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私の体験談「子どもの心を考える」
摂食障害体験者手記 後編
〜摂食障害とわたし〜
寄稿−N・Sさん
前編の手記)
 学校も休んだら怠けることになって太るのではないかと思い、体が辛くても休まずに成績は維持していました。しかし、高校2年になる春休みでした。ある時、お菓子を一口食べてしまったことがきっかけで、過食に走ってしまったのです。それまで絶対に食べてはいけないと決めていたもの、パンやケーキやお菓子をコンビニやスーパーで大量に買い込み、一気にすべてを食べつくし、それでも足りないと思うと、家の冷蔵庫の中のものを食べつくすほどでした。体が限界だったのでしょう。しかし、精神的には、「食べるのが止められない」と、パニックに陥りました。

 それから過食は止まらなくなり、体重が増えていきました。精神的には食べてしまう自分を受け入れることができず、絶望的な気持ちになり、無気力になり、自殺願望が出てくるようになりました。痩せていなければ価値がない、誰も認めてくれないんだという気持ちは強くなるばかりでした。

 嘔吐することは、痩せていなければいけないという気持ちと、止まらない過食との間で、私は自ら覚えました。高カロリーのものをたくさん食べてしまった後、トイレで吐いてしまいました。吐けば太らない、と過食を続けていましたが、体調が悪くなり、精神状態も悪化していき、遂には、入院治療を受けなければならない状態にまでになりました。自分に自信が欲しくて、きれいになりたいと思ってはじめたダイエットが、摂食障害というこんなに辛い状態になってしまうとは考えもつかず、とても後悔しました。

 何とか高校は卒業して、退院をしたあとも精神科デイケアに通いながらの生活でした。進学も出来ず、それでも食べ物に対する恐怖感やこだわりがあり、そんな気持ちが少しでも変わればと思って参加したのが、私とタンポポの会、麻生先生との出会いでした。タンポポの会では、グループカウンセリングを行ったり、同じ摂食障害を抱える仲間達とのふれあいや様々な行事、さらには飲み会などもあったりして、会に出会ってからとにかく楽しいという気分になれたのです。

 私は、「楽しい」という素直に思えるような経験が今まで少なかったということをその時に実感しました。そして、悩んだり、辛いのは自分ひとりだけではないんだという気持ちが芽生えて、すごく自分を受け入れてもらえたと感じました。

 そういうことを経験していくことで、少しずつ自分への自信につながっていくということを知りました。それからは、食べ吐きにとらわれることも少なくなっていきました。ダイエットして痩せることでしか自分の価値がないと思っていたけれど、そのままの自分でいいんだということが自分の頭で理解できたからだと思います。

 現在は、将来にも目を向けられるようになって、福祉系の大学へ行くこともでき、来春卒業の予定です。

 摂食障害になって辛いこともありましたが、自分と向き合うことや人とのつながりの大切さを知り、乗り越えることの出来る病気だということがわかりました。

 これからもいろいろな経験をして自分を大きくしていきたいです。
(了)

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【2005年10月15日号】

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