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INTERVIEW 「学校ITと確かな学力」16

ハイレベルな「プロ」の育成へ

   ──文系と理系の境界線越えた人材を

情報セキュリティ大学大学院
辻井重男学長
情報セキュリティ大学大学院 辻井重男学長
 2004年4月、横浜に開設された情報セキュリティ大学院大学では、現在社会人28名、学生4名の計33名が学ぶ。セキュリティの名を冠した大学院の創設は、国内外初。在職のまま就学を希望する社会人の利便性を考え、授業は昼間のほか、平日夜間や土曜にも開講している。本校でどのような人材を育成していこうとしているのか、辻井重男学長に聞いた。

 高度情報化社会において積極的に利便性を享受するためには、情報セキュリティは欠かせません。個人情報保護法の全面施行を4月に控え、情報セキュリティへの意識も高まっています。被害に遭わないためにどう準備をしておけばよいのか、被害に遭わせてしまった際、どう対応すべきかは重要な課題です。会社、個人としてもリスクマネージメントは大変重要かつ必要な知識となっています。

 情報セキュリティというと、情報の盗聴や改ざんなど「脅威」にばかり目がいき、イメージが暗くなりがちですが、脅威から「守る」だけで終わることなく、社会の発展のために「攻め」の守りであることが必要です。また私は「自由」「平等」「安心」をキーワードとしています。技術が効率性・利便性を高め、人々の自由な基盤の拡大につながること。さらにそうした自由を人々が平等に享受でき、安心して利用できること。これが情報セキュリティに支えられたこれからの社会であると考えています。

 本学では、文系と理系の境界線を越えた人材を育成していきたいと考えています。プライバシーの保護や不正の防止は、暗号などのセキュリティ技術だけでなく管理・運営する技術、法の整備、社会的なモラルを緊密に組み合わせた対策が必要となります。4つの分野の知識を得ることで実現するのが情報セキュリティという学際的な総合科学です。

 こうした意味で高校や大学での文系、理系の分類がもっとボーダレスになることを望んでいます。デジタル化は、「0」と「1」へ還元することですが、逆に生産者と消費者を直接結び付けるなど社会の様々な現象をつなげていきますから、一領域の専門家だけでは対応できなくなっていきます。真の安全・安心社会を創るためにも、文理両面をやらざるを得ない状況です。

 文系の人に多い数学アレルギーがなくなればもっとボーダレス化は進むと思います。もともと「理系」とは、自然科学系の知識体系ですが、こと「数学」という学問は理系だけのものではないのです。勝海舟も佐久間象山も、まず理系を徹底的に学んでから国家を論じました。暗号理論の数式などは美しいと感じられるほどの学問ですから、文系の人もその美しさを理解してほしいし、積極的に楽しんで学んでほしい。

 本学の人材育成と研究活動の進展のため、平成18年には博士後期課程を設置する予定です。現在学ぶ第1期生は、修士課程終了と同時に博士課程進学が可能になります。
 (取材 西田理乃)

「社会で必要とされる力とは」
 ●法律・倫理・技術の素養を併せた人材
 ●高い専門知識を身に備えた人材
 ●情報社会に対する倫理観と問題意識を持つ人材
 ●積極性や主体性を持つ人材


<プロフィール>
 辻井重男  (つじい・しげお)
 ・工学博士・東京工業大学卒
  中央大学理工学部教授などを経て現職。
  日本セキュリティマネジメント学会会長。
  情報セキュリティ大学院大学(神奈川県横浜市) http://www.iisec.ac.jp



【2005年2月5日号】