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2005年以降の教育を考える
教育過程・指導要領のあり方
次期要領に「情報」どう反映される?

 「シリーズ・2005年以降の教育を考える−教育課程・学習指導要領の在り方−・の第1回は、文部科学省初等中等教育局教育課程課の常盤豊課長(前・広島県教育長)に登壇していただいた。2回に分けて掲載する。


 −−学習指導要領の不断の見直しを進めるため、中央教育審議会に常設された教育課程部会の教科専門部会で、各教科内容の在り方、指導方法の工夫策について検討が進められている。各教科専門部会で出てきた意見の中で特に共通した課題として、目に付くものは。
 「例えば、子どもたちの実態として、教科が好きでない、勉強時間が少ないといったことに課題があるとか、教科の内容が日常の感覚から離れて何のために学習するかが明確でないなどの意見がある。また、高校の現実として、考える力や体験学習を重視した授業よりも、大学入試を意識した授業になりがちである、国民全体に求められる能力と専門分野で活躍する人材に求められる能力を明確に分けるべきではないか、到達目標を明確にすべきではないか、コミュニケーション能力を重視すべきであるなどといった意見が、各部会で共通した課題として出てきている。」
 (審議内容は、文部科学省のHP「審議会情報」に掲載されている)

 −−「国語」、「算数・数学」、「理科」、「外国語」の専門部会については、今年に入って4〜5回ずつ審議が行われ、さらに継続されている。また、最近、「豊かな心」、「社会・地理歴史・公民」、「総合的な学習の時間」、「健やかな体」に関する4つの専門部会がスタートした。一方、情報教育に関する検討は今後どういう形で行われることになるのか。
 「外国語や算数・数学・国語などといった教科については教育課程実施状況調査で明らかになっている課題があり、そうしたものを基にしながら検討を進めているが、情報については、まだ高校教科・情報・の授業が15年度から始まったばかりで、具体的にどういう課題があるのかについて十分把握ができていない。・情報・について検討を始めるにはもう少し時間がかかると思う。」

 −−現行の学習指導要領の総則の中で、各教科等の指導の中でコンピュータを活用した学習活動を充実することが記述されている。その点から考えると、各教科専門部会の委員の人選を見ると、コンピュータを熱心に活用されている先生の選出が薄い。何故なのか。
 「委員のバックグラウンドがすべてではなく、各学校現場からもパブリックコメントなどを通じて意見を頂くようにしている。また、特に各教科等の中でコンピュータの活用が重要ということであれば、そういう方に来て頂いて話をしてもらうことも考えられる。

 学習指導要領の見直しは、指導方法の見直しも重要だが、やはり指導内容の部分の検討がポイントとなる」

 −−情報モラルについて。子どもたちは日常的にコンピュータを家庭で使っているが、学校ではあまり使われていない。では、いつ指導するのか、という問題があり、小学校ではコンピュータを活用・指導するための決められた時間がない。そこで、総合学習に、例えば何年生の総合学習は週1時間、情報モラルの指導、コンピュータの活用に当てること、といった形にするのは無理なのか。韓国では、初等学校で学校裁量の時間から週1時間コンピュータ教育にあてる、と義務化している。
 「インターネットや携帯電話の扱い方について教えること、或いは小学校から英語教育を行う、また、環境教育、福祉教育、法教育、金融教育の実施等々、各方面からのいろいろな要望がある。それらすべてに学校だけで対応することは困難であるが、子どもたちの発達段階に応じて指導することとしている。

 総合的な学習の時間は、各学校が地域、児童生徒の実態等に応じた特色ある教育活動を展開する中で、課題解決力などの力を伸ばすことをねらいとする時間なので、総合的な学習の時間の中で情報を扱う時間を一律に定めるのはその趣旨に合わない。

 ツールとしてPC、携帯電話を使って課題解決力を養う、といった学習活動は、総合的な学習の時間の1つの例として考えられる。例えば、法教育で、人間が社会に出て行くときに必要なルール、人とトラブルになったときの解決を学ぶのも、問題解決能力である。

 総合的な学習の時間の中でというよりも、各教科等の指導の中で具体の学習活動を通して、コンピュータの活用等について教えていくことの方が良い方法だと思う」


【2004年12月4日号】