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日本独自の情報教育を
時代の変化に対応
私情協調査JADIE第1回全国大会開く

 6月24・25日、情報教育についてのカリキュラム内容や教材についての研究協議を目的とする日本情報教育開発協議会(以下JADIE、会長岡本敏雄氏)の第一回全国大会が千里金蘭大学(大阪府)で開かれた。公開討論会「今後の情報教育のあり方を考える」や、岡本敏雄会長の基調講演「世界の中の日本の情報教育」、沓掛誠情報教育調査官(文部科学省初等中等教育局参事官付)による特別講演「初等中等教育における情報教育について」のほか、分科会・ワークショップなどが行われ、2日併せて高校教諭を中心に情報教育に携わる小・中・高・大の教諭ら220名が参加した。講演に続いて行われたワークショップでは、副会場の福岡と北海道をテレビ会議システムで結び各会場からの実践発表が紹介された。

 岡本会長岡本会長・基調講演

 岡本氏は講演の中で「情報教育は、読み・書き・計算といった今日の社会で生きていく上で必要な基礎的能力。国語で言うところの識字率に匹敵する能力といえる」と、情報教育の重要性を指摘。さらに世界で実践されている情報教育を「国家主導型」「競争原理型」、「切実型」、「個性型」などに分類、「外国から単に形式を導入するのではなく、日本独自の新しい研修の方式や授業の方法論などを創造していくべき。小・中・高校・大学の体系的なカリキュラムを築くためにも、時代の変化に対応しうる情報教育のミニマムエッセンシャルズとはいったい何なのか、先生方と一緒に議論していきたい」と、JADIEの今後に向けてその意欲を語った。

 特別講演
 沓掛情報教育調査官は、構造改革評価報告書を参考に、校内LAN整備の遅れや教員のIT指導力が不足している現状を指摘し、「IT活用は手段であって、それだけで情報教育にはなるものではない。ITの活用が情報教育に位置づけられるためには、各教員が情報活用能力を育成しているとの認識を併せて持つことが必要」と、新「情報教育に関する手引き」を改めて説明した。

 公開討論会では、布施泉助教授(北海道大学情報基盤センター)は、03年8月に同氏らが行ったアンケート調査をもとに教科「情報」の実施状況を説明した。

 生徒用コンピュータ導入に関わる問題点では、更新期間が長い(問題点にあげた学校の更新期間は、大半で5年から7年以上だった)、リースの場合はOS等のリプレースができない、買い取りの場合には修繕費用がない、コンピュータが古くて使いたいソフトウェアが使用できない、などの意見が紹介された。

 不足機材の問題点にはPC周辺機器とマルチメディア機器関連の不足、環境に関わる問題点では特に国公立で台数や予算の不足、古さの問題があげられた。


 ▼指導補助者が必要
 授業体制に関しては、「1クラスの人数が多い」、「チームティーチングを取り入れたい」という意見が多く、指導負担度を実習時の生徒数や補助者数の関係で見ると、20人の生徒を1人で指導するよりも40人の生徒を2人で指導した方が負担に感じる度合いが少なかった。
 教科書については、情報A/B/Cすべてにおいて、内容や日本語表現のわかりやすさに比べ、教えやすさや全体の満足度に対する評価が低く、特に情報Bの教科書への評価が最も低いとの結果が得られた。


 ▼情報共有の場、必須

 布施氏は「教員からは、情報交換の場や広報の場が求められている。現状認識の共有化が必要で、各教員の工夫を共有してほしい」とまとめた。


 ▼体系的なカリキュラムがない
 また西野和典助教授(九州工業大学)は、JADIEカリキュラム委員会が今年5月に小・中・高校を対象に行ったアンケート調査の結果を報告した。

 西野氏は、小学校では「ワープロソフトやインターネットの活用」、「メディアリテラシ」といった分野で、中学・高校においては「情報機器・インターネットの仕組み」、「情報の信頼性・ネットワークの安全利用」、「プレゼンテーション」などの分野で実践割合が高くなっていることを紹介。

 「情報教育の観点からは、小学校の『総合的な学習の時間』が大変貴重」と述べた。

 今後の同委員会の活動については「早い段階でリテラシ教育が済んでいる一方で、小・中・高校で重なって実践されている分野もあり、発達段階に応じたカリキュラムが整備されていないことがうかがえる。これからは小・中・高校を通したカリキュラム作りを考えていきたい」と語った。


 ▼習熟度に差も
 討論会に参加した教員からは「教科情報を特殊なものとして扱い過ぎではないか」、「リテラシに低下は見られないが、生徒の発想力が年々低下している」、「小学校間の格差が大きい。同じ中学校内で生徒の習熟レベルに差が出てきている」といった現場の声も聞かれた。

 JADIEにはこのほか「コンテンツ開発委員会」、「情報モラル委員会」、「e−Learning・研修委員会」、「産学協同研究委員会」があり、個人・団体の会員を募集している(今年度入会は入会金無料)。

 電話 03・5367・9511
 http://www.fest.or.jp/jadie/


【2005年7月9日号】


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