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2011年地デジ開始〜その日教室に起こること

デジタル放送を享受できる教室環境整備を考える


 平成23年7月24日、アナログテレビ放送が終了し、デジタル放送に完全移行する。現在公立の小中学校各教室に一台の割合で導入されている約60万台のアナログテレビでは電波を受信できなくなる日がやってくる。その日までに学校や教育委員会は、どのような教室環境を整えておかなければならないのか。また、アナログからデジタルに変わることにどのようなメリットがあり、それに伴いこれまで多くの授業シーンで活用されてきた学校放送はどう変わるのか。

 文部科学省ではデジタル放送開始に向け、平成17年4月、学校教育における地上デジタルテレビ放送の効果的な活用方策の開発・普及促進をデジタル放送教育活用促進協議会(会長 末松安晴国立情報学研究所顧問)に委託した。研究期間は3年。

 デジタル放送教育活用促進協議会は、財団法人日本視聴覚教育協会、財団法人日本放送教育協会、財団法人民間放送教育協会、財団法人松下教育研究財団、学識経験者から成る。モデル事業委託校は6地区・21校(12小学校・5中学校・4高等学校)。同協議会ではモデル地域の各学校が行う「地上デジタルテレビ放送の教育活用」についての指導案や研究企画書をWEBサイト http://www.chidigi.jp/index.htmlで随時公開、年2回以上研究授業を実施、成果発表会も毎年実施する。

 地上デジタルテレビには、従来のアナログ放送にはなかった多くの特徴がある。そのうち教育分野での有効利用法として、主に以下の特徴の利点が期待されている。

高画質・高音質・双方向に

 ハイビジョン方式の臨場感あふれる鮮明な画像、美しい音声の実現で、教育用コンテンツがより鮮明かつリアルに教室に再現されるため、子どもたちの興味・関心を喚起し学習意欲を高めることができる。また、放送局が視聴者からの要望を収集しやすくなるため、子どもの理解度や関心度を還元するような仕組みづくりが期待できる。

サーバー型サービスとは

 放送を各校のサーバに蓄積し、いつでも取り出して自由に視聴できる可能性から、学年、教科、項目などを設定しておくことで、自動録画・再生、検索する授業スタイルが想定されている。
 長時間番組から授業で必要な部分だけを取り出したり、関連番組の編集なども可能になる。

インターネットとの連携

 テレビをインターネットにつなげることにより、リモコン操作でインターネットのサイトを検索・閲覧できる。パソコンに不慣れな先生でも容易にコンテンツ活用ができることが期待されている。また、番組に関するインターネットサイトに同時アクセスし複合的で厚みのある情報収集の可能性もある。

 研究初年度である平成17年は、サーバ型サービスを想定し、NHKの学校放送コンテンツであるハイビジョンのビデオクリップを「検索」「蓄積」して活用する授業研究などを行ってきた。

 サーバ型サービスは、数千本のハイビジョンクリップをダウンロードまたはストリーミング配信で活用する。これにより、手軽に学校に質の良い動画素材が提供される。

 一方で総務省のオアシスプロジェクトも開始、インターネットを活用したNHKのコンテンツ配信事業の実験も始まった。当初文科省は、サーバ型受信機を常設する方向で授業を想定していた。テレビ電波での受信は、安定性が高く、学校になじみやすい。しかし当初活用を想定していたサーバ型放送用の受信機はテレビとしての新規格であり、現在規格は発表されているものの、細則が出ておらず、2007年度中には製品化が難しいという。それに比べ、インターネットによるコンテンツ配信システムが思いのほか早期に実現しそうな状況から、サーバ型サービスが今後テレビ放送として実施されるのかインターネットサービスとして実施されるのか、あるいはその両方になるかは、今後の判断となる。そこで現在は「ハイビジョン動画素材が学校に提供される」ことを想定した授業を実施することで、その有効性と効果を普及していきたい考えだ。

◇   ◇

 デジタル放送を受信するために必要なのは「デジタル放送を受信できるテレビまたはIT機器」の準備だ。
 現在あるテレビをそのまま使うには、デジタル放送受信のためのチューナーを購入すれば良いのだが、そうすると画面の質の関係で投影画面が今より小さくなってしまう。投影画像が小さくては、せっかくの高画質映像の迫力を享受することは難しい。

 デジタル放送を受信するためのテレビは、性能から分けて、プラズマテレビ、ハイビジョンプロジェクションテレビ、液晶テレビなどがある。
 現在文科省が行っている「地デジ放送の教育活用促進に関わる事業」で導入されているディスプレイは、パイオニア、松下、日立、日本ビクターのプラズマディスプレイやプロジェクションテレビなど。液晶ディスプレイがモデル事業で導入されていないのは、事業開始当初の液晶テレビは、視野角が狭く残像が残りやすいために選定からはずされたという経緯がある。しかし現在は改善が進み、問題は解決されている。

 プラズマテレビは全方位的にクリアだ。コンピュータとの親和性も高い。だが大画面になるほど価格も維持コストも上がるという面がある。各教室一台の導入となると、かなりの電力消費が予想される。

 またプロジェクションテレビは、大画面でもそれほど価格が上がらず、かつランプを使っているため維持コストが低く消耗しにくいという特徴がある。反面、ランプの特性で立ち上がりに多少時間がかかる。

 もうひとつの可能性として、テレビ画像も受信できるコンピュータの活用がある。マイクロソフトのWindowsVista始め、各社地デジ受信可能なPCの開発には積極的だ。それらをプロジェクタと組み合わせて使う、という方法だ。その際は、教室の明るさにも耐えられる性能のプロジェクタの整備や音声出力などにも考慮した環境整備が必要だ。

 文科省は「機器の選定は、最終的には学校事情。平成17・18・19年の3年間で行う研究で、出来うる範囲でそれぞれの特徴とデジタル放送及び学校教育での親和性を明らかにしていく。その後平成20年から3年間にかけて準備期間があると考えてほしい。デジタル放送の利点の周知を図ることで、デジタル放送の早期普及を期待したい」と述べる。

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