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国際舞台で活躍できる日本人のための
英語とは?
文部科学省・外国語専門部会 検討開始
 文科省では平成20年度を目指し、「英語が使える日本人」の育成を目指し様々な施策がとられている。学習指導要領の見直しも各教科で順次実施されている。それを受け、外国語教育の一層の充実を目指し、小学校を含めた初等中等教育・義務教育での教育課程の改善方策に関して検討するため外国語専門部会を設置、平成16年4月13日、第一回専門部会を開催した。主査は中島嶺雄・国際教養大学学長。当日は、現場教員や研究者らなどがそれぞれの立場から積極的な論議がなされた。

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 中島嶺雄主査は「これまで、日本人の英語力をどのように高めていくか、鋭意取り組んできたが、国際舞台で発言できない研究者が多すぎる。このままでは我が国の国際的な存在感は薄れていくと感じている。これからは国際的なコミュニケーション能力が必須。英語は文句なしに国際的な共通語。E-Learningの浸透も含め、英語の『ツール』としての能力は、今後ますます重要になる。その一方で、アジアでは外国語も日本語も中途半端な『セミリンガル』が生まれ始めている。これらの面を超えて、ひとつの方向性を出していきたい」と述べた。

 アジアでも英語教育は盛んだ。シンガポールでは、8割が中国人であるにも関わらず、公用語は「英語」だ。その英語力の高さの一方、中国語を公用としたほうが深い思考ができるという意見もある。

 台湾でも英語教育熱は高い。あまりの高さに、政府は、国語力の低下を懸念し、幼稚園からの英語教育を禁止している。
 これらを踏まえ、小・中・高・大学が連携した外国語教育をどう進めていくかが検討される。

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○専門部会討議より(一部)

千葉県成田市立成田小学校校長
 門馬紘一

 千葉県成田市立成田小学校では、平成8年より3年間、文科省の指定を受け、全学年が週2回20分の英語活動を行ってきた。テーマは「地域に根ざした小学校英語」。平成12年度からは、「未来へつなぐ小学校英語」というテーマで3年間取り組んだ。週5回20分の英語活動を行い、うち週2−3回は、外国人講師とTTを組む。また、学校独自の教材開発にも取り組んだ。

 門馬校長は「子ども自身が、英語を話せるという自信を持ち、外国人に対して臆することなく接することができた」と述べる。

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滋賀県立米原高等学校
 山岡憲史
 
 滋賀県立米原高等学校では、SELHiの指定を受け、今年で3年目を迎える。普通科で1クラス「英語コース」を1設けた。山岡教諭は「田舎で、全く海外に接触する機会のない学校で、如何にモチベーションを上げるかが課題であった」と述べる。モチベーションアップのため、コンテストやキャンプを実施、生徒の意識は確実に高まり、他クラスの生徒にも良い影響を与えたという。また、「読み書き」に関しては「書く」活動を取り入れることで、内容的に高度なものを話すことができるようになったという。

 「課題は、中学校との連携が難しいこと。今年度は、この活動を地域に広げて生きたい」。

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渋谷幕張中・高等学校長
 田村哲夫(副主査)

 渋谷幕張高等学校では、平成14年度よりSELHiの指定項として活動を開始している。「帰国子女や英語検定準1級レベルの生徒もいるが、彼らは皆、大変な努力をしている。ひとつの言語を身に付けるのには、大変な努力が必要。結局本人のがんばりが結果を左右する。環境を整えさえすれば英語が上手くなる、というのは勘違いである」と述べた。

 また、懸念されている「セミリンガル」については「セミリンガルを生むのは、また別な問題。両方きちんとできない子をクローズアップしすぎてはいけない。幼くてもバイリンガルな子どもはたくさんいる」。

 同校では、マイクロソフトのアプリケーションを導入する際、英語版日本語版両方を入れいている。「アプリケーションの作りから、英米と日本との根本的な仕組みの違いを体験させることも必要である」と述べた。

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山口東京理科大学基礎工学部教授
 島 幸子
 国際的に活躍している理系の研究者は、皆、涙ぐましいほどの努力をしている。 
 これからは、発音やヒアリングなどの「スキル」と、「知識」を明確に分けて教えていくべき。「コミュニケーション能力」が重視されるがゆえ「スキル」が軽視されすぎてきた印象を受ける。日本語と英語音の音作りの違いを無視した流れであると感じる。「エービーシー」は、「英語」とはいえない。

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白梅学園短期大学長
 無藤 隆
 現状は、質の低い英語教育が横行している感がある。「日本風の発音を叩き込むだけ」という状況にならないよう留意しなければならない。復習する際、下手な発音を自分の耳に叩き込むような状況の改善も考慮したい。英語の発音は、週1回程度では記憶の継続は難しい。例えば英語の辞書を『発音付き』にすることはできないか。

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愛媛大学英語教育センター教授
 金森 強
 
50年後の日本がどう変わっていくか、を念頭に入れて考えていかなければならない。A大学は、外国人講師が多数おり、学生らは楽しく学んではいるが、英語力がどうついたのか、測ろうという意識が見られない点は問題だと感じている。また、最も欠けているのがコミュニケーションをとろうとする『態度』だと感じる。

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東京女子大学現代文化学部教授
 西原鈴子

 英語を用いて国際的に活躍できる人材とは、「切り替え」ができる人材。例えば米国は「全て言わなければ理解されない社会」であり、日本は「相手が知っている・分かるであろうと予想されることは言わない社会」。この違いは、子どもたちにとって問題を含んでいる。2つ目の言語を幼少時に触れるということがどのような意味を持つか、という面も考えていきたい。

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東京大学大学院総合文化研究科教授
 岡 秀夫
 日本人が国際的な舞台で発信できないのは、文化的な背景もある。スキルだけを追い続けても、「発信」はできない。言語的な文法だけではなく、文化の文法の違いにも着目すべき。バイリンガルを目指すというよりは、バイカルキュラルを目指さなければならない。


(2004.4.13取材)
【2004年4月19日掲載】