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INTERVIEW 「学校ITと確かな学力」25
学生の質・量を確保
  ──学部新設・見直し、高大連携も
立命館大学入試センター部長
三上 宏平氏

三上 宏平氏
 従来7〜8万人の志願者を維持していた立命館大学が「5万人」を割ったのは、1985年のこと。以来積極的に入試改革を実施、10万人を超える志願者を集めるようになる。同大学入学センター長・三上宏平氏が、立命館大学の入試改革について報告した。
 1985年度入試の「志願者5万人割れ」は、同学にとって、非常に大きなターニングポイントでした。以後、外部から入試の専門家を登用し、87年より学部・学科新設に並行しつつ、徐々に入試改革に着手していくことになりました。

 87年、「情報工学科」を新設し、スポーツ選抜を導入しました。88年は、「国際関係学部」新設にくわえ、理工学部入試の理科を、物理、化学必修から1科目選択に変更しました。これは受験生にヒットし、現在国際関係学部は最も偏差値の高い学部となっています。

 低迷期からの浮上のきっかけは、これだけではありません。「2科目入試導入」「文芸入試導入」「同一学部複数受験可」「理工学部・センター試験導入」など、多くの入試改革を行ってきました。また、91年・92年と2年連続志願者10万人を達成しましたが、その「追い風」は、経済学部・法学部・国際関係学部でのセンター試験導入、政策科学部の新設です。また、狭いキャンパスにあった理工学部をびわこ・くさつキャンパスに移転・拡充し、定員を大幅に増やしました。96年には理工学部で「光」「ロボティクス」の2学科を新設し、新しい特長を出していきました。

 とはいえ、これまでの方法をこれからも継続していけば大丈夫、というわけではありません。18歳人口の減少に伴い、国公立大学の合格易化が進むと、より学力優秀層の確保が困難になってきます。私学の理工学部は今後、急速に厳しくなると予想できます。

 これからの重点課題は、多様化しすぎてしまった入試方式をスリム化し、もっと分かりやすいものにすること。社会的インパクトの強さから、志願者の「量」にこだわりはあるものの、人的コストとの兼ね合いもあり、徐々に質的担保の方策への模索が始まっています。

 そのうちのひとつの突破口として、高大連携プログラムにもとづく特別推薦入学の実施を予定しています。

 仙台から福岡まで、高校20校を選択、WEB上で高校生に授業を行い、夏期にスクーリングに参加をすれば特別枠で推薦入試を受験できる「アドバンスプログラム」です。入学後の目標を明確に持った生徒を獲得したい、というのがその目標です。

 新分野開設に伴う多様な教員の採用により、ネットワークも拡充、教育力強化にも取り組んでいます。各学部が「いつまでにどのレベルまで」学生を育成するのか、例えばロースクールに何人進学させるのか、TOEFL500点以上を何人育成するのか、といった目的を設定、その結果を検証して予算措置を行います。

 このほか大学院の拡充や、国際化の促進、就職支援の強化にも着手しており、かつての「硬い・古い・ダサい」イメージから「改革の立命館」と呼ばれるようになってきました。

 学部新設に伴い、「志願者が集まる人気の高い学部」なのに「枠が少ない」場合や、「志願者が少ないのに枠が多い」学部があります。課題解決の方法が全て見つかっているわけではありませが、今後も、改革は続いていきます。(11月11日実施・学校経営マネジメントシンポジウム2005より)

【2005年12月3日号】