教育家庭新聞・教育マルチメディア新聞
TOP教育マルチメディア特集教員研修支援プロジェクト  バックナンバー
 
教員研修支援プロジェクト報告
情報モラルセキュリティーコース

「情報モラル教育」の前提”無知は罪””悪い行為をしない”


野田市での研修風景
千葉県野田市での研修の様子

 「情報モラルコース」が実施されたのは、関東地区では立川市・熊谷市・神奈川県教委・鎌倉市・牛久市。中京地区では羽島市・四日市市。関西地区では交野市・生駒市・丹波市・大阪市など。各地区で、情報モラル教育やセキュリティ確保で必要な事項などの研修が行なわれた。

  神奈川県教委で実施された「情報モラル・セキュリティコース」では、セキュリティ確保をテーマに、フィルタリングソフトを提供するデジタルアーツ株式会社公共事業部・野崎暢彦氏が講習を行った。フィッシングサイト、出会い系サイト、違法ドラッグ販売サイトなど氾濫する有害サイトの実態を紹介、実際に閲覧した。また、悪質情報による被害防止の方法についても触れた。



 「WEBの掲示板に書き込みを行うと、投稿欄にIPアドレスが表示されてしまい、全アクセス者に見えてしまうケースがある。表示されない場合のほうが多いとはいえ、管理者は分かる仕組みになっているのが通常。管理人がどのような意図で掲示板を設定しているのかを考え、書き込みを行う必要がある。場合によっては個人情報の漏洩だけではなく、自治体のドメインが分かってしまい、学校そのものが抗議・非難を受ける危険性がある」と野崎氏は述べる。

◇            ◇


パソコン室授業風景 各校でのパソコン室
各校でのパソコン室での雰囲気に特徴がある

 情報モラル教育で「身に付けさせたい力」は2つ「扱うべき内容」は4つ
 二時間目は「情報モラル教育」について、千葉大付属中の三宅健次先生が情報モラル教育についての定義と実践事例を報告した。

 三宅先生は「情報モラル教育で身につけさせたい力は大きく分けて2点ある。一つ目は、情報を適切に判断するための知識であり、二つ目は情報社会で適切に行動しようとする態度」と述べる。

 「情報を適切に判断するための知識」とは、例えば匿名性や情報伝達の早さ・広さが社会に及ぼす影響など、情報通信ネットワーク社会の特異性を理解し、被害者にはもちろん、意図せずして加害者にならないための具体的な対処法などの知識だ。

 二つ目の「情報社会で適切に行動しようとする態度」とは、日常のモラルや知識と行動の常識を超えた情報社会における自制心や応用力であると説明する。

 また、日常的なモラルと情報モラルの違いについて「日常的なモラルとは『良い行いをする』ことを意味する。対して情報モラルは『悪い行為をしない』ための知識であり、『無知は罪』となる。『よりよい人間性育成』のために日常的なモラルの目的があるとすれば、情報モラルは『安全』を目的としている」と、そのスタンスの違いを明解に説明した。

 三宅先生は情報モラル教育で扱うべき内容を以下4つに整理。1)、主に他人との関わりに関すること――マナーの有無。無記名性から生じる誹謗中傷やネットショッピングの危険 2)、主に集団や社会との関わりに関すること――著作権・情報発信の責任・迷惑メールの影響・個人情報など 3)、主に情報管理に関すること――パスワード管理やウィルス対策、不正アクセスからの防止ほか 4)、主に自分自身に関すること――インターネット依存上・仮想現実問題など

「携帯電話の情報モラル」早急に取り組み必要

 また三宅先生は、昨今急激に必要性が生じているものとして「携帯電話の情報モラル」を上げた。「生徒にとってメールの頻度は携帯電話を使う場合が圧倒的に多い。パソコンメールだとある程度のマナーを分かっていても、携帯メールだと途端にマナーが消える。ところが家庭では携帯電話に関するルールや指導が徹底できていない。情報モラルに関してはパソコン以上に携帯電話での指導が重要だ。その一方で、携帯電話を授業として扱うことに抵抗を抱く教師がいたり、生徒指導で行うべきとの意見もある」と、携帯電話の情報モラル教育の必要性と課題を指摘した。


パスワード設定の「コツ」「方法」を学ぶ

岐阜県羽島市での研修の様子
岐阜県羽島市での研修の様子
神奈川県教委での研修会場にて
神奈川県教委での研修会場にて

 現在全国の小中高には約200万台のコンピュータが導入されている。そのうち事務処理など教育外の目的で導入されているコンピュータは、約40万台。コンピュータの世界には、不正アクセスやウィルス・ワームなど不正プログラムによるトラブル、故意の悪質ないたずらや盗難など、様々なスタイルがある。

 紙とデータの大きな違いは『量』。紙ベースの管理だと、4万人のデータの流出は難しいが、データの場合、一瞬にして『盗難』され『流出』する可能性がある。

 不正アクセス対策として、コストをかけず行えるのが「パスワード」の設定だ。パスワードのかけ方の「コツ」について杉村千恵子氏(鰍iMCエデュケーションズ)は「『8文字以上』『英語大文字小文字、記号、数字を全て組み合わせる』ことにより、解析を難しくすることができる。また、『忘れにくい』パスワードを設定することも必要」と述べる。例えば、ある意味のある単語をパスワードと設定しておき、かつ「Aの部分は@、Oの代わりにゼロ」といった規則を決めておくなど、具体的な例を上げた。

 また、離席する際のログオフの必要性や、離席の際は「画面ロック」(WindowsキープラスLキー)をかける、10分以上入力がない場合はスクリーンセーバが働きパスワードにより保護がかかる設定にする、重要な書類へのパスワードのかけ方などを学んだ。

 

新聞購読のご案内