教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞
TOP教育マルチメディア>連載  

連載 小学校外国語活動元年に向けて

小学校外国語活動元年に向けて (2)
外国語活動の成否握る英語の質

暁星小学校 英語科主任 岡澤永一氏

岡澤永一氏
暁星小学校 英語科主任 岡澤永一氏

 英語教育の最終目標は、母語の異なる相手との意思疎通・情報伝達を円滑に行うための英語活用能力を身につけさせることです。その目標達成を左右する重要な条件に、教師の英語の質があります。教師は学習者に対して、音、文字、語、文法などの言語要素がバランスよく含まれる良質な英語を、豊かに提供していかなければなりません。

 外国語学習の初期段階では、単語だけででも積極的に反応することが望ましいといわれます。外国語活動(以下、英語活動)における学習者=児童の視点からみれば、これは正論でしょう。ただし、教師がこのことを、自身の不完全さや間違いだらけの英語の言い訳とするのは大きな誤りです。児童はなんの疑問ももたずに耳にする英語をそのまま吸収するため、一番身近な英語活用者である教師の英語は、いつでも彼らの手本となるべきなのです。

  しかし、英語を意識しすぎるあまり、不自然なやりとりとなっては本末転倒です。あくまでも自然な流れの中で、教師の負担を軽減しながら良質な英語を提供するためには、児童と教師のパターン化されたやりとりを柱とする活動が最も適しています。ただし、これは、単なる定型文の反復練習に陥りがちなので、児童が「聞きたい」「答えたい」という意欲をもち続けられる題材選択が不可欠です。また、やりとりの中で、児童の発言に対する返答として正しい英語が思い浮かばないときは、迷わず日本語で対応します。活動中、教師の使用言語が英語半分、日本語半分だとしても、英語の質が一定以上ならば、その活動は児童にとって十分意義があるでしょう。一方、d質より量eの英語があふれる活動は、児童にマイナスの影響しか与えないのです。

  児童はこのような自然なやりとりを通じ良質な英語にふれることで、意識せずとも英語を分析、整理し、蓄えていきます。この帰納的な習得過程では、児童が決して正解とはいえない自己流のルールを作り出す場合がありますが、心配は不要です。彼らは中学校、高等学校で言語要素についての明示的な説明を受け、そのルールを再構築し、経験に裏打ちされた知識として定着させることができるのです。

  10年15年先の未来で、児童が世界を相手に活躍する姿を想像してください。そのとき、彼らが使いこなしている英語の根幹は、英語活動で培われたものです。将来、意思疎通・情報伝達に十分な英語活用能力を彼らがもち得るか否か、それは今、あなたが提供する英語の質にかかっているといっても過言ではありません。(次回は12月5日号掲載)

【プロフィール】
岡澤永一氏: 暁星小学校英語科主任。外国語教育メディア学会関東支部早期外国語教育研究部会主任。第三回マルチメディア学習教材活用国際コンテストにて国内最優秀賞受賞。著書に『小学校英語 with 電子黒板』(ドリマジック社)がある。

(1)外国語活動、担任主導こそが理想
(2)外国語活動の成否握る英語の質
(3)良質な英語で進める外国語活動
(4)児童と担任とのやりとりを柱にした外国語活動
(5)積極的な日本語使用で進める外国語活動
(6)担任中心の外国語活動の実施


【2010年11月6日号】


新聞購読のご案内