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九州の中心に位置する雄大な阿蘇山。 トレッキングほか、様々な体験学習が用意されている |
修学旅行と言えば、京都・奈良を中心とした関西方面というのが定番だったが、最近は体験学習を取り入れた修学旅行(教育旅行)が増えつつある。行き先も、その目的によって様々に広がっている。そこで本紙は、航空機利用による熊本県教育旅行現地視察会を企画。教育旅行に造詣の深い鈴木伸男さん(町田市立町田第二中学校校長)、加島俊博さん(町田市立南中学校校長)、佐藤佳子さん(世田谷区立瀬田中学校)、永島昇太郎さん(都立上野高校)の4名に視察と座談会に参加してもらった。
阿蘇山の大自然と民宿を
組み合わせた体験学習も
午前11時25分発の飛行機で羽田を飛び立ち、熊本空港へ。午後1時10分到着という、空路利用ならではの快適なアクセスで、一行の現地視察がスタートした。
早速バスで熊本県のシンボルともいえる阿蘇山へ向かう。九州の中心に位置する阿蘇山は、世界最大級のカルデラ火山。周囲1281115の外輪山に囲まれた、まさに自然体験の宝庫である。
案内してくれた熊本県観光連盟の主任書記・泉田勝志さんは「今日は風向きもちょうど良く、火口からの煙も向こう側に流れていますから、火口がはっきりと見えますね」と話してくれた。訪れた日は、天候に恵まれ、火口にたまった水まで、はっきりと見ることができた。先生たちも、それぞれに自由に散策しながら、雄大な自然を満喫した様子だった。
阿蘇エリアでは、単に阿蘇の大きさを実感するだけでなく、様々な体験学習が用意されている。 例えば経験豊富なガイドが案内するトレッキング。阿蘇の魅力を自分の足で体験するもの。また阿蘇の雄大な眺望を楽しみながら、草原や山林の道なき道を、自分の脚だけで駆け抜けるマウンテンバイクの体験もある。阿蘇の草原の草刈り体験は、自然と人間の共生を学ぶ体験学習。さらに熱気球体験、パラグライダー体験などもある。
泉田さんは「大自然を生かした体験学習を、民泊と組み合わせて取り組んでいます」と語る。
1日目は午後からの視察だったため、阿蘇山見学の後は、本日の宿泊施設である「阿蘇の司ビラパークホテル」へ。受け入れ側と先生たちとの、修学旅行に対する意見交換会が行われ、有意義な1日が終了した。
米米惣門ツアーで
古い町並みを散策
歴史ある八千代座に
先生たちも感激
2日目は、福岡県との県境に位置する山鹿・菊池エリアを視察した。
このエリアは、古代から近代にかけての文化を色濃く残している地域である。
まず午前中は、紅葉が美しい菊池渓谷を眺めながら、菊池市内経由で歴史公園鞠智城へ。ここは古代、大陸からの侵略に備えて大和朝廷が築城した山城を復元した場所。校倉造りの米倉、日本では珍しい八角形の三重の塔などが再現されている。併設の温故創生館(入館料無料)は、鞠智城とその時代を展示と映像で学べる施設。休憩スペースも用意されている。古代の歴史が学べる貴重な場所であった。
次に向かったのが、米の集積地として栄えた山鹿地区。訪れた菊池川沿いの「惣門」と呼ばれる場所は、今「米米惣門ツアー」が人気を博している。江戸時代の蔵が残る豊前街道沿いの古い街並みにあるお店やお寺などを回るツアーである。
例えば天保年間(1830年)創業の木屋本店は、味噌やこうじの店。江戸宝暦10年(1760年)創業の米蔵は、現在ムーンアートギャラリーになっている。それぞれの店で説明を聞きながら、昼食をはさみ八千代座へ向かった。
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八千代座は、和風建築と洋風建築の長所を採りいれた芝居小屋。江戸時代にタイムスリップしたような錯覚が味わえる。奈落の底など珍しい設備も見ることが出来る。 |
八千代座は、明治時代から伝わる芝居小屋。国の重要文化財だ。ここを案内してくれた石橋和幸さんは「ここでは子どもたちに、まず傷つけないようにと説明します。市民運動で皆が修理して、大切に保存してきたことを話せば、きちんと理解してくれますし、物を大切にする心が生まれてくると思います」と語る。
子どもたちには班ごとに交替で、舞台で何か発表してもらい、終わったら奈落の底に行ってもらい、時にはセリから上がる体験もしてもらうことができる。
加島さんは「ここは感動したね」と話し、鈴木さんは「いいものだから残ったんだね」と応じていたが、先生たちにとっても心に残る場所であったようだ。
次に熊本市内を通り抜け、途中、車窓から路面電車や熊本城を眺めながら熊本港へ。約1時間の船旅で渡ったのが天草・本渡港。そこからマイクロバスで2日目の宿泊地・岬亭へ。同ホテルは、天草パールライン5号橋(松島橋)の近くにあり、素晴らしい眺望と露天風呂が有名だ。
夕食で出された天草の郷土料理「ひじきめん」は、ひじきととうもろこしの粉が入った麺であり、潮の風味豊かな温かいそば。修学旅行生にも出すメニューだという。
シークルーズで
化石発掘体験へ
水俣では事前学習
の必要性実感
3日目は、シークルーズで御所浦町へ。あいにくの雨だったが、御所浦島に到着する頃には、雨も上がった。「内海で波も静かだから、船酔いの心配はありません」とシークルーズ(株)常務・瀬崎公介さんが話していた通り、快適な船旅だった。同社は現在、イルカウォッチングクルーズを実施中で、一度に350名まで同時体験が可能ということであった。
御所浦町では、最初に御所浦白亜紀資料館へ行き、専門職員・鵜飼宏明さんから島のあちこちから見つかった恐竜の化石や白亜紀の時代についての説明を受けた。この町は、平成9年に化石が発見されて以来、6千年から9千年前の化石が出る島として有名になった経緯があり、化石発掘体験が人気だという。
ハンマー片手に化石発掘体験を行ったが、先生たちは、思ったより早く巻き貝などの化石を見つけていた。子どもたちも、簡単に化石を見つけることができるに違いない。
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御所浦町の化石発掘体験 |
次は一行が最も関心を示していた水俣地区へ。熊本県最南部に位置するこの地区は、かつて公害の町として全国的に知られた所。今は市民や行政の取り組みにより、環境都市として全国から注目されている。
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水俣は環境学習の宝庫。 事前学習でさらに深く学べる場所 |
また水俣病の学習や環境再生への取り組みを学ぶプログラムも充実。水俣病被害者である語り部から直接、話を聞くプログラムもあり、学生たちにとって貴重な体験学習の場・機会が設定されている。全国から教育旅行や総合学習での利用を受け入れている。
今回この地区を案内してくれたのが、NPOで水俣教育旅行プランニング専務理事の吉永利夫さん。「学生たちには、やはり事前学習をしてから、ここに来てもらいたいと思います。そうしないと資料館では5分ぐらいで出て来てしまうという結果になりかねませんから」と語る。
市民が8年前から植物を植えている「実生の森」は、ここが公害に苦しんだ町とは思えないほど、緑豊かだ。目の前の青い海は「ここは真水が入り珊瑚も根づいて、カラフルな魚も泳いでいます。皆さんここに来てゆっくり海を見てもらうと、水俣の印象が変わると言います」と吉永さん。
「林が元に戻るのが千年かかるそうですが、我々の地区は、200年すれば元に戻るかもしれません」と、うれしい希望を語っていたのが印象的だった。
視察最後の
座談会は、眺望が素晴らしい高台にある、湯の児スペイン村・福田農場で行われ、3日間の行程が終了した。
【2004年12月18日号】
