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INTERVIEW 「学校ITと確かな学力」21
重要なのは「見通し」「予測」
  ──プログラムは“アイデア”“やる気”
2ちゃんねる管理人
西村 博之氏

2ちゃんねる管理人 西村博之氏
 大学3年の頃、HPを作成、友人と「アクセス数」を競いあった。「手間をかけずコンテンツが増え、アクセス数が増えるものは何か」考えた結果生まれたのが、誰でも匿名で参加できる掲示板「2ちゃんねる」だ。

 「書き込み自由ですから、様々な問題が発生するだろうとは思っていましたが、当初予想したほどのトラブルにはなっていません」。裁判所には月平均2回出向く。しかし「デメリットがあるからといって、可能性を狭めることはしたくない。また、人が争う場として裁判という体験を積むのは、デメリットとは思いません。むしろ、メリット」。2ちゃんねるから生まれた書籍・電車男・は、掲示板に集う人々の温かな一面がクローズアップされており、人々の驚きを誘った。

 ▼情報モラルとインターネット
 インターネットを介した事件や事故が相次いでいる。2ちゃんねるが舞台となった事件もある。児童生徒が事件を起こさない・巻き込まれないためにも「情報モラル」の確立は学校教育の中で必須と言われている。

 「インターネットを使わないという方向に子どもを教育する、というのもひとつの選択肢。でもそれは、可能性を狭めてしまう。社会状況を考えても、非現実的な選択だと思います。情報モラルの確立が必要ならば、学んで教えられるようになってほしい。いくらでも方法はあるはず。人が多く集まると、善悪含め情報が増えるものです。情報の中から、自分が必要なものを選んでいけるようになれば良いのでは」。

 ▼プログラミングは「やる気」と「積み重ね」
 「2ちゃんねるの管理人」として有名な西村氏だが、経営者でもあり、企画立案からプログラミング、システム構築まで手がける。

 数学は苦手だったが、大学時代に会社を設立、プログラム作成の仕事を請け負ったのがきっかけで独習したという。「メンバーに誰もやる人がいなかったから、自分がやっただけ。社長の仕事は、社員がやらない仕事をやることだと思う」。

 教科「情報B」では、主にプログラミングを学ぶカリキュラムになっているが「『プログラムどおりに作れば動くもの』を作っても、面白くないでしょ。『動いて当然』なんですから。何か作りたいものがあって、それをどうやったら作れるのか、アイディアを出し合っていくほうが面白いと思います」。
 「ゴール」を目指していくという点で、経営者は、プログラマーに向いているという。

 その一方で、「優秀なプログラマーを見ていると、明らかに勝てない」と自己分析する。「プログラムで本当に才能がある人は、芸術家に似ていると思います。24色の絵の具を使えば誰もが素晴らしい絵を描けるわけではありません。プログラミングもまた同じ。優秀なプログラマーは、普通の人が100行で到達するプログラムを、10行で済ませます。見通しや予想、勘の働かせ方が『違う』んです」。

 ▼これから必要とされる人材とは
 「その人が必要としている情報を出せるかどうか、いつも考えています。自分が情報を持っていることも必要ですし、持っていない場合は、探しだしていくことが出来れば良いと思います。知るべきことは『探せば見つかる』ということ。『必要なもの』という『ゴール』を定め、資料を集めていけば良い。『知らないから出来ない』ということは、ありません。やる気があるかどうかだけ」。

【取材 西田理乃】

【2005年8月6日号】