気象の見方を教える

定点観測システムを利用
滋賀県大津市立瀬田小学校

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創造的な見方を身に付けさせる
 「これまでは、子どもたちに天気や気温を観測させることが精一杯で、観測しただけで丸をつけていました。しかし、このシステムを使うと、各地の具体的な気象データからどういう見方ができるのか、創造的な考え方を身につけさせられるのではないでしょうか」
 定点観測地点システムの観測地点の1つ、滋賀県大津市立瀬田小学校で5年生の「冬の天気調べ」の授業が石原一彦先生の指導で行われた。
 同システムは、定点観測のホームページ(http://www.teiten2000.org/)にアクセスすることで、函館や東北、新潟など10か所の現在および過去の気象データを気温グラフ、風向図、風景画像などとして得ることができ、従来型の観測では不可能だった情報が提供されている。同校の屋上にも、風向や風景を観測するシステムが取り付けられている。
 同校は、OCNエコノミー(128Kbps)でコンピュータ教室の20台や5、6年生の教室にあるコンピュータがインターネットに常時接続している。授業は3時間にわたり行われ、1時間目は、定点観測システムについての説明を受けた後で、実際に2人1組で20台のコンピュータから定点観測のホームページに接続し、操作方法やデータの取り方などを体験した。
 2時間目は、前時に接続に時間がかかったことから、あらかじめデータを自校のWebページに取り込み、プリント教材やプロジェクターで石原先生が風向図やひまわり画像の見方を説明し子どもたちが答え、その後自分でWebページにアクセスして理解するといった形で、非常にスムーズに行われた。

 授業の様子
 定点観測システムから取り出した寒い日、暖かい日の風向図を見せて、子どもたちに風向図の見方、寒い日の風(北西の風)、暖かい日の風(南東の風)の特徴について理解させる。続いて、
 気象衛星ひまわりの雲の画像をプロジェクターで投影して、「日本にかかっている雲は、どの辺から来たのか。寒い日、暖かい日の雲の違いを見ましょう」(石原先生)
 「暖かい日は、西から雲がやってきて、寒い日は上の方から雲がやってきます」(子ども)
 では、本当にそうなのか。別の日の雲の画像を見てみましょう。
 「暖かい日は、南西から雲がやってきます」(子ども)
 続いて、「寒い日と暖かい日の日本海側と太平洋側の天気の違いを見つけよう」(石原先生)
 定点観測システムから切り取った新潟市といわき市の寒い日、暖かい日の風景画像に子どもたちがそれぞれパソコンでアクセス。新潟といわきのいろいろな日の寒い日、暖かい日の風景を見て、寒い日、暖かい日の雲の状態の共通点などを考えていく。
 
 石原先生が担任のクラスではないが、授業は非常にテンポ良く進められた。「Webリテラシー」とでもいうか、ブラウザの操作やWebページの構造に対する理解度も高く、表示されている風向図やひまわり画像などを読み取る力も高かった。
 一般的な学校ではまだ、必要な情報をコンピュータに表示するだけでかなり時間がかかるものだが。なぜ、きびきびと授業が進行しているのか。
 石原先生は、「子どもたちに目標を持たせずに使わせては、いけない。今回は、寒い日、暖かい日の風向、雲の動き、景色の比較をしてみる、という課題を出した」と授業の観点を説明する。
 
 さて、定点観測システムの利点、利用方法などについてお聞きした。
 「こうしたシステムがない時は、天気図を使った、抽象的な学習だった。しかし、このシステムによって、生のデータが得られ、本校では実際に観測機器も屋上で動いている。
 ただ、授業で活用するには、いろいろなデータをいかに組み合わせて子どもたちに理解させるか(組み合せ方)が大切だと思います。
 学習分野としては、小学校では5年生の理科の気象の学習をはじめとして、植物の開花時期の予測にも使える積算温度(作物の栽培適否の指標)の学習や社会科でも使えるでしょう。また、画像をつなぎあわせることで、月ごとの植物の動画再生や天体観測も可能です」

 (教育家庭新聞2001年3月3日号)


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