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キャリア教育どう取り組む -9-
“意識的”な取り組みで効果も倍増
−文部科学省初等中等教育局
視学官 大杉昭英氏−
  全国の学校教育の実情を横断的に調査して教育行政の仕組みに反映させる、視学官。今年度実施されたスクールミーティングでも全国へ足を運ぶなど、学校現場を視察し、指導・助言等を行っている大杉氏にキャリア教育や金融教育について話を聞いた。

キャリア教育は重要度高い
 現在、学校教育に必要性が指摘されているキャリア教育や金融教育だが、その実施率を調べたアンケートなどから出てくる数値は実体よりも低くなっているのではないか、と大杉氏は指摘する。

 「金融教育やキャリア教育への取り組みは、実は数多くの学校現場で実施されている。社会科や家庭科、特別活動などでは、お金をどのように手に入れ、どのように使うかという学習がなされている。活動的なものでは、例えば、缶を集めてお金に換金して学級文庫を購入したり募金するなど、様々な活動を通して得たお金をどのように使うか、考える実践がなされている」。

 ではなぜアンケートの数値に反映されないのか。

 「取り組みにも実際には2通りある。先生が金融教育という枠組みを意識して取り組んでいるものと、実体としては行っているものの意識されていない場合だ。先生方で意識していない場合、数値に反映されないのではないか」。

 指導する際にいかにして意識することができるかが課題であり、そのためには学校全体でカリキュラムを考えることが大切であると同氏は述べる。

 中学校のカリキュラムは基本的な内容を教える「教科」、生徒が興味のある内容や発展的な内容、補充的な内容を選んで学習できる「選択教科」、活動的な内容や話し合いが行われる「特別活動」、各学校でそれぞれ目標や内容を設定できるなど自由度の高い「総合的な学習の時間」などで構成されている。金融教育やキャリア教育を全員が意識しながら、かつ効果的に行うにはこうしたカリキュラム全体の連携を考える必要がある。

 「カリキュラム全体で考えず、金融教育やキャリア教育に熱心な先生だけが、各教科の内容にそれぞれ無理をして取り込んで金融教育やキャリア教育を実施したとしても、それが教科の目標を実現するベストの素材かという観点からみると、他の素材の方がふさわしい場合もあるだろう。また、学校全体の力としても大きくならないと思う。学校全体で考えてカリキュラムを調整しないと効果的な取り組みにならない」。

 では先生一人ひとりは、どのようにキャリア教育を行えば良いのだろうか。

 「ニートの例をみてもわかるように、キャリア教育は現代的な課題で重要性が高い。それだけに、どのように取り組むかが大切である。日ごろの実践のなかでキャリア教育を行っているということを確認できるよう学校カリキュラム全体を見渡すことが大切。新しいものを取り入れなければならないと思って負担に感じる必要はない。全体カリキュラムの中で意識的に取り組むことで、より効果的に指導できる。先生方には、既に各教科でキャリア教育や金融教育を実践しているのだと気付いて欲しい」。


【2006年1月1日号】


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