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私の体験談「子どもの心を考える」
摂食障害体験者手記 前編
〜摂食障害とわたし〜
寄稿−N・Sさん
 私が摂食障害を発症したのは、高校1年生の時でした。きっかけはダイエットでした。私は、父、母、妹の4人家族の長女、家庭の中の環境は、はっきりいって良いとはいえず、知らず知らずのうちにしっかりした「良い子」じゃなくてはいけないという気持ちが強くなっていて、親に甘えたり、気持ちを伝えたりするということがうまく出来ないまま育ちました。なので、中学生の時は、人と深く仲良くなったり、遊んだりして楽しむこともあまりなかったのです。自分を出すことが苦手なことから、自分に自信をなくしていました。自分の感情を出して人に受け入れられなかったらどうしよう、という不安な気持ちが常に大きかったのだと思います。

 さらに、高校受験で第一志望の学校に落ちてしまうという挫折を経験しました。それは初めて「優等生、良い子ではない自分」という現実を突きつけられたような気がして、自分には価値がないとまで思うようになってしまいました。不本意な高校への進学、ますます自信をなくし、相変わらず友達との関係も希薄で、なかなか楽しみを見つけることも出来ずにいました。

 そんな時に、ふと、ダイエットをしてキレイになったら、自信もつくし楽しいだろうなと思いました。当時、学校の友達ともダイエットの話題は多く、「お菓子食べるのを止めた」とか「朝ごはんは食べない」という話は聞いていたし、「少し頑張れば出来そう」と、思ったのです。その時の私は、158・の身長で体重は451114程、ダイエットの必要はなかったのですが、タレントやモデルと比べたり、制服のスカートから見える足がもっと細かったらいいなぁ、と体型について強い関心を持つようになり、絶対に痩せなくては、という気持ちになったのでした。

 そこで、まず、食事制限を始めました。朝食を抜いて、昼は野菜サラダ、夜は出来るだけ少なく食べるようにしました。夕食は家族と一緒だったので、食べているように見せるための努力をしました(具体的には、食べているふりをしたり、紙に包んで捨ててしまったり)。次第に、体重は減っていきました。毎日、体重を量るようになり、減っていく体重が楽しみになりました。やれば出来るというなんともいえない達成感が湧き上がりました。また、痩せてくると、友達や周りの反応も変わってきました。「どうやってダイエットしてるの?」「いいなぁ…」。そんな周りの言葉は、自分が認められた、と実感できた瞬間でした。関心が自分に向けられることに喜びを感じ、体も軽いし、「やせると良いことがたくさんあるんだなぁ」と、嬉しくなりました。

 その一方で、もう絶対に体重が増えるのは嫌だな、と思うようになりました。体重を量って100gでも増えていると、イライラしたり不安になったり、あれを食べたからいけなかった、運動をしてカロリーを消費しよう、と体型や食事のことが、頭からはなれなくなっていきました。

 夏を過ぎた頃、体重は351114にまで落ちました。友達や周りから「調子が悪いの?」「大丈夫?」「太ったほうがいいよ」という言葉も聞き入れず、母親には痩せたことがわかってしまわないように厚着をしたり、会話をしなくなりました。そのせいか、体重についてあまり干渉されることもなく、さらにストイックなダイエットを続け、冬には、体重が301114を切るようになってしまいました。階段を上るのも辛くなり、激しい寒さを常に感じていました。学校の制服のスカートもベルトで止めなければ脱げてしまい、そこから見える足も棒のようでした。それでも、その時の私は痩せているとは思えなくなっていたのです。

 さすがにその頃には親も気がつき、食べさせようとしましたが、私は拒んで、遂には水分しか受け付けなくなってしまいました。それでも毎日、食べ物と体重のことしか考えられず、腹筋200回、カロリー摂取量は300キロ・まで、など行動や考え方も強迫的になっていきました。体は辛いのに、それでもダイエットを止められず、精神科への受診は親も私も抵抗があり、病院へ行くことはありませんでした。
(次号後編へつづく)

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【2005年9月10日号】

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