無我夢中で過ごした3年間の後、次の学校へ異動しました。

 次に赴任した学校にはコンピュータが2台しかなく、とてもCAIができる環境ではありませんでした。「コンピュータで授業ができればわかる授業が誰でもできるのに」「これからの学校にはコンピュータ教室がなくちゃ」と事あるごとに話し、ワープロ専用機を使っている同僚に対して「やっぱりコンピュータの方が便利だよ」「次はコンピュータを買おうよ」と声をかけていました。最初は、興味を持って聞いていてくれた同僚も、いつの頃からかコンピュータの話題にあまり反応を示してくれなくなりました。当時は「忙しいんだろう」とか「コンピュータには興味がないのかな」と自分勝手に理解していました。

 しかし、今となって考えてみると「コンピュータ利用教育をみんなが進んで行おうとするのは当たり前」という『慢心の剣』を「正義の剣」として振りかざしていただけなのだと、分かってきました。おそらく同僚は、私が話し始めると「また始まったよ。コンピュータを使えるからそんなこと言えるんだろう。そんなこと言ったって何も変わらないって。」と思っていたのではないでしょうか。今は、当時の同僚に心からお詫びしたいという後悔の念ばかりが残っています。

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