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INTERVIEW 「学校ITと確かな学力」1
学校ITを「評価」に活用
早稲田大学 法学部
原田康也教授

早稲田大学 原田康也教授 「TOEICで900点を取った人と300点を取った人では英語力に明確な差がありますが、同じ900点を取った人でも、試験対策を頑張った人と英語が身に付いていてその結果として取れた人では、やはり違う。試験で学力を計ることは可能だが、世の中に出て役に立たないのでは意味がないですよね」。

  2001年度まで早稲田大学のメディアネットワークセンター教務担当教務主任を務め、マルチメディア教室の構築やコンテンツの作成に関わっていた。「実は、お金がものすごくかかる。費用対効果を考えると、学生が満足した上で、英語が出来るようにならなければ」。そこで考えたのが、まず英語力を確実に測るにはどんな方法があるのか、ということ。その時出会ったのが音声認識を使った、電話でできる自動口頭英語テスト「PhonePass」だ。
http://www.phonepassjapan.com

 PhonePassSET−10では「電話から聞こえた音声を繰り返す」「質問に語句で答える」「自分の好みや意見を述べる」など5種類の設問に電話で答える。所用時間は約10分。終了後、サイトにアクセスして自分のナンバーを入力すると、スコアが表示される。総合スコア(2.0〜8.0の2桁表示。2002年秋からの新バージョンは点数表示が異なる)は「ゆっくりとした英語を聞き取れるレベル(3.6〜4.6)」「国連機関で仕事ができるレベル(7.8以上)」など6段階評価だ。台湾の大学生1117人の中央値は約4.6。オランダの職業中学の生徒54人の中央値は約5.9。日本人で10年間海外渉外業務の仕事をしている153人の中央値は4.9。「何度受験しても、ほぼ同じ結果が出る。英語が使えるかどうかを判定する手段としてかなり興味深い結果です」。

 ちなみに早稲田の法学部新入生の中央値は4.3。5.5を越える学生は3年以上の海外生活経験を持つことが多い。4月に7.1だったある学生は、年度末も同じだったが、別の学生は6.7から8.0に伸びた。十分に英語力のある学生でも、その後のやる気と努力で伸び方の違いが明確に分かるという点が面白い。

 このスピーキングテストを定期的に行うことで、授業構成を反省するきっかけが生まれたという。「4月から7月にかけては平均点が上がったが、その後12月にかけて全く上がっていなかった」ため、英語の授業方法を大幅に見直した。昨年度は、従来のリスニングに加え、口頭で質問に答えるグループ学習を導入。今年度は、語彙強化を狙い、PenguinReadersなどの読みやすい本を400冊ほど教室に持ち込み、学生に自由に持ち帰らせている。これは学習方法ではなく、「評価」に学校ITを活用した例と言える。

 さらに携帯電話を使った単語学習も考えている。毎週新しい単語を配信するシステムは既にあるが、学習データを反映させ「ユーザのスコアレベルに適した単語」、「間違いが多い単語」、「何度も辞書で引いている単語、「授業で出てきた単語」、「CNN等ニュースを見るのに必要な単語」を配信できるシステム開発のために各企業や組織に働きかけている。「英語を勉強したい人は、授業に出て、CNNを見、WEBでドリルをし、本を読んで電子辞書を引くなど複数のシステムを渡り歩いている。様々な学習活動を有機的につなげるシステムを実現させたいですね」と原田教授は夢を語る。

<プロフィール>早稲田大学法学部教授(外国語科目・一般教育科目担当)、同大情報教育研究所所長 http://www.decode.waseda.ac.jp

【2003年8月2日号】