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教科「情報」研究会探訪
東京都高等学校情報教育研究会

 東京都高等学校情報教育研究会(以下、都高情研)が発足したのは平成13年8月。15年度からの普通教科「情報」の実施に先駆け、教科「情報」及び情報教育の円滑な実施のための研究活動を続けてきた。同研究会の活動状況や今後の展開、またP検の後援団体となった理由などについて、佐藤公作会長をはじめ、各部会長に聞いた。
右から佐藤会長、天良氏、小原氏、福原氏
   右から佐藤会長、天良氏、小原氏、福原氏、勝間田氏

出席者
 ○都高情研会長 佐藤公作・都立富士森高校校長
 ○情報活用部会部会長 小原格・都立町田高校教諭
 ○情報科学部会部会長 天良和男・都立駒場高校教諭
 ○情報社会部会部会長 勝間田清一・私立明星学園高校教諭
 ○前インフラ検討部副部長 福原利信・都立武蔵村山高等学校教諭

研究会の活動
3部会で新たな一歩
 −−都高情研の活動について
 佐藤 本会は高等学校において情報教育を円滑に推進することが大きな目的であり、教科「情報」の指導内容、教材研究、指導方法の研究をはじめ、各教科における情報活用、学校全体の情報化の推進などについても研究し、関係団体との連携も図っている。

 昨年、教科「情報」の3つのねらいに即して組織を変更し、「情報活用部会」、「情報科学部会」、「情報社会部会」を設置し新たな一歩を踏み出した。

 天良 「情報科学部会」は、情報の科学的な理解、情報技術について教材開発や指導法の研究を行っている。教科「情報」というと操作の学習ばかりしているのではないか、と思われる面があるが、それだけでなくコンピュータやネットワークの仕組みなどを科学的に理解するために、必要な教材開発などを中心にしている。今年度は焦点を絞って「情報のデジタル化」をテーマに、教材開発や指導方法の研究をしていきたい。

 会員は、必ず3つの部会のどれかに所属するが、他の部会にも参加したいという要望もあり、今年はできるだけそれぞれ異なる日に部会研究会を開催したいと思っている。

 小原 「情報活用部会」のメンバーは約50人。東京都では約7割の普通科高校が「情報A」を設置している。重点取り組みの1つ目は、小中学校から情報活用の実践力を身に付ける指導が行われている中で、小学校、中学校、大学との異校種との交流を積極的に進め情報交換をしたい、ということ。2つ目は、他府県との教科「情報」に関する研究会との交流を積極的に進めたい、ということ。これは、3学年での実施が5割を超える東京都の状況下、実践事例がまだ非常に少なく、また、情報担当教員の配置は多くは1校1名であり、しかも新設の必修教科なので、どう教え指導するかという悩みがあるからである。

 今後は、神奈川県高等学校教科研究会情報部会が行っている「共通テスト」の活動を参考に、中学校での学習の定着状態に関する共通アンケートなどもできたら面白いと考えている。また、8月末には関東地区の「合同研究大会」も開催する予定である。

 勝間田 「情報C」の設置校自体がまだ少なく、実践事例が不足している。そのため、「情報社会部会」の活動も他の部会に比べると進んでいない面もある。昨年はセキュリティセミナーなどを実施した。情報担当の教員がセキュリティ管理をしなければならない状況があり、事例から対策を学んだ。今年度は各種課題についての研究を推進していきたい。

課題と狙いの達成
新採教員の参加を
 −−教科「情報」が実施されて3年目を迎える
 佐藤 新しい教科だけに各学校における他教科の教員の理解が求められる中で、当研究会のような活動が非常に期待されている。最も大切なことは、教育課程にいかに位置づけるか(学年及び科目配置、授業形態、選択科目の開講など)。第2は情報担当の教員が自分たちの力をフルに出せる態勢の確立であり、それは指導組織、職務内容にも関係する。情報担当の教員は各学校で期待されていることが多く、パソコンのトラブルの復旧やネットワークの整備まで求められる。また、一校に一人しか配置されていない教科なので、校内で支えあっていくような協力体制を作ることが必須である。実習に重きを置く教科でありながら予算が少なく、必要な機器の整備も遅れている。

 −−都高情研が当初狙いとしてきたことは、達成しつつあるのか。
 佐藤 本会は都立高校にある43の教育研究団体の中でも最も新しく、様々な課題がたくさんある。特に東京都の場合、3年生に「情報」を設置している学校が多く、今年度ですべての高校で「情報」を履修することになるので、まさにこれからという感じである。

 小原 13年の設立総会時には「情報」が始まっていないため実践事例もなく、スムーズに授業をスタートさせるためサーバー活用方法の研究などからはじめた。そして、15年度の1年目は無我夢中で授業をし、16年度の2年目で授業内容を修正して、3年目の今年になってようやく落ち着いて指導内容・方法を見直せるようになってきたのが現状だ。都高情研ならではの活動は、本当にこれから作り上げていく過程にさしかかっている。

 天良 我々4人、数学・理科の免許をもっていて、現職教員対象の免許講習会で「情報」の免許を取得した。「情報」で新規採用された教員の都高情研への参加は極めて少ない。そういう人にもっと入会してもらいたい。指導内容や方法について悩みがあるのではないかと思う。都高情研にきて、どうしたらいいのか共に研修し、課題を解決していきたい。

P検の後援に
共に情報教育を推進
 −−パソコン検定協会の後援団体となられた理由は
 佐藤 当会は企業や関係機関と公平・中立な形で連携して情報教育を推進していこうという狙いがあり、昨年度は財団法人コンピュータ教育開発センターと連携して産業協力「情報」授業を実施した。高校では、漢字や英語、簿記、事務処理、電卓、各種技能など様々な検定が学校で導入・利用されている。何よりも教科「情報」に対してしっかりした支援の取り組みを行い、しかも社団法人日本教育工学振興会、日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会からの支援・後援がある協会であり、信頼感もある組織なので共に情報教育を進めていくことを目指し、都高情研としてパソコン検定協会の後援をさせていただいた。

 福原 本校では昨年3回P検の学校団体受験を実施し約30人が受験した。P検のメリットは意欲の向上、授業中では時間がなく説明できない詳細な内容もP検の中に盛り込まれ、深く学習したい生徒にとってはP検がよい目標になっている。

 P検のサブテキストも「情報」の副教材として使用しているが、P検は全ての受験がコンピュータの中で完結するということで、教員の手間もほとんどかからない。また、P検事務局の方もよく我々の情報収集をされ、全国の事例のフィードバックしてくれるので助かっている。こうしたメリットから、より多くの生徒が受験をするように進めている。

 他の機関が実施する検定がいろいろある中でP検を選んだ理由は、テキスト等もあり、教科「情報」の中で教員が教え切れない部分を補助してくれる内容と考えられたからだ。ただ、3級などは本当に勉強しなければ受からないというレベルで、そうした生徒に対しては今後授業の中でも、合格できるようにサポートして上げたいと考えている。

 −−P検を学校に導入してからの変化は?
 福原 放課後コンピュータ教室を開放しているが、部活動が休みの時にはコンピュータ教室に来て自分で取り組んだり、タイピングの練習をしたりする生徒が増えてきている。昨年は数千人の生徒が放課後利用している、という利用記録が残っている。

 1年生で「情報A」、3年生で専門教科「情報と表現」を設置している。1年生は4級ベーシック、3年生で4級、卒業までに3級合格を目標にしている。


【2005年6月4日号】


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